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【コラム】マーメイドはひとりで躍る⑧

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「もう14年にもなるんだな」。

 頭の中だけでそうつぶやいた。

 僕の視線にうつっていたのは、07年夏の甲子園。と言っただけで、高校野球好きはピンと来るかもしれない。そう、佐賀北高校対広陵高校による、伝説の決勝戦だ。

 試合は、広陵高校のエース・野村祐輔が圧倒的な投球を見せ、7回を終えて4対0と、広陵優勢。ここまで快進撃を続けてきた佐賀北ナインだが、この日は手も足も出ず、わずか1安打に丸め込まれていた。

 しかし8回裏、突如として勝利の女神はいたずらをする。1死満塁のチャンスを得ると、続く打者に対して、3ボール1ストライク。4球目、野村が投じたストレートに、球審の腕は上がらない。


 「エッ、ストライクじゃないの…?」


 微妙な判定を強いられ、大人びたエースはひとりの無邪気な高校球児に生まれ変わった。

 なおも満塁のピンチを迎えるが、この時マウンド上にいたのは、高校球児・野村だったのか。次打者が振り抜いた打球は、広陵のエース・野村が投げたとは思えないほどに飛んでいき、やがて大歓声のレフトスタンドへと消えていった。

 5対4。ゲームはひっくり返った。その裏、佐賀北はしっかりとリードを守り、ゲームセット。勝利の女神はいつも以上に不敵な笑みを浮かべていたことだろう。紛れもなく、甲子園に語り継がれる名勝負だ。

 勝利の女神とは対称的に、目からは涙がこぼれそうになっている。あぶない。霜降りチューブでも見て気を直そう。なんて器用に扱っているコイツだって、初代の登場から14年が経つらしい。iPhoneがはじまったのも07年なんて考えると、「時代」が変わるって本当のことなんだなと実感できるよね。

 「変わる」ものもあるけれど、もちろん「変わらない」ものだってある。今日は、そのことを証明しに来たと言ってもいい。小学2年生、はじめて出会ったあの頃から「変わらない」友情関係があることを、誇りに思える日が来たようだ。

 ハッピーバースデー。これからも変わらず、よろしくお願いしますね。ともにChronostasisを盛り上げていきましょう。にしてもさ、


「もう14年にもなるんだな」。


 

文・マーメイド侍

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