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リンクと著作権

リンクとは

リンクには、大きく分けて、「ハイパーリンク」と「インラインリンク」があります。「ハイパーリンク」とは、文書データなどの情報資源の中に埋め込まれた、他の情報資源に対する参照情報を意味します。リンク元をクリックすると、参照ページとしてリンク先のページが表示される仕組みです。
例えば、私の「虎ノ門法律特許事務所」のホームページのURL「https://www.toranomon-law.jp/」をクリックすると、「虎ノ門法律特許事務所」のホームページが表示されます。
このページに記載されている「https://www.toranomon-law.jp/」をリンク元、クリックすると表示されるページをリンク先と呼びます。

インラインリンク」も、ハイパーリンクと仕組みは同じですが、リンク元のウェブページに、リンク先の画像や動画の一部が表示されているリンクを意味します。埋め込み表示などとも呼ばれています。ツイッターで投稿したことがある人は分かると思いますが、ツイッターでリンクを貼る行為をすると、いちいちリンク元をクリックしなくても、リンク先の画像、動画が一部表示されています。このようなリンクを「インラインリンク」と呼んでいます。以下のように、リンク先の文章や写真の一部が表示されます。


リンクを貼る行為は著作権侵害となるか

ブログやホームページを作成するにあたり、他人のサイトのリンクを貼る行為は日常的に行われています。本ブログでも、必要に応じて、リンクを貼っているのですが、このような行為は著作権侵害になるのかという質問は多く寄せられています。
常識的に考えて、リンクを貼る行為が著作権侵害になるとは一般的には考えられていません。それを法律的に説明すると、リンクは、著作権の法定利用行為である公衆送信に該当しないからであると説明されます。
著作権法23条1項は、「著作者は、その著作物について、公衆送信(自動公衆送信の場合にあつては、送信可能化を含む。)を行う権利を専有する。」と規定しています。

そして、「公衆送信」とは、「公衆によつて直接受信されることを目的として無線通信又は有線電気通信の送信(電気通信設備で、その一の部分の設置の場所が他の部分の設置の場所と同一の構内(その構内が二以上の者の占有に属している場合には、同一の者の占有に属する区域内)にあるものによる送信(プログラムの著作物の送信を除く。)を除く。)を行うことをいう。」(著作権法2条1項7の2)と定義されています。
日本語としてはよく分からない定義ですが、簡単にいうと、「公衆送信」とは、文章、画像、動画等の著作物を、ブログやホームページにアップロード(公開)することを意味します。自分が著作権を有する文章、画像、動画等をアップロードするなら誰にも文句は言われませんが、他人の著作物をアップロードする場合は、著作権侵害(公衆送信権侵害)になり得ます。

これに対して、リンクを貼る行為は、要するに、他人のURLを記載するだけであり、他人の著作物をアップロードしているのではなく、他人のブログやウェブサイトを直接訪れて、それを閲覧しているに過ぎないので、何ら著作権法上の問題が生じないと説明されます。

ロケットニュース24事件

リンクが著作権侵害となるかが問題となったニコニコ動画事件(大阪地判平成25年6月20日・裁判所ウェブサイト)は、原告が撮影した動画を氏名不詳者が「ニコニコ動画」に無断でアップロードしたものを、被告がインラインリンクの方法によって自己のウェブページに表示させた事案で、以下のように判示しました。

 原告は,被告において,本件記事の上部にある動画再生ボタンをクリックすると,本件ウェブサイト上で本件動画を視聴できる状態にしたことが,本件動画の「送信可能化」(法2条1項9号の5)に当たり,公衆送信権侵害による不法行為が成立する旨主張する。
 しかし,前記判断の基礎となる事実記載のとおり,被告は,「ニコニコ動画」にアップロードされていた本件動画の引用タグ又はURLを本件ウェブサイトの編集画面に入力することで,本件動画へのリンクを貼ったにとどまる。
 この場合,本件動画のデータは,本件ウェブサイトのサーバに保存されたわけではなく,本件ウェブサイトの閲覧者が,本件記事の上部にある動画再生ボタンをクリックした場合も,本件ウェブサイトのサーバを経ずに,「ニコニコ動画」のサーバから,直接閲覧者へ送信されたものといえる。
 すなわち,閲覧者の端末上では,リンク元である本件ウェブサイト上で本件動画を視聴できる状態に置かれていたとはいえ,本件動画のデータを端末に送信する主体はあくまで「ニコニコ動画」の管理者であり,被告がこれを送信していたわけではない。したがって,本件ウェブサイトを運営管理する被告が,本件動画を「自動公衆送信」をした(法2条1項9号の4),あるいはその準備段階の行為である「送信可能化」(法2条1項9号の5)をしたとは認められない。

たぬピク事件

私が担当した事件ですが、「たぬピク事件」(東京地判平成31年2月28日・裁判所ウェブサイト)を紹介します。
「V系たぬきの掲示板」という匿名掲示板に画像を投稿するにあたり、「たぬピク」というアップローダーを利用するシステムになっており、「up@vpic(省略)」宛てに画像を添付したメールを送信すると、当該画像がインターネット上にアップロードされたURLが、送信元のメールアドレス宛てに返信され、当該URLを掲示板に投稿すると、画像が表示されるシステムになっています。
本件では、投稿者が投稿した画像は、原告が著作権を有する画像でした。

投稿者が、当該URLを掲示板に投稿する行為は、URLを記載したに過ぎず、リンクを貼る行為なので、著作権侵害には該当しないとも思われます。しかし、裁判所は、上記「たぬピク」によりインターネット上にアップロードされたURLが、送信元のメールアドレス宛てに返信された時間と、当該URLを掲示板に投稿した時間が近接していること、当該URLを第三者が投稿した可能性は低いことなどを理由として、著作権侵害を認めました。

(ア) 「たぬピク」は,「up@vpic(省略)」宛てに画像を添付したメールを送信すると,当該画像がインターネット上にアップロードされたURLが,送信元のメールアドレス宛てに返信され,当該URLを第三者に送るなどして,当該画像を第三者と共有することができるサービスである。
 (イ) 本件掲示板を含むたぬき掲示板(2ch2(省略))をスマートフォンで表示する場合には,「たぬピク」により取得した,画像のURLが投稿されると,当該URLが表示されるのではなく,当該URLにアップロードされている画像自体が表示される仕組みとなっている。これにより,当該URLをクリックしなくても,たぬき掲示板上において,他の利用者と画像を共有することが可能となっている。
 (ウ) 本件画像は,平成30年3月22日午後11時53分41秒に,「up@vpic(省略)」宛てにメール送信され,本件画像URL上にアップロードされた(本件画像アップロード)。
 (エ) 本件画像URLは,同日午後11時54分46秒に,被告の提供するインターネット接続サービスを利用して,本件掲示板に投稿された(本件投稿)。
   イ 以上の事実関係を前提に,本件投稿によって公衆送信権の侵害が成立するか検討する。
 まず,本件画像は,前記ア(ウ)のとおり,本件投稿に先立って,インターネット上にアップロードされているが,この段階では,本件画像URLは「up@vpic(省略)」にメールを送信した者しか知らない状態にあり,いまだ公衆によって受信され得るものとはなっていないため,本件画像を「up@vpic(省略)」宛てにメール送信してアップロードする行為(本件画像アップロード)のみでは,公衆送信権の侵害にはならないというべきである。
 もっとも,本件においては,前記ア(ウ)及び(エ)のとおり,メール送信による本件画像のアップロード行為(本件画像アップロード)と,本件画像URLを本件掲示板に投稿する行為(本件投稿)が1分05秒のうちに行われているところ,本件画像URLは本件画像をメール送信によりアップロードした者にしか返信されないという仕組み(前記ア(ア))を前提とすれば,1分05秒というごく短時間のうちに無関係の第三者が当該URLを入手してこれを本件掲示板に書き込むといったことは想定し難いから,本件画像アップロードを行った者と本件投稿を行った者は同一人物であると認めるのが相当である。そして,前記ア(イ)のとおり,本件画像URLが本件掲示板に投稿されることにより,本件掲示板をスマートフォンで閲覧した者は,本件画像URL上にアップロードされている本件画像を本件掲示板上で見ることができるようになる。そうすると,本件投稿自体は,URLを書き込む行為にすぎないとしても,本件投稿をした者は,本件画像をアップロードし,そのURLを本件掲示板に書き込むことで,本件画像のデータが公衆によって受信され得る状態にしたものであるから,これを全体としてみれば,本件投稿により,原告の本件写真2に係る公衆送信権が侵害されたものということができる。以上の認定に反する被告の主張は採用できない。

「たぬピク事件」のように、リンクを貼る行為に過ぎないように見えても、合わせ技一本のような形で、著作権侵害が問える事案もあります。もっとも、上記判決に対しては、理論的な批判はあるところです。
【参照文献】
谷川和幸・NBL 1172号79頁
奥邨弘司・Law & Technology 85号72頁

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