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大東急の入社式

※この物語はフィクションであり、大東京急行電鉄は架空の鉄道会社です。

春は銀色

 ―今日は列島各地で入社式が行われ、新社会人が新たな門出に向けた決意を固めました。
 ―東京、新宿に本社を置く大東京急行電鉄では、完成したばかりの商業施設のレストランを貸し切って入社式を行いました。
 この春入社した新社会人を前に、茅路賢治社長が訓示を与えました。
「この春に、伊豆へ50000系電車が走りだしましたが、この電車は諸君の同期にあたるわけであります。ぜひ諸君も、人生というレールの上を駆け抜けてもらいたい」
 この訓示に続いて、一人一人が「首都の動脈を支えていきたい」「お客様の命を預かる責任をもつ」などと抱負を語りました。
 そして和やかな懇談の後に、余興としてクイズが行われました。クイズは、電車が大東急のどの路線で使われているか当てるものです。

左から京王線1500系、小田原線4300系、東横線6000系、京浜線8500系

 正解者は一名のみでした。なお、この問題を作成した人事部の担当者は「風邪を引いた際にですね、弊社の電車がどんどん増殖していって頭の中が銀色になる、そういう夢を見ることがあります」と話していました。正解した新入社員には、社長よりサイン入りのつり革1本が贈呈されました。

―次のニュースです。

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 ここで写真をもう一枚お見せしましょう。大東急新宿駅の改札に掲げられた、ロマンスカーの案内です。大東急新宿駅は京王線、小田原線のターミナルで、「やまげら」、「ふじさん」、「はこね」、「あさぎり」、「あまぎ」と特急列車が次々とやって来る様は壮観です。助役によれば、案内には万全を期しているものの、普通の電車は全部弁当箱みたいな形なので、切符を買い間違える方や電車を乗り間違える方が絶えないそうです。電車が同じ形だと社員も大変だとか。

新宿駅切符売り場の掲示物

……かつて東京南西部の鉄道網はほぼ東急の下にありました。1930年代から東急は京急・小田急・京王・相鉄を合併し、総延長320 kmに及ぶ大会社となりました。これがもし解体されなかったら、というお話。

先輩方に敬意をこめて

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