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76年 ホスピスへの萌芽 淀川キリスト教病院伝道部

末期患者が残された時間を十分に活かし、より良き死をも迎えられることを目的とした近代ホスピスは、1967年、イギリスのセント・クリストファーズ・ホスピスから始まる。
日本では1981年(昭和56)、静岡県浜松市の聖隷三方原 (せいれいみかたがはら) 病院に開設され、1984年、大阪・淀川キリスト教病院に西日本初の病棟型ホスピスが開設されている。

ホスピス緩和ケアの歴史を考える年表

さて、今回紹介する1976年8月8日のクリスチャン新聞「医療伝道」特集記事は、日本のホスピスを牽引していくことになる淀川キリスト教病院において、実際のホスピス開設以前からの課題として取り組まれていることが理解できる。(一番下にクリスチャン新聞該当記事のスクラップ)

当時、病院内に伝道部があり、病院専属牧師、協力宣教師、女性伝道者2人の体制だった。
クリスチャン新聞記事は、その専属牧師・久保孝司さんの寄稿。

文は、その自らの働きの最初期(18年前)において、確実に死に向かっている病者と向き合うことができなかった経験から書き起こされている。

そして、これまで深く心に残っている患者のケースが2つ、紹介される。

その中で、信仰故に死への恐怖は克服できていても、肉体の痛みは耐えがたいものであると教えられ、その緩和に必要性が分かった由、記されている。

死に向かう「絶望的な状態に至って最も助けになり力になるのは、私と同じように死に向かって、しかも私の罪の贖いとなるために十字架に向かって生きられたキリストだけです」という、ある患者(元牧師)の言葉を紹介している。

信仰を持つことなしに死亡した人々の場合との関わりにおいて、病院での、死につつある病者への牧会的アプローチの持つ性質や問題を6つ挙げている。

  1. 臨終の伝道は、伝える者自身が「自己の死」をイエス・キリストの十字架と復活というコンテキストの中で見ていないと、死を取り扱うことはできない。

  2. 臨終の伝道は、むしろ死につつある者への牧会的配慮。単に性急にみことばを伝えるのでなく、まして信仰を押しつけることでもない。

  3. 病者の意志や感情を無視してはできない。死の様態の多様化を受容し、規定概念を持たず、さらに家族の心理や家庭事情の考慮が不可避。

  4. 臨終牧会配慮は病院組織内の他の専門職部門、医師、看護師、精神科医、ケースワーカー、その他パラメディカル部門によって構成されるチームによるべき。

  5. チームの性格の根底に、各人の人間観、死生観、医療哲学や倫理が、死を克服したイエス・キリストに基づく有神論的バックボーンが必要。

  6. みことばの蓄えと聖霊の助けを切に祈り求める。

さすが、キリスト教の専門紙である。医療従事者だけでなく、牧師や信徒全般に、そこまで踏み込んで説明し、理解を求めている。

クリスチャン新聞1976年8月8日


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