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2021年の映画3選

読書記録はマメにつけているが映画の記録はあまりつけていなかったな、と思い今年劇場で見た映画を振り返ってみたところ、18本見ていた。ほとんどは109シネマズとチネチッタ川崎、それとシネマート新宿で観ているので、チケットの購入履歴から数えた数値に大きな間違いはないはずだ。

18本というのは微妙な数字である。月に1.5本。日本人の平均は年間1.4本という調査もあるので平均よりは多いが、四六時中映画を見ているような人達には遠く及ばない数字である。

『デューン 砂の惑星』のような大作映画も見ていることは見ているのだが、シネマート新宿によく行くことからも分かる通り、基本的には見たい映画を見るスタンスでいる。そういうわけで、やっぱり人に勧めたい映画はある。配信でも見られる2021年公開の映画を3本選んだ。

KCIA 南山の部長たち

朴正煕暗殺を下敷きにし、暗殺を行った金載圭を主人公に据えた韓国サスペンス。作中では朴正煕は「パク大統領」金載圭は「キム・ギュピョン」となっているが、韓国史に少しでも知識があれば誰がモデルになっているかは分かりやすい。

推しポイントとしてはとにかく主演のイ・ビョンホンの演技が素晴らしい。パク大統領のパワハラとCIAからの介入の板挟みに遭う中で、青瓦台(「永田町」的な用法)ではクァク警護室長が幅を利かすようになる。そのなかでキム・ギュピョンが追い詰められていく様を丁寧に演じていく演技力が素晴らしい。

パク大統領のパワハラ描写もなかなかにエグい。パワハラに苦しんでいる人はあまり見ない方がいいだろう。韓国映画にありがちな暗い画面作りと相まって終始ピリピリとした緊張感があり、結末は知っていながも緊迫感で目が離せない2時間となること請け合いだ。

アウトポスト

雑に紹介するとブラックホーク・ダウンと似たジャンルで、ひたすら米軍と現地の武装勢力が撃ち合う映画。映画自体の出来はオールタイムベスト戦争映画には入らないのだが、この映画の特異なところはエンドロールに集約されている。というより、エンドロールへの壮大な前振りとして撃ち合いが存在する。

エンドロールでは本作の下敷きとなったカムデシュの戦いの生還者がインタビューに答える。ここで、米軍兵士がどういうメンタリティで戦争に参加しているのか、という部分が垣間見える。視聴後にクリントン・ロメシャ(映画ではスコット・イーストウッドが演じていた)による『レッド・プラトーン』を読むと更に兵士への理解が深まるだろう。

狂猿

新日本しか見ない人ならともかく、プロレスファンで葛西純の名前を知らない人間は少数派である。そう信じたい。「デスマッチのカリスマ」の異名を持つ彼は、デスマッチを「やらされるもの」から「進んでやるもの」に変えてしまった男である。若い世代のデスマッチファイター達は多かれ少なかれ葛西の影響を受けているし、業界において「葛西純に認められた」は勲章となる。

デスマッチというのはプロレスでも特異なジャンルである。刃物や有刺鉄線を使い、身体を傷だらけ、血だらけにしながら闘う、異端のジャンルと言ってもいい。

葛西の自伝の刊行とあわせてドキュメンタリーが撮られたのだが、ヘルニアによる長期欠場とコロナ禍によるプロレス興行自体の縮小と重なったことで、本作はデスマッチのカリスマの生き様を伝えるだけではなく、プロレスラーの生き様をも伝える映画になっている。

面白いのはドキュメンタリーでありながら、試合映像が非常にスタイリッシュな点である。うろ覚えだが週プロのインタビューで監督が述べていたところによると、MVの感覚で編集しているらしい。蛍光灯が割れる瞬間をスローで回すのは中継映像ではまず有り得ないので、映像としての面白さはプロレスファンならずともフックになりそうだ。

かつて武藤敬司は「客を呼べるレスラーが最高のレスラーである」と言ったらしいが、葛西は間違いなく客を呼べるレスラーだし、とにかくカッコいいので、流血映像に抵抗がないなら見てほしい一作だ。


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