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病棟急変ただいま対応中!~その場の5分 ~(6)

病棟急変ただいま対応中!~その場の5分 ~(6)
[第6回]アナフィラキシー
坂本 壮
国保旭中央病院 救急救命科

自分が担当する患者の病棟急変にどのような対応をとるべきか.病棟急変対応の基本と考え方を,もう一度確認してみよう!


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Point

●常にアナフィラキシーが起こる可能性を意識して行動せよ!
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症例
75歳,女性.脳梗塞で入院中.前日の夕食時,倦怠感を認め食事摂取量が少なかった.当日の朝,38℃台の発熱を認め,精査の結果,急性腎盂腎炎の診断で抗菌薬が投与開始となった.初回の抗菌薬投与数分後,腹部の皮疹,嘔気を認めた.とるべき行動は?
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病棟看護師 ときどき経験しますね.アレルギー反応を考え点滴をいったん中止して担当医の先生と相談すると思います.
初期研修医 抗菌薬や造影剤など,経静脈的に投与する際は立ち会うことになっているので,すぐに対応できるとは思います.蕁麻疹であれば,可能性のある薬剤は中止して,抗ヒスタミン薬の投与でしょうか.
医師(坂本) 皮疹を認める場合には,誰もがアレルギー反応と考え対応することはできるよね.重症度はどのように評価する?
病棟看護師 血圧は確認したいです.アナフィラキシーか否かは…….
初期研修医 血圧以外にも意識や酸素化も確認したいですね.アナフィラキシーだとしても,バイタルサインが概ね安定しているようであれば焦る必要はないと思います.
医師(坂本) 本当にそうかな? アナフィラキシーってどのような状態で,危険なサインが何かを知っているかな?
初期研修医 アナフィラキシーというのは,皮膚症状以外に喘鳴や喉頭浮腫を認めて…….
病棟看護師 抗ヒスタミン薬やステロイドを投与していることが多いような…….
医師(坂本) アナフィラキシーは時間との闘いで,初療がきわめて大切だ.いつ疑い,疑ったらどのように対応するのか,今回はこのあたりを整理しておこう.

はじめに

 アナフィラキシーは,救急外来や一般の外来で出会う頻度が高く,誰もが経験したことがあると思います.院内においても頻度が高く,経静脈的に薬剤が投与されることが多く,急速に症状が進行することも少なくありません.適切に対応すれば,決して予後は悪くありませんが,対応の遅れなど,初療を適切に行わなければ命に関わります.あらゆる薬剤で起こる可能性があり,誰もが初期対応を習得しておく必要があります.今回は,院内で遭遇する可能性が高い薬剤によるアナフィラキシーの対応を整理しておきましょう.

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初療者のとるべき⾏動

●アナフィラキシーを疑う
皮疹があればわかりやすいですが,認めないこともあります.どのようなときにアナフィラキシーを疑うのかを頭に入れておきましょう.

●vital signsをcheck
最も緊急性に関与するのはいつでもvital signsです.意識,呼吸,血圧,脈拍,酸素化を速やかにcheckし,普段のvital signsと比較しましょう.

●呼吸様式をcheck
喉頭浮腫など気道緊急に陥る可能性もあります.stridorを認める場合には外科的気道確保も視野に入れ対応しましょう.

●症状をcheck
vital signsが保たれているからといって,アドレナリンを投与しないわけではありません.まずいサインを見抜けるように,診るべき症状を整理しておきましょう.
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