見出し画像

2023年観劇日記 まとめ

今年は計162本(複数回作品も含む)を劇場に足を運んだ(中止や体調不良は7本)。全般的な印象では、再演作品と翻訳作品に出色のものが多かった。その中で特に印象に残った作品を、観た日付順に記していきたい。

ほろびて 「あでな//いある」 こまばアゴラ劇場
  作・演出 細川洋平
美容師と客、高層マンションの地下で生活する3人。対比的な構図により 現代社会を表し複層的な世界を描いた。選考対象に入るのかわからないが、岸田國士戯曲賞を取ってもおかしくない。来年の2月劇団公演「センの夢見る」も楽しみ。

・「BREAKING THE CODE ブレイキング・ザ・コード」 シアタートラム
  作 ヒュー・ホワイトモア  演出 稲葉賀恵  翻訳 小田島創志
ドイツの暗号、エニグマを破った天才数学者アラン・チューリングの半生を描いた作品だが、なにより主役の亀田佳明さんが半端ない台詞の量を淡々として、だが物凄い熱量で演じていた。亀田さんと演出の稲葉さんは、何か受賞しそうだ。
来年の亀田さんは、新国立劇場「デカローグ」10篇に出演されるのでさらに期待。

・イキウメ「人魂を届けに」 シアタートラム
  作・演出 前川知大
東京初日と千穐楽の2回観た作品。偉大なる母、篠井英介さんがズバリのはまり役、あて書きなのであろうかと思ってしまう。この森には魂が住んでいて、そこで生活する人たちも魂を探し求めている。前川さんにまんまと不可思議な世界に連れていかれた。
前川作品ではイキウメとは異なる世田谷パブリックシアター公演「無駄な抵抗」も印象的であった。

・劇団普通「風景」 三鷹市芸術文化センター星のホール
  作・演出 石黒麻衣
全編茨城弁で家族のリアルな風景を奏でる石黒さんだが、この作品も複雑な人間関係を会話によって解きほぐしていってくれた。’ピアノの手’の表現って、なんて繊細なんだろう。
カフェムリウイでの三人芝居「写真」も秀作で楽しめた。

・範宙遊泳「バナナの花は食べられる」(再演)神奈川芸術劇場中スタジオ
  作・演出 山本卓卓
初演を見逃していた、今年の岸田國士戯曲賞受賞作品の全国ツアー。3時間の大作で、想像を超えた展開、たたみ掛ける台詞を満喫した。
三鷹scoolでの山本さんのソロ企画「キャメルと塩犬」も彼のことをたくさん知り共感できた。

・ぱぷりか「 柔らかる搖れる」(再演) こまばアゴラ劇場
  作・演出 福名理穂
コロナ禍の2021年初演時も観たが、今回キャストを全員変えての再演の方が印象深い。きつめの広島弁で、山奥に住む家族と訪れる子供たちや周辺の人々を通して、家族関係や地域の寂莫感を深く感じた。こちらも岸田戯曲賞を山本卓卓さんと同時受賞作品。

・ala collection「フートボールの時間」 吉祥寺シアター
  潤色・演出 瀬戸山美咲
香川県丸亀高校演劇部の高校演劇作品を瀬戸山さんが上質な泣かせる劇に仕上げた。1920年丸亀高等女学校の生徒と教師、写真館の娘の、フットボールとカメラを通じて女性の自立している様は泣けてくる。井上向日葵さんが好演。いつもながら可児市から、鮮やかな赤いバラをいただき嬉しい。

・名取事務所 「屠殺人ブッチャー」(再再演) 「劇」小劇場
  作 ニコラス・ビヨン 翻訳 吉原豊司 演出 生田美幸
カナダの作家「慈善家-フィランスロピスト」との交互上演。本作は名取事務所による3回目の公演だとのことだが、これまでまったく知らなかった。クリスマスイヴから日をまたぐ密室劇は東欧の民族紛争での惨い事実を明らかにしていく。物凄いストーリーテリングで驚愕の世界に導かれた。
翌週に観たリー・マクドゥーガル作・日澤雄介演出「ハイ・ライフ」も彼の訳。こうして良作を日本に持ち込む吉原さんの功績は大。

・iaku 「モモンバのくくり罠」 シアタートラム
  作・演出 横山拓也
終演後、ロビーにおられた横山さんに挨拶がてら「完璧です!」と言ってしまった作品。関西弁の会話劇で漫才のような笑いを交えながら、罠を仕掛けて山奥に自給自足で暮らす家族と取り巻きの喜怒哀楽を描く。枝元萌さんのキャラクターあってのこの作品ではあるが、ほかのキャストも見事。

・劇団牧羊犬 「夜の初めの数分間」 王子小劇場
  作・演出 渋谷悠
この劇団は本作まで知らなかった。恐るべし渋谷さん。平体まひろさんが出演される作品ということでチケットを取ったが、劇団も概要もまったく知らずに王子へ。出演者のバランスもいいし、テンポがよくキャラが立っている。タイトルの意味もラストでわかる。なんといっても、作品の構成と本がいい。

以上の他に、赤堀雅秋さんが対照的な「蜘蛛巣城」と異色作「日本対俺」、土田英生さんが青年座「時をちぎれ」、MONO「なるべく派手な服を着る」(再演)、が印象的な作品として記憶に残っている。
劇団アンパサンド・安藤奎さん、くによし組・國吉咲貴さん、ともにシュールな笑いのセンスには圧倒された。来年以降、注目していきたい。もちろん、山内ケンジさんもであるが。
大箱では、新規開館となったシアターミラノ座のチケットが取れ、「パラサイト」、劇団☆新幹線「天號星」を観て大掛かりな芝居を楽しむことができた。

ナカゴー、ほりぶんで活躍されていた鎌田順也さんが8月、38歳の若さで亡くなられた。毎年GWでの公演が楽しみであったが、5月2日に2本立てで観たホームグラウンドの王子・北とぴあの特別劇場が最後の作品となってしまった。10月に予定されていた新作「しられざる」は名前のとおりの作品になってしまうのか。
そして、4年間続けて会員になっている、こまばアゴラ劇場が来年5月で閉館となることが発表された。今年は駒場東大前に33回、小竹向原に9回足を運んだが、なくなるとなると、観劇量もかなり減ってしまうだろう。普段観ることない劇団や地方の劇団公演を観ることができる出会いの場であっただけに、閉館はかなり悲しい。

来年2024年は既に30本以上の作品がスケジュールに入っているが、良質そして刺激的な作品にめぐり合いたい。

蛇足で、気に入って観ていた連続ドラマは以下の11本(放映順)。

・6秒間の軌跡~花火師・望月清太郎の憂鬱  脚本・橋部敦子
・グレースの軌跡    脚本・源孝志
・家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった
           原作・岸田奈美  脚本・大九明子
・日曜の夜ぐらいは…  脚本・岡田惠和
・最高の教師 -1年後、私は生徒に■された  脚本・ツバキマサタカ
・VIVANT         脚本・八津弘幸ほか
・何曜日に生まれたの  脚本・野島伸司
・天狗の台所                原作・田中相 脚本・岨手由貴子ほか
・きのう何食べた? Season2  脚本・安達 奈緒子
・時をかけるな、恋人たち  脚本・上田誠
・ミワさんなりすます  原作・青木U平 脚本・徳尾浩司

長文となりました。