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ちょっと気になったデザイン 2024年6月

こんにちは、ちょっと株式会社の久保田です。

最近SNSで「デザイナーの緩やかな死」みたいな話題を見掛けました。
テーマはインプットを軽視することへの警鐘。その通りって強く共感しながらも、そうじゃない人やケースも見てきたしなぁって思うところもあり・・・。
しかし、私のような凡庸デザイナーにとって日々のキャッチアップが支えになっていることは間違いありません。絶対。

今月も気になったデザインをピックアップしてみます。



雪印北海道バターの特設サイト


きっかけは早瀬憩さん。
公開中の映画のトレーラーでの存在感にやられて、気になって軽く調べると『虎に翼』と『ブラッシュアップライフ』に出ているのを知って「あ〜あの子か〜」ってなって・・・
そんな流れで出会ったのがこの雪印北海道バターの特設サイトでした。

大胆に使われているメインカラーと商品ブランドイメージが直結していて、眺めただけで商品が想像できるWebサイトになっています。
ブランドカラーを大事に守り続け、確実なイメージ定着を図れたからこそできること。これがコーポレートカラーの果たすべき役割、そしてあるべき姿なんだと思います。

見て分かる通り「資産」にすらなっているブランドカラーを最大限活用したデザインです。
タイパなどの言葉が自然発生してくる今、発信側にはコミュニケーションスピードが求められる現代において、ブランドカラーの強さを最大限活用した理想的なデザイン、模範回答になるんじゃないかと思いました。

商品の品質、素材、歴史などのストロングポイントだけを訴求するのではなく、バターの使い方・レシピなどをポエトリーな表現で構成しています。
ゆったりとしたアニメーション、フォントのチョイス、画像の質感などなど、様々なデザイン要素が組み合わせてサイト全体に優しいテイストで包んでいます。
とにかくエモい!

カラーリングもバター色、青の2色のみ。あとはホワイトだけで黒は使わない。
これも商品カラーとリンクしていて、これぞ商品LPだなってデザインになっていると思いました。
ここまでなかなか割り切れないんですけどね・・・

モバイルファースト寄りにデザインされているのでPCディスプレイで見ると大造りになっている感じがしたのが気になりましたが、そんなのは極々些細なことなので問題なし!
色んなLPを見てますが、こんなに「強いLP」ってなかなか無い気がします。

ちなみにバターを使った料理ならアサリバターが一番好きです。居酒屋のメニューにあると必ず頼みます。


Adobe『PDFラブレターの作り方』


Adobeのサイトから

デザインというより普段から馴染みあるPDFを面白い切り口で取り上げてるなって気になりました。
月刊誌「ブレーン」が実施しているアワード受賞作。そのお題にある「PDFの固定概念を打ち破る」ストーリーになっています。
ほぼビジネスで使われているだろうPDF、それを青春時代の甘酸っぱいストーリーに登場させるなんて斬新な発想に脱帽です。

PDFを毎日のように使いまくってる側からすると、「それはありえへんよ!」ってツッコミ入れたくなりますが、それは無粋だしクリエイティブ本来の姿を否定するもの。
いやいやAcrobatだけでそこまで凝ったものは作れないって〜って思う反面、今のデジタルネイティブ世代だったらこれくらいアッサリ作っちゃうのかも・・・って期待(恐怖)も感じてしまいます。

「PDFでもらってもいいですか?」
このセリフですよね。
発端とオチに使われているこのセリフ、これまでに何度言ったことか・・・
言いたくないけど作業が進まないから言うしかないこの言葉。まさかこんなシチュエーションで言うなんてってニヤニヤしてしまいます。
このヒロインが言いにくそうにしてる感じも、あるあるすぎてニヤニヤしちゃいます。

あるあるネタのついでに。
「PDFファイル」ってよく見聞きしますけど、PDFってポータブルドキュメントファイルの略なのでPDF+ファイルは重複したワードです。
度々見たり聞いたりしてますが、そこは指摘せず大人しく黙ってモヤっとしてます。


『デイヴ・ザ・ダイバー』


世界中で高評価を受けている2023年を代表するタイトルのひとつですね。
気になりつつ保留にしてたんですが、ようやくプレイすることができました。
ピクセルアートがメインになっているのでデザイン面は期待していませんでしたが、これが予想外にしっかり作り込まれていてグッときました。

なぜピクセルアートを採用したのか理由はわかりません。コスト抑制など大人の事情を含めて色んな理由がありそう。
でも結果的にピクセルアートを採用したことは成功要因のひとつだと思います。(実際はゴリゴリの3Dなんですけどね)

まず気になったのはメッセージウインドウなどに表示される日本語のルビ。
全ての漢字ではなく少し難しい漢字だけにルビが振られています。ルビ有無の基準、小学生以下向けの読み仮名サポートしているのかな??

ルビ有無の基準が気になります

テキストにルビが振られていること自体は珍しいことでありませんが、この開発元はNEXON傘下の韓国ディベロッパーで、オリジナル版は英語でリリースされています。なので日本語ローカライズ作業でわざわざルビを振っている。
NEXON社は日本と関わりが深いってのも関係しているかもしれません。

と、丁寧にローカライズされているように見えて、至る所は英語表記のままだったりしていて・・・
チュートリアルが表示されるポップアップ内のゲーム画面キャプチャあたりは英語版のものを使用されていて、ここは少し不親切に感じました。

ウインドウ内のキャプチャは英語版。そしてボタンの赤色。

費用対効果の面では「無駄」と判断されがちなルビ機能を実装しながら、プレイヤーへの説明など重要な部分はローカライズしていないチグハグさが少し気になりました。

あと気になったのは「赤」の使い方。
日本の言う「赤」と韓国の言う「赤」は違うってよく聞きます。
ゲーム内ではボタンなどの強調部分に赤が使われていますが、これが少し紫やピンクに近いような赤色。
韓国では赤はこの色がよく使われていて、これはシンプルな文化の違いですね。

最後に軽くゲーム内容に触れておきます。
ベースはローグライクでありながら、うまくメトロイドヴァニア系っぽい2D探索要素を取り込みつつ、寿司屋や農場など育成経営シミュレーションの楽しい部分も持ち合わせています。
遊び心ある演出、アクション難易度もちょうどいい感じ。『DREDGE』やゴジラとコラボした追加DLは最高!
めちゃくちゃオススメできる作品でした!


Switch版『オホーツクに消ゆ』


公式サイトより

もう1つだけゲームネタを最後に。
めちゃくちゃ大好きなタイトルで、このゲームをネタに一晩でも語り続けられます。たぶん余裕でnote1本分くらい書けそうだけど、あまりにも趣味すぎるので自重します・・・
少し前にリメイク発表になってから無事リリースされることだけを祈りながら続報を待ち続けていました。
先日ようやく発売日も告知されたのでリリース確定と言ってもいいでしょう!

まだリリース前で公開されている情報量も少ないんですが、それでもやはり気になった点として、ファミコン版のビジュアルをリメイクしていること。
そんなの当たり前って言われることなのかもしれませんが、これって実は重要な部分。

今回リメイクするにあたり、グラフィック(デザイン)をどうするか考えられる可能性は3つあると思われます。

  1. 大ヒットしたファミコン版のコミカルテイストをリメイク

  2. 少しリアルテイストなオリジナルPC版をリメイク

  3. 現代に合わせてグラフィックを刷新

結果的に選択肢の中からファミコン版を選んでいます。
PC版をベースにリメイクって選択は無いとしても、現代に合わせたビジュアル刷新は可能性として低くないはず。

Switchのコアユーザー層は20代前半。(2023年3月期の決算資料)
その年齢層を狙ってビジュアルを刷新するのは当然のことで、同じようなレトロゲームの復刻リメイク作品ではビジュアル刷新されているケースが多く見られます。
そのセールス結果は別問題として、グラフィックを刷新することは新規ユーザーを獲得するためには有効な手段です。

しかし今回のリメイクは、グラフィック刷新を選ばずにファミコン版のテイストをブラッシュアップ。
これは新しいファン層拡大を図るよりも、当時遊んでいたアラフィフ世代だけを狙いを定めたものと考えられます。

めぐみがいる時点でファミコン版以降ですね

このタイトルが提供するのは「新しい体験」よりも「懐かしい体験」。
この明確なコンセプトがあり、そして自ずとターゲットも決まってくれば、それを実現させるためのデザインとしてファミコン版のグラフィックを採用することも自然な流れです。

実際のところは全く違うコンセプトがあるのかもしれません。
ただ一人の熱狂的なファンとしては、当時のグラフィックがベースになっていて、さらに荒井先生自身も関わられているってのは最高のデザインになっていることは間違いありません!!
(ちなみに個人的な話になりますが、荒井先生に直接お願いして描いていただいた似顔絵イラストがあって、それを仕事用のアイコンに使用しています。もちろん右手にはニポポ人形。額装した色紙は完全に家宝)

ボイスも新シナリオも追加されましたが、内容やデザインのベースは35年以上前のもの。
昭和・平成レトロがにわかに盛り上がっている現在、このビジュアルデザインがどれだけ若い年齢層に受け入れられるんだろうって注目しています。


・・・


以上、2024年6月の気になったデザインでした!
前回の締めでゲームからピックアップできてないって言ってたら、今回はゲームネタ多めになってしまいました。
これ以外にも映画『数分間のエールを』のキービジュアルとロゴが面白いなって思ったりしつつ、相変わらずSNSでは海外映画の日本版ポスターがダサいって論調に違和感を覚えたり・・・

話題は変わりますが、先月リリースした「ロゴ大好きデザイナーが語りたい『シティーハンター』タイトルロゴの進化と魅力」が想像を遥かに超えるリアクションをいただきました。
そして公私に関わらず多くの方からありがたいお言葉をいただきました!

デザインに興味を持っていただき、良いデザインに出会うことを楽しんでもらえることの一助になれば嬉しいです。
ありがとうございました!

それでは。

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