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のりたま観戦記 まじっくりん‐馬場美濃戦(名人戦リーグA級)

観戦記を書く練習をしようと思った。書けるようになってしまえば、のりたまでは毎週のように対局が組まれているのでネタに困ることがなくなる。

題材はリーグ戦よりまじっくりん‐馬場美濃戦を。記事の最後に棋譜のリンクも貼ろうと思う。

初手からの指し手
▲7六歩 △3四歩 ▲2二角成 △同 銀
▲4五角 △5四歩

新規棋譜6手

まじっくりんさんは筋違い角の愛好家である。一方、馬場美濃さんは振り飛車党なので、先後が決まれば▲4五角までは予想通りと言える。

△5四歩が後手の工夫で、無理やり振り飛車にすることができる。筋違い角の狙いの一つである振り飛車封じをさせない意味だ。

▲3四角 △3二金 ▲6六歩 △5二飛
▲8八銀 △6二玉 ▲7七銀 △3三銀
▲7八角 △7二玉 ▲2六歩 △4四銀
▲2五歩 △3三金

新規棋譜20手

後手は△5四歩を生かして中飛車にする。先手は振り飛車にすると中飛車からの速攻を気にする必要があるので、居飛車にするのが自然だ。(2筋の歩交換を見せて△3三桂と跳ねさせない)

後手は3二金型を強要されたが、△4四銀~△3三金が機敏だった。金銀を2筋に釘付けにさせられる前に中央に活用することができた。

▲4八銀 △5五歩 ▲5八金右 △8二玉
▲6八玉 △7二銀 ▲8六歩

新規棋譜27手

先手は平凡に囲うのではなく角の再活用をはかる手を急いだ。まじっくりんさんは生粋の筋違い角党だけあって、角を働かせる意識が高い。

△5三銀 ▲7九玉 △5四銀 ▲7五歩
△9四歩 ▲8七角 △9五歩 ▲2四歩

新規棋譜35手

後手は銀の立て直しを急ぐ構想だったが、▲7五歩~▲8七角で銀が目標になってしまった。2筋の歩を突き捨てるのが好手で、どちらで取っても▲2二歩の叩きが生じる。

こうして見てみると7筋の位が大きいように映る。駒組みの駆け引きは要検証だ。(もしかしたら記事化するかもしれない)

△同 金 ▲2二歩 △3三桂 ▲2一歩成
△3六歩 ▲同 歩 △5六歩 ▲同 歩
△6四角 ▲1八飛 △2五金 ▲1一と
△4五桂

新規棋譜48手

先手の香得になった。後手は代償を求めて動いていく。持ち角も投入して、目一杯盤上の駒を働かせようという駒運びだ。

駒の働きで差をつけて巻き返そうという馬場美濃さんの一連の指し方は振り飛車らしいと感じた。後手に主張のない展開ではないので、先手も楽ができない。よい粘りだと思った。

▲5五歩 △同 銀 ▲4三角成 △3六金
▲3八飛 △3七歩 ▲2八飛 △5三飛

新規棋譜56手

先手は二枚の大駒を使う手順を選んだ。しかし、先手が後手の駒を呼び込む格好になっていて、じわりと先手陣にも嫌味がつき始めた。

この△5三飛も振り飛車らしい手だった。働きの悪い飛車と馬の交換を迫る。いかにもさばきという手だ。駒の働きの差が縮まったので、反撃の目処がつきつつあるのを生かして攻め合いにシフトするということだと思う。

▲2三飛成 △4三飛 ▲同 龍 △5六銀
▲5七歩 △3八歩成 ▲5六歩 △4八と
▲同 金 △3九角 ▲4九香 △4八角成
▲同 香 △5七桂成 ▲2二飛

新規棋譜71手

後手は飛車をさばくことに成功した。そのあいだに先手は受けの手を織り交ぜて駒得を拡大した。後手が小駒の攻めになっているので、二枚飛車の速い攻めで攻め勝とうという姿勢を見せる。

まじっくりんさんは攻め合いでいけると見れば踏み込んでいく棋風のように思う。

後手としては、駒損の代償に先手陣を傷ませていることと、この瞬間は先手に遊び駒があることが主張だろう。理屈で言っても感覚で見ても、先手玉に嫌味をつけつつ短期決戦を挑むのがよさそうだ。

先手が攻め合いにきたので、後手にもまだ細い勝ち筋が残っている。

△6七金 ▲6三龍 △1九角成 ▲5四角
△6二歩 ▲7二龍 △同 金 ▲6一銀
△7一金

新規棋譜80手

このあいだに先手に失着が出ており、この金引きのあたりで逆転の雰囲気が出始めた。

攻めが緩んだ瞬間、後手の粘りが功を奏して先手玉は危険な状況になっていた。いきなり詰めろがかかる形である。

▲7二銀打 △3九飛 ▲7一銀不成 △9三玉
▲9四金 △同 玉 ▲7六角 △9三玉
▲8二銀不成 △同 玉(投了図)
まで90手で後手の勝ち

新規棋譜90手

先手の攻めは一歩届いておらず、自玉も持たないため先手投了となった。

先手は△3九飛一発でKOされてしまった格好だ。鋭いカウンターパンチだった。

☗ ☗ ☗

勝ちきれなかったまじっくりんさんだが、着地以外は充実の試合運びだったはずである。筋違い角を打ったら強いというところを見せた。

馬場美濃さんとしては棚ぼたの感のある勝利かもしれないが、先手をすこしでも苦しめる粘りができていたと思う。

個人的には、後手が逆転に至る前の手をひねり出して粘っているところがこの将棋の一番の見どころだと思った。

仕掛けを許して不利に陥ったものの、本来の馬場美濃さんは序盤で簡単に不利になってくれない序盤巧者タイプではないかと想像している。

まじっくりんさんの巻き返しと合わせて、次局以降にも注目したい。

棋譜(将棋アイオー)
https://shogi.io/kifus/247616

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