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1万4千字で送るpコミュマイベスト2020

はじめに

今年のシャニマス、めちゃくちゃ濃い一年でしたね。もう何から書けばいいのか分からないくらい色んなことがあったので、単純に出来事を列挙していくだけでもそれなりに需要のあるものが書けそうな気がします…って書いてて気になったのでnoteで検索かけてみたんですがまだ無い…???書こうかな…
とか言ってたらこの記事書いてるだけで年末になってたので諦めます。本当はイベントシナリオ編とかサポートカード編とかもやりたかったんですけどね。ともあれ、この記事は「2020年に実装されたPカード」を対象に、個人的お気に入りランキングを作ろうぜ!というものです。公式画集のシナリオチームの言葉を借りればそれらに優劣はなく、等しく大切な一瞬ではありますが(完全に余談ですけどこの回答本当に良かった。この回答を出せるチームだからこそシャニマスが作れるんだなぁって…)、それはそれとしてあーでもないこーでもないと頭捻ったり心をえぐるのが楽しいのでやります。

2020年のPカード全部振り返る

トップ10を選出するににあたって、まずは今年追加されたPカードを振り返ってみましょう。ランキングを見なくとも、ここだけでも十分面白いかもしれません。なお、カードの並びはリリース日基準です。
1月 6枚
【鱗・鱗・謹・賀】幽谷霧子
【錯覚・Darling】園田智代子
【誰が為シンパシー】西城樹里
【清閑に息をひそめて】風野灯織
【雪染めロマンチカ】白瀬咲耶
【エクストリーム・ブレイク!】小宮果穂
2月 4枚
【うちのリボンは恋結び】月岡恋鐘
【FANCY 24g】田中摩美々
【メイ・ビー】和泉愛依
【お散歩サンライト】大崎甘奈
3月 4枚
【はるかぜまち、1番街】桑山千雪
【花結びゆくゆく】櫻木真乃
【♥AKQJ10】有栖川夏葉
【ハロー・ワールド】八宮めぐる
4月 4枚
【空と青とアイツ】芹沢あさひ
【You're My Dream】園田智代子
【四夜一夜物語】大崎甜花
【見つけたい、だけど……】大崎甘奈
5月 6枚
【海と太陽のプロメッサ】白瀬咲耶
【10個、光】浅倉透
【鳥籠をひらいて】有栖川夏葉
【カラカラカラ】樋口円香
【ご褒美、いるよね♪】和泉愛依
【アイの誓い】八宮めぐる
6月 5枚
【真紅一輪】白瀬咲耶
【ポシェットの中には】福丸小糸
【HAPPY-!NG】市川雛菜
【夏服にWIND YOU!】西城樹里
【途方もない午後】浅倉透
7月 3枚
【ソラを跳ね】櫻木真乃
【アンシーン・ダブルキャスト】黛冬優子
【く ら く ら】三峰結華
8月 3枚
【われにかへれ】杜野凛世
【#SS】市川雛菜
【叶えて☆ゴールドフィッシュ】大崎甘奈
9月 5枚
【cheer+】有栖川夏葉
【真・TRAVELER】田中摩美々
【秋陽のスケッチ】西城樹里
【猫道カントリー】月岡恋鐘
【シャッターチャンス!?】和泉愛依
10月 4枚
【乙女と交わすTrick】白瀬咲耶
【インビジブルタイム】風野灯織
【ギンコ・ビローバ】樋口円香
【秋空と紅葉】桑山千雪
11月 5枚
【雨に祝福】三峰結華
【まわるものについて】浅倉透
【不機嫌なテーマパーク】芹沢あさひ
【心の鐘が鳴っとるけん】月岡恋鐘
【一番星の魔法】櫻木真乃
12月 2枚
【プリティ・スイート】園田智代子
【starring F】黛冬優子

スクロールお疲れさまでした。
2020年は実に51枚ものPカードが実装されました。多すぎる...
皆さんはどれぐらい覚えていましたか?
今年はノクチルやGRADシナリオの実装、そしてイベントシナリオの印象がとても強かったので、イベント報酬としての供給が主だったpSRは忘れがちかもしれません。ともあれ、今年が終わる前にコミュを振り返ってみるのもまた一興ではないでしょうか。自分も見たいので。
さて、ここからが本記事の本題の2020Pコミュランキングトップ10(個人調べ)です。タイトル→カードイラスト(→スクショ)→コメントという流れになっているので、ネタバレを極力避けたい方は次の順位までスクロールするか、目次から直接ジャンプするか、ガシャを回しまくるかしましょう。ちなみに【海と太陽のプロメッサ】と【シャッターチャンス!?】、【乙女とTrick】と【雨に祝福】の4枚は引けていないので選考対象外です。

10位【まわるものについて】

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メリーゴーランド、CDプレイヤー、透とシャニP。
追いかけるもの、追いかけられるもの、まわるものについてのお話。
「過去プロデューサーが学生だった頃に出会ったことがある」
もう散々言われて久しい気もしますが、そんな反則じみた設定を携えてシャニマスに浅倉透がやってきたのもまだ半年ちょっと前なんですよね。
ノクチルの高いカード追加ペースもありますが、そのたびに一波乱巻き起こしてくれたこともあり物凄く濃密な展開だったと思います。
そんな透の初pSRですが、自由気ままな振る舞いの透と、そんな透の透明さ=見通せなさにどこか不安を隠せない様子のシャニPの間の少しぎくしゃくした瞬間を描いており、非常に「透らしい」コミュでした。
彼が透の振る舞いにここまで不安を抱くようになった最大の原因はおそらくWING編の「旅に出ます」事件なのでしょうが、そういう不安、もっと言えばある種の「不信感」を抱いていることをプレイヤーに隠さないというのは非常に攻めた内容だなと思います。【i♡DOLL】においても類似の表現がありましたが、時間の積層を感じられて非常に嬉しいですね。
Trueの「例の演出」と言い、透は型破りなことばかりで見ているこちらも予想がつきにくくて楽しいです。勿論上手く行くものばかりではないでしょうが、シャニマスにはどんどんやりたいことをやっていって欲しいです。

9位【秋陽のスケッチ】

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9位は絵が上手すぎるだろ(全部そう)の【秋陽のスケッチ】。
樹里ソロとしてラジオと撮影の仕事で地方にいくお話で、全体的に穏やかで静かな優しさに満ちた雰囲気でまとまっています。過去の傷と自己実現、そしてアイドルとしての在り方に迷いながら進んできた樹里ですが、このコミュでは拙いながらも自立し、そして同時にどこか伸びやかに仕事に臨む姿を見せます。普段は智代子の領分であろう食レポに挑戦してみたり、放クラ代表として普段と違うラジオ番組に出演してみたり、慣れないSNSでハッシュタグを使って投稿しようとしてみたり...
少しずつ活躍の場を広げていく様子は【階段の先の君へ】での誓いを思いおこさせますし、彼女の確かな成長を感じることが出来ました。樹里のコミュは全体的に優しさに満ちているんですが、それは樹里が「優しい一等賞」の名に恥じない心配りが出来る人で、そんな彼女を取り囲む人も皆優しいからなんだろうなと思います。
まさしく秋の夕暮れを切り取ったような、素敵なコミュでした。

8位【はるかぜまち、一番街】

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pSSRコミュランキングだと銘打って始めておいて恐縮なのですが、正直このコミュの評価には"薄桃色"の影響が多分に含まれていることは否めません。薄桃色についてこの場であれこれ語ることはしませんが、負け戦だとしても自らのアイデンティティをかけて戦える強さを見せられた後、ありふれた日常のふとしたロマンスに笑う姿を見ると、色んな気持ちの引き出しをもっているんだなぁと凄くしみじみとしたんですよね。コミュ中で起きた些細なことに彩を見出せる感性が元から持ち合わせていた物のなのか、それとも培われた物なのかは分からないですが、薄桃色を経てなお桑山千雪が桑山千雪を失わなかったことを描いたお話でした。GRAD、めちゃくちゃ好き。

7位【ポシェットの中には】

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7位は小糸の初pSSR【ポシェットの中には】。
夕暮れの事務所でひとり黙々と勉強に励んだり、小テストやオーディションの結果が上手く行かなかったりと、彼女のこれまでの経験をなぞるかのような出来事が描かれます。
やりたかったことが出来なかったり、やりたくないことをやらなくてはいけなかったり、小糸にとってこれまでの16年間は決して幸福な事ばかりではなかったのでしょう。事情は色々あるでしょうし、誰が、何が悪かったのかは分かりません。また今回描かれたような「うまくできなかったこと」にしても、必ずしもシャニPが小糸にしてやれることがある訳でもありません。それでも目線を合わせて話をして、落ち込みそうならポシェットの中のお菓子を差し出してあげる...そういう小さな優しさの積み重ねが、きっと小糸の笑顔に繋がっていくのでしょう。

6位【不機嫌なテーマパーク】

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これまでのイメージとは真逆の装いで登場し、界隈を激震させた芹沢あさひ3周目pSSR【不機嫌なテーマパーク】。「仕事で趣味ではない服を着せられて不機嫌なのかな?」などと予想した方も多いのではないでしょうか。
物凄く雑にあらすじをまとめるなら「あさひを遊園地に連れて行くこととその思い出」についての話で、あさひGRADの流れを汲んだ内容になります。
あさひGRADおよびこのカードの主題のひとつは「芹沢あさひと社会性」と言って良いでしょう。一連の流れについて、「卓越した才能の持ち主を凡庸な価値観に落とし込むことは損失であり、時代錯誤な指導ではないのか」という向きの指摘があります。この主張には自分も首肯しますが、同時に、芹沢あさひという人間がまっすぐに他人の姿勢を見つめられることや、孤独に寂しさを感じることも忘れてはなりません。今回の話で言えば「物を大切にできるようになること」、「体験を誰かに共有できるようになること」は少なくとも彼女の可能性を損なうものではありませんし、むしろ世界を広げるものだと考えています。

5位【ギンコ・ビローバ】

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「———ぐちゃぐちゃに引き裂かれてしまえばいいのに」
WING実装時点でめちゃくちゃに拗らせていた樋口円香が案の定更に拗らせて2周目限定として殴り込み。時系列的にWING前か後かで派閥があるようですが、個人的には後者の立場を取っています。小さく閉じた4人の関係を大切にしてきた円香にとって、そして誰よりも「浅倉透」を理解していると自負していた円香にとって、透からアイドルのスカウトを受けたと言われた時の心情はどんなものだったのでしょうか。透を騙して「虚構と欺瞞の渦巻く芸能界」に引き込んだはずの男の涙に、青く優しい理想と、臆面なくそれを追いかけられる強さを見てしまう気持ちはどんなものだったのでしょうか。
ギンコビローバではそんな二人の似て非なる部分が重ね重ね描かれており、
「実質シャニPコミュ」などと言われたりもしますが、片方に注目することでもう片方の思想や生き方も見えてくる面白いコミュだったと思います。
ところで「人は誰かになることはできない」というのがシャニマスの根底にある哲学ですが、ノクチルのキャッチコピーには「誰かになる必要なんてない」とあります。「人は誰かになることは出来ないし、誰かになる必要なんてない。」ギンコビローバもまさにそういう話だったと言えるでしょう。

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「誰かになる必要なんてない」という天才的なフレーズ。
4人にそれぞれ違う意味であてはまるのが凄いですよね

完全に余談ですが、自分はバカなので「なんだこのタイトル?あ、深読みを誘っておいて実は何の意味もない文字の羅列のパターンだな!」とほくそ笑んでいましたが、ネットの蓋を開けてみればイチョウの学名だのゲーテの詩だの何だのとなっていて赤っ恥をかきました。まぁ、いかにネット広し、いかにシャニマス民と言えど皆が皆元からそんな知識を持ち合わせている訳ではないでしょうが、調べる、考えるって大事なことですね...

4位【われにかへれ】

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こちらもpSSRコミュ単体の評価とは言い切れません。が、GRADをやられた以上凛世のpコミュを単体のコミュとして評価するのはもう無理なので開き直ります。切れた下駄の鼻緒を直してくれたシャニPに一目惚れしアイドルのスカウトを受けたとかいう、今日日よくそんなベタな出会い方にしたなとツッコみたくなる凛世ですが、その後の歩みは悪趣味なほど残酷で美しい悲恋の色を帯びていることで注目をされてきたことかと思います。ごく一部の例外を除いて、「アイドルマスター」と言えばなんだかんだギャルゲー的なPとアイドルのキャッキャウフフで成り立ってきたことは暗黙の了解でしょう。勿論それはシャニマスにおいても同じではあるのですが、一方でその色は他ブランドに比べてかなり毛色が違うものになっています。凛世のコミュはその影響を最も強く受けており、「Pとアイドルの交際」は言うに及ばず、そもそも「大人と子供の交際」が許されることはないという当然の事実と、「アイマスである限り、作中において恋愛関係の結実は描かれない」という不文律がある故に「凛世の恋が成就することはありえない」という大前提があります。また自らの恋が実ることはないと半ば知りつつ、それでも想いを秘め続けることを受け入れてきたのがGRAD以前の凛世だったと言えるでしょう。
求めて、欲しがって、声に出して、そうして初めて人の心を動かせる。
GRADにおいて描かれたのは、そうした「無欲さ」を捨て、報われずとも、たとえ痛みを伴ってでも「求める」ことの力強さでした。

そしてもう一つ、凛世GRADではとても重要な要素が描かれました。
それは「シャニPの態度の変化」です。意図的に言及を避けましたが凛世コミュが他アイドルのそれと比べて悲恋の色が強いのは、凛世コミュにおけるシャニPの倫理観と恋愛感情に対する鈍感さが最も強くなるから、というのがある種の共通認識になっています。彼は他人の心情を察して寄り添う能力に非常に長けているため、はっきり言えば色恋沙汰に対しての鈍感さは不自然です。普通に考えれば作劇上の都合のためのテンプレートなのでしょうが、普段の洞察力の高さを逆手に取り、「意図的に気づいていない振りをしている」説や「無意識的に気づいているが大人として一線を引いている」などの説なども唱えられていました。そんな中投じられた一石がこの発言。

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わざわざ背景が切り替わり、波の音が鳴る。意味深にもほどがある

極めてハイコンテクストなこのセリフに対する解釈は様々ですが、凛世の内に秘められた気持ちについて彼が言及するという異例の事態はとてつもない衝撃と共に波紋を呼びました。
「GRADを経て、凛世とシャニPの関係性には大きな転換があるに違いない」
そうした期待が膨らんでいた中【われにかへれ】が実装されたのでした。
嘘だろ、ここまで全部GRADの話なんですけど...

結論から言えば、二人の関係性は変化しました。が、その変化の幅はおそらく大衆の求めるレベルではなかったのだと思います。凛世の方は「欲」を露わにするようになり「確かにGRAD以後だ」と思わせる態度の変化を見せたのですが、シャニPの方は相変わらず残酷な正しさを保ったまま。「結局変わってないじゃないか」「テーマ扱いきれてないんじゃないのか」みたいな声もちらほら見かけましたね。

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まぁでも、そうだよな、実際

ただ、このあたりの事情は何とも探りにくいんですよね...
2019年限定カードラッシュで"≠"を筆頭に極めて重要なコミュが話題になったりしたことから「限定で重要な話をやるな」という圧がプレイヤー側で高まっていた反省なのかもしれませんし、ネタ切れを防ぐための意図的な遅延行為なのかもしれません(実際、どっちもある気はしています)。
個人的にはこれらの説に加えて「シャニPという人間の歪さを強調するため」という観方もあるのではないかと考えています。これまでのコミュで描かれてきたのは彼の「正」の側面が大半を占めており、その完璧な振る舞いに等身大の人間を見出すのは難しかったかもしれません。そんな歪さを埋めるかの如く彼の過去や「負」の側面にスポットを当てようという意図を少し前から感じていて、GRADを経験してすら【われにかへれ】で見せた彼の鈍感さには何かを見出せそうな気がします。

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GRADでの発言は、凛世が何か内に秘めた想いを持っていること自体を指していたのでしょうか。お前の心も知りたいよ、俺は...

社長→はづきと周辺人物のドラマも深堀されつつある中で、彼が「酸っぱいりんご飴」を知った経験が明かされる日は来るのでしょうか。

3位【メイ・ビー】

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TOP3を飾るのは愛依の2周目pSSRとなる【メイ・ビー】。
コミュの内容抜きにカッコよさで言っても確実に今年TOP3には入りますね。
思い出アピールの能面ドアップのシーン、めちゃくちゃ好き。
さて肝心のコミュの内容...の前に、メイド×銃っていうよく分からないコンセプト(でも割とよく見かけるよね)。どういうこと??

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向こうもよく分からないらしい

まぁ「愛依の戦い」がテーマなので、そこから連想ゲーム的に武装メイドのイラストが産まれてコミュを起こしたとかそんなところでしょうか。さてこの【メイ・ビー】ですが、愛依のコミュとしては非常に有名なものでしょう。主に次の発言によって。

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開戦の合図。ノミネートの中では一番不人気だったけど、一番好きだよ...

この発言に象徴されるように、【メイ・ビー】はアイドルとしての愛依の戦い方に注目した非常に重要なコミュです。WING編で語られたように、愛依は極度のあがり症のため素のままではステージでまともにパフォーマンスを行うことが出来ません。そこでPは「ミステリアスキャラ」という嘘を被せることによってあがり症の問題を解決し、むしろ武器として利用することを愛依に提案し、彼女もそれを選択したのでした。これは「短所も曝け出して克服していこうよ」的な従来のアイマス文脈とは明確に異なりますし、「そのままの君でいいんだよ」的なシャニマス文脈とも微妙に違うユニークで挑戦的な手法であり、個人的にもかなりシビれました。

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戦うために「嘘をつくこと」を選ぶのって、良いよね

一方でこのやり方には一つ大きな欠陥が存在します。それは「普段の愛依を知り、嘘を見抜ける人間の存在を考慮していない」という問題です。普段の愛依は明朗快活で友人も多く、彼女を知る者にとって「アイドルの愛依」が作られたイメージであることは明らかでしょう。素性も詳しく知らぬ大男をも恐れない愛依の友人「さなぴー」により火の玉ストレートが放たれたことで、WING編では扱われなかった問題に真っ向から挑むことになります
シャニPを糾弾する友人との不和、アイドルとしての在り方に悩む愛依。
おそらく大切な人間に優先順位などつけられそうもない彼女ですから、
その板挟みに置かれる辛さはそれなりに大きかったのではないでしょうか。
悩みを打ち払うきっかけは少々古典的でしたが、「ミステリアスキャラ」は自らが選択した武器であり、ストレイライトの一員として恥じぬアイドルになるのだとはっきりと覚悟を決めた愛依はPにゆっくりと語り掛けます。

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異例な状況とシャニPの対応も相まってかなり印象に残っているやり取り

シャッターチャンスもは180連くらい回して引けなかったんですが、
WE:BDが「ストレイライトにおける愛依」についての話であったり、GRADにも「さなぴー」と思しき人物が再登場したり、愛依の物語は「アイドルの虚構性」に強くフォーカスしていて個人的にとても楽しみにしています。

2位【10個、光】

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ノクチルpSSRラッシュの口火を切った【10個、光】が2位にランクイン。バスの支柱握ってるだけで絵になる女、浅倉透が「一生のうちにやりたい10個のこと」をアンケート企画のために考えるというお話です。
「一生のうちにやりたいこと」って、どれぐらいありますか?
「10個じゃ収まらない」って人もいるでしょうし、
「1個も思いつかない」って人もいるでしょう。
そもそも透にとって、これまでの人生は緩慢で終わりのないものとして映っていました。かつてその緩やかな牢獄から連れ出してくれたシャニPに再会し、アイドルとして世界を登ることで人生に変化と色がもたらされたとしても、急にやりたいことが10個も20個も降って来る訳ではありません。
その場で10個も答えが出てこなかった透とPは、「それっぽい答え」を探すことを宿題にしてコミュが続いていきます。

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透にとって、目の前に居るその人もある意味「宇宙人」

このカードが好きなのは、コミュの中で透がみつける「やりたいこと」を通して「透の感性と価値観」と「透とシャニPの関係」とを非常に美しく描いているところです。
そもそも浅倉透は感情の起伏が穏やかで、自分の考えを他人が理解できるように言語化することが苦手な人間です。深遠な内面を思わせる落ち着いたオーラとふわふわした表出とのギャップはシャニマスの世界だけでなく現実に住む我々の世界においてもバズりにバズりましたし、「頭ジャングルジム」などと揶揄する向きを見た方も多いと思います。

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やる前から結果分かってたやつ

ですが彼女は決して何も考えていない空っぽな人間などではありません。
優れた中性的な容姿と雰囲気から高いカリスマ性を見出される彼女はしかし(あるいは、「だからこそ」)社会が要求する不文律に関心がない様子で、あくまで自然体のままでいることを好みます。他人に自分を規定されることを嫌う円香や、自分の価値観に他人の介入を許さない雛菜と微妙に異なるのは、透は他人の介入それ自体を嫌っている訳ではないことだと思います。彼女にとって重要なのは「本質を捉えていること」であり、立場や属性だけを掬った個人に寄り添わない文脈に囚われることに漠然としたストレスを感じているように見受けられます。

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透とシャニPという個人を覆う「アイドルとP」という目に見えぬレイヤー

ただ面白いのは、透は何も考えていない訳ではない一方で、そういう自分の考えや渦巻くモヤモヤを分析的に整理出来ている訳でもないという所です。
「キスシーン」や「ワリカン」に透が感じた気持ちは、必ずしもシャニPが感じた気持ちと同じ訳ではないでしょう。また、「昼光ってるもの」について彼が語った決意にしても、透に正しく伝わったのかは分かりません。

でもたぶん、それで良いのです。
今は気持ちをうまく言葉に出来なくても、自分のことを思い出してくれなくても、いつか伝わる、いつか思い出してくれるその時まで彼が傍にいてくれれば。今この瞬間が誰のものでもない、二人だけのものであるならば。

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夜空の星々に紛れた一番星のこと、思い出してほしい

【途方もない午後】もそうでしたけど、乙女ですよね、普通に。

1位【空と青とアイツ】

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「———空、見てるっすか?」

2020年のマイベストpSSRに輝いたのは【空と青とアイツ】でした。
正直この1枚に関しては完全に別格で、2020年どころか(手持ちの)全pSSRの中でのベストだと言い切ってもいい。それぐらいに好きなコミュです。
もうめちゃくちゃ好きなので体裁とか無視してもう全部書いていいですか?
もう全部書きます。

何が良いって本当にもう全部なんですけど、まずコミュのお題ですよね。【空と青とアイツ】では「事務所に築かれた秘密基地」を主な舞台にコミュが繰り広げられていきます。この設定だけみると放クラ感謝祭を思い出しますが、あちらがあくまで感謝祭期間中に限って事務所内の一室を利用していたのに対し、こちらは当然のように無許可で勝手に倉庫に築いたものでありあさひの自由奔放さが前面に押し出されたものとなっています。
当然シャニPはあさひの行いを注意しないといけないんですが、あさひの余りにも楽しそうな様子と、「秘密基地を作る」という身に覚えのある体験を思い出したのか、「助手」という体でお目付け役になることを条件に様子を見守ることを選択します。もうこの時点で完璧な導入なんですよね。
何故ならあさひとシャニPとプレイヤーの目線が重なるからです
あさひは追加アイドルとしてシャニマス1周年を機に実装されたのですが、天才的なダンスのセンスと、何よりも天衣無縫で荒唐無稽で予想不可能な振る舞いによって2年目のシャニマスの話題の中心になってきました。そんなあさひの気持ちが理解できる、共感できるというところから始まるため、このコミュの特殊性が分かります。

コミュ2では、更にその「あさひへの共感性」が強調されます。未確認飛行物体を見かけたというあさひが夜中に外出しようとするので仕方なくついていったのに、いつの間にやら彼女の興味の対象は土産物に移ります。おそらくはロケか何かで遠地の土産屋が立ち並ぶ通りなのでしょう、どれもこれも雑多で使いみちのないものばかり。そんな中であさひが選んだのは「特別なバット」でした。それを聞いてシャニPは過去の修学旅行を思い出すんですが、このくだりが本当に美しい。

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そう、いるものなんだよな あの時のあんたもそうだったろ?

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それでこの選択肢が出てくるんですけど、もうこの画面でボロボロ泣いちゃうんですよね。ここまで来ればもう完全に分かるんですけど、
かつて子供だった我々のノスタルジーと、
すべてがキラキラに映る子供に寄り添う優しさと、
いつか忘れてしまう童心を描いたのが【空と青とアイツ】なのです

あまりにも美しく、そしてあまりにも切ない。結末を知っているから。
この選択肢全部好きなんですけど、個人的には右の選択肢が一番好きです。

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コミュ3では再び舞台を事務所と秘密基地に戻します。事務所屋上で空に向けてシャッターを押しているあさひ。聞けば「空を撮っている」とそのままの回答。意図が掴めず思わず苦笑するシャニPですが、風邪だけ引かないようにと注意してその場を後にします。翌日倉庫を訪れてみれば、吊るされた空の写真が彼の目に飛び込んできます。その妙な光景に一瞬戸惑うも、その光景の意味を理解するんですよね。

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叙事的な発言でしかないのに、これ以上ない抒情的な色を帯びている

瞬間、窓から飛び込んできたあさひに対して疑問や不満を弾丸のように浴びせるのですが、ここのシャニPの鬱憤溜まってたんだろうなって様子とか、そんなシャニPの小言を「きかなくていいやつ」と判断して目線ずらすあさひの様子とか面白いですよね。結局あさひは勝手に話を切り上げて再度写真を撮りに行ってしまうのですが、その勝手さ、自由さに面食らうと共にどこか嬉しそうな彼の様子もうかがえます。あさひの声優の田中有紀さんもインタビューで仰っていたんですが、「空」をみて「この空を狭めるわけにはいかないんだよな」とこぼす彼の台詞が本当によくて。やっぱりあさひの行動は注意しなくちゃいけないし、その時は迫っているんだけれども、無機質な倉庫に青々とした空を描き出せる感性を失わせないためにどうすればいいのか。大人としての彼の発言に込められた悩みと信念が伝わってくる本当に良いセリフです。

コミュ4。あさひが持ち帰って来た給食をめぐる一コマで、これまでとは打って変わってコメディ調というか、やや穏やかな目線で見られます。ただ相変わらずあさひの予測不可能性は描きつつも、これまでとは少し異なる「大人だからこそできること」を描いているのが上手いですよね。自分も今年社会人になって一人暮らしを始めたのですが、自由と経済のパワーって凄いなって実感しています(勿論同じくらい苦労もあるんですが)。箸休め的なコミュでありつつ、「大人と子供の違い」というテーマをきっちり抑えてくるのは流石。大人の経済力の話をしましたが、このコミュではシャニPがきっちり少年に戻っているのも評価ポイントです。右の選択肢が一番好きで、自分の取り分がなくなりそうで不安そうなところとかかわいいですよね。

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やっぱりお前が一番アイドルなんじゃないか?

そしてTrueコミュ。
いよいよ完全にコミュ実況になるんですけどいいですか?
秘密基地の発展が進み、いよいよ本格的に倉庫が倉庫として機能しなくなりつつありました。嬉しそうに秘密基地のイメージを語るあさひに、ゆっくりと切り出すシャニP。

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ここさぁ~~~~~~~~~~~~
事務所を仕切る人間として、大人としてやっぱり「秘密基地」はやめさせないといけないじゃないですか。でも同時に、「この空を狭めるわけにはいかない」の発言にもあるようにあさひの創造性を損なわせてはならない
秘密基地が「無人島」のイメージであることはこのタイミングで開示された情報なので彼の「想像」がアドリブであることは間違いありませんが、どういう形で伝えれば彼女の個性と社会性を両立させられるのかあれからずっと考えてたんだろうなぁと思うと、こう、今書いてて普通に涙ボロボロでてくるんですけど、たぶんあるあるだと思います。

「俺が壊したりしたくないし
誰かに壊されたりもしてほしくないんだ」
「———もしこの場所が、別の誰かのものだったとしてもさ」

そしておそらく、その「ずっと考えていたこと」はこのセリフに込められているんでしょう。大人の狡さと彼の優しさの詰まった吐露、切なすぎる。

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さっきからセリフ進めるたびに嗚咽漏らしてていよいよだと思う、俺

当然、聡いあさひは彼の発言の意図を察します。誤解されがちですが、あさひは決して人の意図を読めない人間などではないんですよね。荒唐無稽な行動という出力ばかり注目されますが、その内部には「自分の興味と自分への好感度を天秤にかける」という判断=理性があることがrun()の時点で明らかになっています。そしてその天秤は、実装からの一年を通して必ずしも一方向にのみ傾く訳でもなくなってきました。WING、run()、感謝祭、P4U、あめゆきはれなど、さまざまな経験を通してゆっくりと、しかし確実に変化してきたのです。

翌日。

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給食の残りか、『家賃』と題して小魚とアーモンドだけが置かれた倉庫

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片付けられた秘密基地と『家賃』に彼が戸惑っているとやって来たあさひ。
結局、あさひは「おじいさんの島」の秘密基地を「解散」することを選びました。間接的にとは言え彼女の作品を壊してしまったやるせなさと、それを表現する彼女の感性に言葉が詰まるシャニP。そして―――

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これより美しくて切ない台詞、そう無いと思います。
だって、大人の我々には分かるじゃないですか。
人工衛星で地球の隅々まで見下ろせて、月や火星の土地すら買える時代に、「誰のものでもない場所」なんてある訳がないことくらい。
法律や組織といった「社会」を無視できる場所がないことくらい。
でも、青々とした空の美しさを知るあさひにはその言葉が言える。
そんな場所を探すことが出来る。
そしてその目線は、確かに我々がもっていたはずのものでもある。
それはつまり、やがてあさひが失ってしまうものかもしれないということ。

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いつかの夜に買い、忘れないと言っていた「特別なバット」

その証拠に「特別なバット」だけ片付けるのを忘れられているんですよね。
まさにシャニPが「いつのまにか傘立てに入っている」と言ったとおりになっていて、あさひが「当たり前の大人」になることを想像させてコミュが終わっていく。一見、あまりにも救いがない残酷な終わり方です。

ですがここで、今まで意図的に言及を避けていた「コミュタイトル」が効いてくるんですよね。

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倉庫に築かれたガラクタの山をみて(基地、なんだろうなぁ)とつぶやき、
役に立たない物を楽しそうに買う姿を見て(修学旅行みたいだ)と独り言つ。
倉庫をまばらに横切る写真たちに(見えるよ)と青々とした空を見出し、
ずっと昔の給食を思い出して(合唱。いただきます)と手を合わせる。
コミュタイトルがコミュ中に一度も登場しないことから、それらは全てシャニPの内心の発言であることが分かります。
それを踏まえてTrueの(見つけような)というタイトルを見ると、そこにはあまりにも多くの想いが込められているように思います。
あさひを通して思い起こされた少年の頃への懐古、
無機質な倉庫を彩った芸術が消えたことへの寂寥、
いつかあさひの感性も失われてしまうことへの諦念、
それでも「あさひなら見つけられる」という身勝手な期待と、
一緒に成し遂げよう、隣で見届けるよという激励。
そんな万感の思いをこめて、芹沢あさひと、かつて青い空を見ていた過去の自分=アイツに呟く構図が余りにも、余りにも美しい。

正直いって、このコミュを見るまで自分はここまであさひに興味があった訳ではありませんでした。彼女が自分勝手なだけの人間ではないことは分かっていたつもりですが、彼女の成長とそれに伴う変化に対してここまで寂寞を感じるようになったのはこのコミュで徹底して描かれた「当たり前の人間としての芹沢あさひ」の視点が得られたからだと思います。
【不機嫌なテーマパーク】のコメントにおいて、彼女が「当たり前の人間」になることを指して批判する向きがあると述べました。再度言及しますが、これは非常に難しい問題だと思います。はっきり言えば、彼女の創造性を損なうリスクとしてはこのコミュの方がGRADやテーマパークよりも高いと思います。ですが、シャニPはWING優勝後に見せたあさひの寂しそうな顔を知っていて、他人と世界を共有できた喜びに笑うあさひの顔を知っている訳ですよね。得るもの、失うもの、変化していくもののバランスは複雑で、彼の選択もまた必ずしも正しいものばかりではありません。
GRADやテーマパークでは二人の間のコミュニケーションが微妙に上手くいかない様子も描かれ、改めてこの問題の難しさが強調されました。
時間が進まない中でどこまでやれるのだろうかという不安も正直あります。
それでも自分は、(見つけような)と祈った彼とあさひの行く末を見届けたいと思っていますし、そこが彼らにとって幸福であることを願っています。



総括

長い。読者のことを何も考えていない長さ。
どう考えても分割すべき長さだし統一感もめちゃくちゃなんですけど、
ありのまま湧いてくる気持ちの方を優先しようと思いこの形になりました。
もしここまで読んでくださった方がいらっしゃったら、つきあってくださって本当にありがとうございました。
今年はイベントシナリオの完成度が非常に高かったり、ノクチルやGRADが追加されたり、もちろん新型コロナウィルスによる社会混乱があったりと、シャニマスにとって激動の1年だったと思います。ついにソロ楽曲が実装されたり、3rdライブの発表があったり、pSSRもそろそろ6周目が見え始めたりと今後のシャニマスの展開がどうなるかは予想できませんが、最後まで応援しつづけられればいいなと思います。
色々難しい問題は山積していますが、来年がシャニマスにとって幸福な一年であることを祈って筆を置かせていただきます。
あらためてお付き合いいただきありがとうございました。

引用
アイドルマスターシャイニーカラーズ

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