ちょうちょとさかな

#1 ちょうちょとさかな 【第1話 大島】

 はい、それでは張り切って最初の公開日記を書きます!それっぽく3回の連載モノにしたいと想いますが、一言だけ、先に申し上げます。"時間をムダにしてしまった!"という後悔後に立たずです。何よりこれは日記なので!

 それではいきます。

 まず、最初にこの"ちょうちょとさかな"という連載(いい感じの響きですね)について説明させていただきます。これから3回に分けて書く内容は、フィッシュマンズという90年代に絶大な人気を誇ったバンドについて、ではなく、フィッシュマンズにまつわる店主(以下、"わたし"とする)の旅のはなしです。第1回目は大島、第2回目はソウル、第3回目は千葉、という形で、フィッシュマンズを巡った文章が繰り広げられます。そして回を重ねるごとに、話は濃くなります。ですので、フィッシュマンズについての詳しい文章をご期待の方は、川崎大助さんという方が書かれた"フィッシュマンズ 彼と魚のブルーズ"とかを読んだらいいと想います。(※わたしはまだ読み途中ですので、川崎大助さんという方の回し者ではございません)

 ところでなぜ突然、フィッシュマンズの話をし始めるかというと、きょうが佐藤伸治さんの命日だから、、、というのもちょっとタイミング的にはあるのですが、実は話はもう少し根深いところにあります。というのも、このフィッシュマンズに、もしもわたしが出会っていなかったら、このジャーナルの先駆けとなった、ちょうちょレコードは誕生していなかったからです。勘のいい人はすでにいろいろ想像ついてしまっていることでしょうけれど、どうぞそっと、お付き合いいただけますと幸いです。


ちょうちょとさかな 【第1話 大島】

音楽:フィッシュマンズ / 旅: 大島

 時は2000年代(…)、大学生のわたしは大学の映像サークルの合宿で、東京の大島にいました。と言ってもわたしは映像などつくっておりませんでしたが。わたしが通っていた大学は、就職活動の際に"社会不適合者を多数輩出する"ということで有名な大学で、その中でも更に社会不適合を極めるメンバーが集まる場所が、わたしが所属するMというサークルで、わたしはそこで幽霊部員の役割を担っておりました。それでですね、えー、よくわからないけれど、その時は幽霊部員なのに合宿に参加していました。経緯は不明。確か3泊4日で10,000円くらいで行って、1泊目は夜行船の中で、残り2泊は、布団がカビだらけで使用済み綿棒とかがそこらへんに転がっているような宿に泊まったと記憶しております。着いた瞬間、潔癖症のわたしは腹痛を起こしてその薄汚い布団にくるまって寝込みました。マジで最悪な想い出です。肝心な合宿全体としては、何をしていたのか記憶があまりないというのが正直なところで、ただ、オバケが出るみたいな地域だったので、男女ペアとかで肝試しをした記憶がありますが、特に甘い記憶はありません。つまんなそうな感じ、いい感じに伝わってきたと想います。

 しかし、つまらなかったかというとそうでもなかったのです。目的地に移動するドライブが心底たのしかった。それは合宿の目的ではなく、”目的地への移動”とういう、必然的に発生するものでしかなかったのですが…。レンタルしたバンに、男子も女子も先輩も後輩もぎゅうぎゅう詰めで乗り込んで、ラジオから流れる歌をみんなで合唱しながら、急な山道をどんどん進む。くるりの"ばらの花"とか歌いながら。あの時の一体感って、フェスとかで感じるあの感じに限りなく近かったのではないかな、と今は想います。そこにいるみんなが同じものが大好きで、楽しくってたまらなくって、他にはなんにもない。そういう意味ではフェスよりも少人数だからもっとその尺度にゆらぎがなくって、フェスより濃厚だったのかもしれない。正直なところ、あの時はその正体をうまくつかめていなかったのだけれど、とびきりピカピカで、こころふるえる、楽しい時間でした。またあんなシーンに居合わせたいけれど、それにはわたしは少し、歳をとりすぎてしまったかもしれない。(←急に老け込んできましたが、大丈夫でしょうか…)

"安心なぼくらは旅に出ようぜ 思い切り泣いたり笑ったりしようぜ"                             -くるり / "ばらの花"

 そんな風に調子よく進んで、合唱もいい感じなのに、くるりが終わったら、カーステレオから静かで不思議な曲が流れてきた。まるで埃まみれで、寂しくて、だけどあたたかい恋の話をしているような、ねずみ色の歌。そこですっかりみんなシンとしてしまって、秋の夕焼けの道をバンはヤル気ない感じで進むことになってしまった。わたしは泣きたくなるようなそのねずみ色の歌をじっと聴いた。そして、最後に誰の曲かを絶対忘れないようにしようと想って、パーソナリティーの声を耳をすませて聴いていた。その曲は、フィッシュマンズというバンドの"頼りない天使"という曲らしかった。それ以上の情報はわからない。これが、わたしとフィッシュマンズの出会いだった


なんて素敵な話だろう こんな世界のまん中で 僕ら 2人ぼっち     - フィッシュマンズ / "頼りない天使"


 2017年3月15日、今日は東京で雪が降るかもしれないらしい。

 3月もまん中、春の準備をしているところなのに、風邪ひきそうです


佐藤さん、

 今日はたくさんの人が、佐藤さんの為に祈るでしょう。

 わたしも、その1人です。



 2017年3月15日

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