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夢じゃないらしい

好きな人が家まで迎えに来てくれると言うので、心臓バックバクしながら、無意味に家の中を歩きながら、『デート中の会話に困らない♡』みたいなネット記事を一生読みながら、好きな人が来るのを待った。鏡も何回も見た。フォロワーさんに教わったメイク、リップも浮いてないかなこれ、大丈夫かなかわいいかな、いやかわいいはず、何回も見たせいで自分の顔でゲシュタルト崩壊してきて、なんだかもう吐きそうだった。好きな人がスカート好きって言うから慣れないスカート履いたけどどうかな、ちゃんとかわいいかな、いや服はかわいいの間違いないんだけど私が着てもいいやつだったかな、許可してくれないと不安ですよねこういうの。フォロワーさんありがとう、SHEINどれもめちゃくちゃかわいくて酔いました。

『ついたよ!』
好きな人からLINEが来た。家のすぐ下に好きな人の車が停まっててくらくらした。もうだめ。今日死ぬ。何度もこの助手席に乗ったけど今日は特別。「お待たせしました」ってぎこちなく笑いながら助手席に乗ったら、私服の(私服の!)好きな人がにこって笑って「スカートだ、かわいいね」って褒めてくれて、もう無理です帰っていいですか。いやここ私の家なんだけど、限界です帰らせてください。泣いちゃう。

車の中は緊張しすぎてて何話したか覚えてない。あれだけ事前に『デート中の会話に困らない♡』を読んだのに全部飛んだ。たぶんわけわからなくなって仕事の話をしてたんだと思う。なにしろ好きな人と私の間の共通の話題は仕事しかない。窓の外を見てできるだけ好きな人の方を見ないようにしながら仕事の話をする私に、好きな人はけらけら笑って「緊張してるねぇ」とか言ってた。笑い事じゃありません。こっちは瀕死だってのになに笑ってんだよ。

ご飯屋さんでも緊張を紛らわすためにお酒をたくさん飲んで、気づいたら酔っ払ってて、ただにこにこへらへらしてた。好きな人はずーっと微笑みながらそんな私のことを見つめてて、それに気づいて私が照れるみたいなのをずーっとループしてた。帰りの車に乗る頃にはもう酔いが回りに回って、と言っても介護を受けるほどではなかったんだけど、ただ楽しくて、いろんな話をしてた。好きな人は「酔ってるね」って笑ってて、笑われてることすら楽しくて笑ってた。

帰り道で観覧車を見かけて、「観覧車だー」って呟いたら「乗る?」って言ってくれて、夜、二人で観覧車に乗った。好きな人がそこから見えるいろんな場所の話をしてくれて、夜景はとってもきれいで、どこを切り取っても絵葉書みたいだった。観覧車から降りて、ちょっと前を歩く好きな人の背中を見ながらぼんやり「今日この人とデートしてたんだなあ」って考えてたら、好きな人が振り返って「隣おいで」って言ってくれたので、駆け寄って隣に並んだ。え?めちゃめちゃデートみたいじゃないですか?月9?

家まで送ってくれて、ありがとうのLINEを送ったら『俺も楽しかったよー!』みたいな超軽いお返事が来て、そのままやりとりしてたら『次はどこ行く?』って好きな人から聞いてくれて、次があるんだこれ……って思いながら気づいたら寝落ちしてた。お酒たくさん飲んだからね。なんだかすごい疲れたし。

デートと言っていいかわからない好きな人とのお食事は以上です。どうやら次があるらしいので、レポはまた今度!

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