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塩の表現力。

文・撮影/長尾謙一

クリスマス島の塩(素材のちから第40号より)
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この塩は楽しい。
おいしい料理は、きっとつくり手も楽しんでつくっているに違いない。同じ素材を使っても塩の違いで味の表情が変わり、同じ技法でも仕上がりが違う。豊かな表現力はとても心地よい。つくり手の楽しさを味わうことも、レストランの楽しみの一つなのだ。

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塩は素材の魅力を引き出し、シェフの心までも表現する。
組み合わされる素材の旨み、甘み、酸味、辛み、食感、そして香りまで、すべての持ち味を豊かに表現する塩がある。イメージ通りつくりあげられた一皿からはお客様に伝えたいシェフの想いが伝わるはずだ。

角のないまるい塩味が、素材の繊細なニュアンスをいかしてくれます。

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料理長 川島 孝 さん

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ラ・ロシェル南青山店」 東京都港区南青山
調理師専門学校を卒業して2年間は結婚式場で働くが、本格的に自分自身が納得いくまでフランス料理を学びたいと、ラ・ロシェルの坂井宏行氏の門をたたく。東邦生命ビルではじまる新店のオープニングスタッフとして参加以来、渡仏していた3年間を除くと、28年間ラ・ロシェルに従事。2010年には山王店の料理長、2017年からは南青山店の料理長を務め、現在はラ・ロシェルの総料理長。群馬県出身。

つくり手が楽しんでつくった料理をお客様に提供するということ

私は11年間ずっと、毎週土日にはハーブ園に通っています。始発電車で行って2時間ほど収穫し、だいたい9時ごろ店に持ち帰ります。

南青山店はチャペルを併設していますので、土日はウエディングで結構忙しいのですが、鮮度の点はもちろんのこと、自分で収穫して運んできたものをお出しすることで、見えない内面の力のようなものがお客様に伝わればいいなと思っています。

フレンチにできるだけハーブの魅力を取り入れながら、さらに和のテイストも加えて料理を組み立てます。大切なのは使いすぎないことですね。できるだけ要素を抑えながら、ふっとさりげなくハーブを感じさせます。日本人にはそこが一番大切だと思います。

「なんだろう、この香り?」っていうところからハーブに親しんでいただいて、最終的にはその香りから生命を感じていただければいいなと考えています。

ハーブは癒し系もありますが、苦みや酸味の強いものもたくさんあって、この強いテイストをどうやったら料理の中に表現できるだろうかと工夫します。「この苦みを甘さと合わせるとどうなる?」とやっていると楽しいし、お客様にもそれを感じてもらいたいと思います。

「クリスマス島の塩」は知人のシェフから教えてもらって使っていますが、角のないまるい塩味はとても控えめで、塩梅よく素材の繊細なニュアンスをいかしてくれますから、美しくやさしい料理を組み立てられ、とても気に入っています。

「料理は楽しめ。」と坂井ムッシュからよく教えられましたが、確かに楽しんでつくったものは自分でも納得がいきますし、小気味よい料理ができます。

「クリスマス島の塩」の表現力

下の料理は青森産のシャモロックのもも肉と砂肝をコンフィに、むね肉を低温ローストしたものです。

〈メニュー1〉
〜白神山地の麓より〜青森シャモロックの低温ローストと腿肉のコンフィ トリュフ香るマデラソース
<下仁田葱><タピオカ><クリスマス島の塩>

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もも肉と砂肝はナツメグ、白胡椒、「クリスマス島の塩」で配合塩をつくって、24時間漬けておきます。これを68℃で約1時間半火を入れ、皮目をフライパンでカリッと焼き上げました。

「クリスマス島の塩」を使うと、やっぱり甘みと旨みがありますね。シャモロックの濃厚感が増した気がします。塩の表現力というのでしょうか、この塩の持ち味がいきているんだと思います。

むね肉はゆっくりと低温で火を入れ、まわりに不断草を巻いて中はトリュフのスライスとシャンピニオンデュクセルを入れています。

タピオカをトリュフと「クリスマス島の塩」で和えたものを上にのせました。タピオカがゼラチン質の役割をして、食べた時に口の中でむね肉の脂質を補ってくれる口遊び的なイメージで添えました。

あとはホイル焼きした下仁田ねぎ、揚げたセルフィーユの根、ソースはトリュフのみじん切りを加えたマデラソースです。ハーブはパンチのきいた辛みが特徴のクレソンアレノアを添えました。

お客様ご自身にお好きな塩加減で召し上がっていただくために、皿の左手前には後味用として「クリスマス島の塩」を置きます。お客様に塩味の選択肢を与えるというのはなかなか勇気がいりますが、この塩なら大丈夫ですね。

やさしい味の一皿にはこの塩が要る

次は、群馬県のギンヒカリというニジマスの料理です。

〈メニュー2〉
〜上州武尊山の清流より〜ギンヒカリのマリネと酒スパークリングのクリスタルジュレ
<自家製からすみと柿><蕪><エストラゴン>

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ニジマスは「クリスマス島の塩」を使ってマリネします。マリネしたニジマスをタルタルにして、切り身と層になるように型に入れ、発泡性のお酒を煮切って「クリスマス島の塩」を加えたゼリーで寄せました。

ギンヒカリを「クリスマス島の塩」でマリネすると、ギンヒカリの3年熟成の旨みがさらに増し、濃厚感が出ますね。

まわりは「クリスマス島の塩」でマリネした聖護院かぶで巻き、下にはエストラゴンに「クリスマス島の塩」を加えたゼリーを敷きました。そこに聖護院かぶのムースを添えて一緒に召し上がっていただきます。柚子のアクセントを入れ、「クリスマス島の塩」を使ってつくった聖護院かぶのチップをのせました。

お皿の左の方には自家製のからすみを盛り付けます。これも「クリスマス島の塩」で漬けましたが、この塩で漬けると発色がとてもいいですね。炙ってスライスしたからすみの間には柿を挟みます。上には、わさびの辛みがピリッとするナスタチウムの葉と花びらを飾りました。

トマトと赤ピーマンのソースで線を引き、レッドソレルというハーブを置きます。レッドソレルのさわやかな酸味はサーモンと相性がとてもいいのです。

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私は、ハーブの香りを立たせるには塩味が強く感じないように、全体的な塩梅に気を使います。すると自然に流れがやさしいお皿づくりになりますから、「クリスマス島の塩」の旨みのあるまるい塩味が必要なのです。

「クリスマス島の塩」は粋な演出ができる塩

次は、「クリスマス島の塩」を使ったデセールです。

〈メニュー3〉
苺と塩キャラメルのヌガー
塩サブレ入りフロマージュブランのアイス

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茶色のヌガーの間に塩キャラメルのムース、苺のバタークリームを挟み、上にカスタードのクリームを絞ります。塩キャラメルは塩味を強めに、バタークリームは塩味を控えることで強弱をつけ、味にコントラストをつけました。ピンクの泡は苺の塩メレンゲですが、メレンゲは塩を入れるとクリーミーになって甘さが深くなります。

アイスクリームはフロマージュブランがベースで、そこに香りとして「クリスマス島の塩」を使ったマジョラムの塩クッキーを焼いて加えました。やわらかな塩味がフロマージュブランのコクを引き出し、そこにマジョラムの甘い香りとサクッと焼けたクッキー生地の香ばしさが溶け込んでいます。

今までやったことがないことも、どんどん挑戦して新しくメニューの表現として取り入れていく。おいしい料理がドンと出てくるクラシックなフレンチももちろんいいですが、こうした予想しない味のドラマも新鮮でおいしいと思います。「クリスマス島の塩」はこうした粋な演出ができる塩です。

お問い合わせ:クリスマス・アイランド21株式会社

(2021年3月31日発行「素材のちから」第40号掲載記事)

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