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【SS】猫吸いは万薬の長



昔昔、大病を患った殿様がおりました。

その殿様には大変可愛がっていた猫がおり、気まぐれに生きる猫とのたまにの触れ合いに殿様は癒されていました。

そんな殿様にいよいよ病が身を蝕み、生死の瀬戸際をさ迷っていたときのこと、
猫がするりと寝所へ入ると苦しむ殿様の顔の上を跨ぐようにして自らのお腹をのせ始めたので家来は慌てて猫を動かそうとしましたが、動く気配がありません。

最初こそ苦しそうな殿様の声が聞こえていたものの次第に落ち着いたのか穏やかな寝息に変わったことを確認した猫は、またするりと戸をぬけどこかへと行ってしまいました。
我に返った家来や医者が慌てて殿様の容態を確認すると、ただただ健やかに眠っているだけのようでありました。

翌朝ー目を覚ました殿様が
「昨夜、川を渡ろうとしたわしを地母神か何かとても暖かくて柔らかなものに包まれてこちらに連れ戻してくれた気がするのじゃ。」
と言うので、昨夜あったことを話そうと口を開いた時、

襖から猫が鳴きながら入ってきたので、殿様に伝えることは叶わなかったが、「猫の腹は万病に効く」と巷でまことしやかに囁かれ、殿様が納めるその町では猫が健康祈願の象徴として大層可愛がられたそうな。


あまりにも猫吸いをしたすぎてできたSSでした。
猫チャンのお腹とんでもない引力が働いている。


それではまた。

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