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鳴り物にハマれば一人前?!~聴いても美しい、複雑機構の時計~



●『鳴り物』時計とは?

機械式時計において、音を鳴らして時間を知らせる機構のことを総称して『鳴り物』と、時計愛好家から呼ばれています。それには、ロマンティックな‘音で時刻を告げる’という技術の粋が集められています。

『鳴り物』時計はハンマーで鐘を叩いて時刻を知らせた塔時計の小型化であり、鳴るタイミングやゴングの数で機構は多様に分かれます。

●時を音で知らせる

機械式時計が世に出てからも、庶民が時計を持つことはできず、教会や庁舎などの鐘の音で時刻を知る時代が何世紀も続いていました。人々にとって機械式時計は見るより聴く時計だった時代から親しまれています。

『鳴り物』の入り口としては「アラーム」がありますが、その先には複雑機構の真打「リピーター」や「ソヌリ」があり、そして元々「リピーター」は「ソヌリ」から派生した機構でした。

■リピーター

・・・ボタンを押すかスライダーを下げたりして、音を鳴らす。(任意の時間を知らせてくれる)
・クォーターリピーター・・・15分ごとに鳴る
・ファイブミニッツリピーター・・・5分ごとに鳴る。

■ソヌリ

・・・決まった時間にセットをすれば、自動的に音を鳴らす。 (定期的に時間を知らせてくれる)

「ソヌリ」は、腕時計に搭載されることが稀なので「リピーター」よりも高度な複雑機構と思われがちですが、「リピーター」は必要に応じてON/OFFが出来るのに対し、「ソヌリ」はONにしたままだと勝手に鳴ることから、需要が少ないとも言えます。

●孤高の複雑機構

超高額時計の代名詞だったトゥールビヨンやパーペチュアルカレンダーさえも、昨今では100万円台で購入できるモデルが登場しはじめました。
一方、「リピーター」と「ソヌリ」の日本での小売価格の目安は、「リピーター」が2000万円以上、「ソヌリ」は数千万円以上。いずれもトゥールビヨン以上に高価であり、ステイタスを保ち続けています。

その理由は美しい“音”の追求にあります。『鳴り物』時計は、ハンマーがゴングを打つことで発生する音で時を知らせる仕組みなので、時計であると同時に“楽器”でもあります。
高級な「リピーター」は澄んでいて、響きの長い音を奏でます。美しい音を出すためにはゴングやハンマーの素材や形状、セッティングなど、細部にこだわって設計する必要があるのです。
そもそも時計は気密性を求められる為、音が響きにくいのが当たり前なのですが、近年は音響解析技術が進んだことで、より良い音を奏でる素材や反響のための設計における研究が進んでいるのです。
そして、美しい音を鳴らすためには、職人による微調整が必要になり、とても難しい技術なのです。

時計好きならいつかは手に入れたいと願ってやまない複雑機構であり、時計業界における頂点とも言われている『鳴り物』時計。

「鳴り物にハマれば一人前」と、時計業界で言われることがありますが、これは‘後戻りできない’というニュアンスも含まれています。同じ「リピーター」でもブランドやモデルごとに音色が違い、また種類が多いのでキリがありません。
どれも魅力的で全部欲しくなってしまい、どんどん深みにハマっていってしまうのです。
美しい音は誰の心にも感動的に響いて魅了し、そして古くから愛されてきた機構ですから手に入れる価値があるのではないでしょうか。

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