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救急医の視点(4)

救急医の視点(4)
[第4章]敗血症マネジメント
田北無門 Mumon Takita
聖マリアンナ医科大学病院救命救急センター
北野夕佳 Yuka Kitano
聖マリアンナ医科大学
横浜市西部病院救命救急センター

救急科領域のクリティカルな疾患・症候について,基本事項をコンパクトにわかりやすくお伝えします!


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Take Home Message

① 感染症診療では,適切で十分量の抗菌薬投与とソースコントロールを忘れない.
② 感染症診療では,いちはやく敗血症を認識できるよう心がける.
③ 敗血症を認識したら1 時間バンドルを厳守する.
④ 治療抵抗性のときに,「何を評価し,どう対応するか」型を身に付ける.

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症例提示

「先生,65歳女性の尿路感染症患者がいるんですが,入院管理をお願いしていいでしょうか?」
病棟業務もおおむね終了し,穏やかな時間を送っていたあなたの元にERから入院依頼が入りました.重い足を引きずりながらあなたはERへ向かいます.ERは,病棟の雰囲気とはうってかわって,大忙しです.
救急医「あ!! 内科の先生!? ありがとう!! この人,尿路感染だから.ちょっとさ,忙しすぎて抗菌薬まだいけてないんだよね.えっとね,血培は……ナースにきいて!! ごめんね,これから外傷2件くるんだよ.本当にごめん!!」
ERの片隅で患者さんと二人きりになったあなたはしぶしぶ診療を開始します.
あなた「内科の○○です.お名前言えますか」
患者「あー,きついわ.きついの.ねぇ,助けて!! ねぇ,お願い!!」

この時点で患者来院時から2時間経過しており,バイタルサインは,意識 GCS E4V3M5,血圧110/69 mmHg(平均血圧83 mmHg),脈拍 120 回/分,SpO2 93%(室内気),呼吸数 26 回/分,体温 40℃でした.落ち着きがなく,しきりにモニターコードを触りキョロキョロしています.
ER看護師「あ!! 内科の先生ですよね.内科病棟の大部屋に一つ空きができたって師長から連絡がありましたよ.もうERがいっぱいになってきたので,そこに入れちゃいますね.診察は移動してから行ってくださ~い.ごめんなさ~い」
患者は内科病棟の大部屋に入院となりました.

「先生!!! 新入院の方,意識レベル300です.すぐ来てください!!!!」
病棟よりこの患者さんの急変の知らせがきたのは,それから2時間後のことでした.
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●今回の流れ

1.敗血症を認識する
2.治療抵抗性のときに,どうするか

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