この塩に肉の旨みが〝ガツン〟と反発する。
文・撮影/長尾謙一
クリスマス島の塩(素材のちから第42号より)
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「クリスマス島の塩」を肉にふると、肉の旨みが反発して旨みを増すという。その旨みの濃厚感は〝ガツン〟と表現されるほど衝撃的だ。
肉の香りと濃厚感を引き出す強い塩
旨みのある塩と、旨みのない塩では肉の旨みの反発が違う。品質の高い肉になればなるほどその差がよく分かるという。反発のない塩はただ塩辛く、ガツンと強く反発する塩は濃厚な旨みがしっかりと肉に現れる。「クリスマス島の塩」はやわらかな塩味を持つが、実は肉の香りと濃厚感を引き出す強い塩だった。
やはり、塩のちからでローストビーフの仕上がりは変わる。
代表取締役 中山 正人 さん
「クリスマス島の塩」を使うとローストビーフの仕上がりが変わるという話を再び耳にした。やはり赤く発色させる効果があるという。特に融点の低い脂には相性がよく、口の中にしっとりと濃厚な味わいを広げるそうだ。塩を変えて売り上げが大幅にアップしたと聞くが、本当だろうか?
ローストビーフ商品の売り上げが10倍へと爆発的に伸びた
弊誌2019年夏号で、東京江戸川区の〝肉のあさひ〟様に「クリスマス島の塩」を使って焼くローストビーフの取材をさせていただいた。
「クリスマス島の塩」を使って焼いたローストビーフに現れる赤い発色は〝ふわっと開いた赤〟と表現され、他の塩を使って焼いたものとは赤みが明らかに違った。
そこで今回は〝王様のバラ色ローストビーフ〟が大人気の横浜・長津田の精肉店〝中山肉店〟にお願いして、塩の違いがローストビーフの仕上がりにどう影響するかを再び確かめてみることにする。
中山肉店では普段使いの品揃えも充実しているが、特に牛肉には強いこだわりを持ち、霜降り肉というよりも肉質重視で、赤身も脂もおいしい但馬の血統が強い雌牛を一頭買いする。
ステーキ、ローストビーフをメインに誕生日やお祝い事にお客様が思わず牛肉を贈りたくなるようなギフト商品に力を入れていて、金曜、土曜になると一日300人のお客様が来店するという超繁盛店だ。
その人気の中心がローストビーフ。2~3種類の違う部位が楽しめる〝王様のバラ色ローストビーフスタンダード〟、さらに〝THE特選!! ローストビーフ〟〝サーロインローストビーフ〟〝ローストビーフ切り落しデラックス〟と4種のスライス商品が並ぶが、夕方には売り切れてしまう。その他にブロックでも2種が販売されている。
中山さんが「クリスマス島の塩」を使いはじめたのは6年前。ローストビーフ商品は2種から大きく増え、売り上げは10倍増へと爆発的に伸びた。
ステーキや牛タンに「クリスマス島の塩」2gの小袋を付けて販売してみると、こちらも「この塩はおいしい!」とお客様の評判も高いため、店頭で「クリスマス島の塩」の販売もはじめた。
切った途端、その違いに驚かされた
さて、ここから比較テストについて報告したい。今回は内モモを使って普通の塩と「クリスマス島の塩」を使い同じ条件でローストビーフにして比較した。それぞれブラックペッパー、シーズニングをまぶして、2日間冷蔵庫で寝かせておいたものを焼く。
焼成温度は110℃からスタートして30分、90℃で20分、最後の仕上げに70℃でゆっくりと休ませながらトータルで3時間ほどかけて焼き上げ、最終的に中心温度は両方とも56.5℃で仕上げた。
切って比較してみると、その違いははっきりとしていた。切る前から中山さんは「クリスマス島の塩」の方がしっとり仕上がっていると思うと言っていたが、まさにその通りだ。肉のしっとり感が違うし赤色の鮮やかさも明らかに差がある。
塩で肉を2日間マリネして比べると、普通の塩よりも「クリスマス島の塩」の方が流れ出たドリップ量が数グラム少なく、低温で焼き上げることによりほとんど肉が縮まない。これが鮮やかな深みのある赤色としっとりとした食感に通じているという。甘みがあり旨みもコクも強い。
ローストビーフはつくり手によってさまざまな香辛料も使うが、基本的には肉と塩と胡椒だけ、つまり味を決めるのは肉と塩だけということになる。
「クリスマス島の塩」の旨みに肉の旨みが反発する
中山さんは「クリスマス島の塩」を使うと肉の旨みが〝ガツン〟と反発するとおっしゃった。普通の塩はただ塩辛いで終わって旨みに深みが出ないが、「クリスマス島の塩」は塩の辛さを持ちながら、その中に旨みと甘みがちゃんとあり、これが肉の持つ旨みと反発し合うことでおいしさが跳ね上がる。
撮影後に実食してみたが、中山さんの解説通りだった。マリネする塩の違いでローストビーフの仕上がりが変わるなんて、にわかには信じがたいとおっしゃる方もたくさんいらっしゃるだろう。しかし、2回目の比較テストの結果もこうなった。
(2021年9月30日発行「素材のちから」第42号掲載記事)
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