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楽して生きたい

どうすれば楽できるんだろう。

そんなことばかり考えて、二十歳そこそこの僕が選んだ道がプロミュージシャンだった。

好きなことして生きたら、それはそれはお気楽な人生に違いない

この考えが間違いだと気づくのに、時間は全くかからなかった。僕が選んだ「プロミュージシャンになる」という道は、楽とは反対のステージにあった。

音楽は無くても死なない。水や空気とは違うんだ。だからこそ、僕の音楽を聴いてもらう大きな大きな理由が必要だった。

そんなこともわからない田舎の若者に、社会は平等に、そして容赦なく現実を見せてくれた。ありがたいよね、現実を知れるって。

でも不思議だ。

今でも「楽したい」と思ってる。

今、楽をしたいの?

僕の中の「楽をしたい」という気持ちが変わったのは、時間軸を捉えた時だ。

「今すぐに楽をしたい」

そう思って音楽を選んだ。とにかく働きたくなくて、好きなことだけやっていたくて、それならば得意な音楽だ!と。

得意なことならどんな逆境も耐えられるし楽しめる・・・はずだった。

けど、「今すぐに楽したい」を目標に頑張れるのって、結局少しの間だけなんだよね。”今すぐ”ってラッキーでしかないんだから。

このラッキーを諦めきれずに十数年が経った。もっと早く気づけよ!という思いと、今気づいたのには何か意味があるという思いと半分ずつだ。

「今」ではなく、「あとで」楽をするために今できる精いっぱいのことをしたいと考えられるようになった。

昔、ばーちゃんが「若い時の苦労は買ってでもしろ」と手紙をくれたのはこのことだったのか。

日々を積み重ねて楽を得る

”いつ楽をするか”を決めると、今日やらなければならないことが見えてくる。もっというと、今やるべきことが見える。

成功している人は皆、未来を逆算して努力してる。オリンピック選手も「〇年後の〇日に本番がある」とわかっているから、今日を無駄にしない。

今すぐに欲しい!と思っていた楽な生き方と、自分の未来を見据えた楽な生き方はまったく違う。

若い時にはまったく考えもしなかった利他の気持ちが、自然とあふれてくるようになった。年を重ねるのも悪くない。

・働きたくない → 社会のために働きたい
・好きなことだけしたい → 好きなことで人の役に立ちたい
・俺の歌を聞け → どんな歌が聞きたいのか聞かせてほしい

人生の失敗を経験して、変えざるを得なかった自分の価値観。「楽をしたい」という気持ちの芯が他人目線に変わった時に、なんだかすでに楽になった。

このままいけば、間違いなく目指していた「お気楽な人生」にたどり着くだろう。だから今日を頑張れる。誰かの困りごとを解決したり、誰かの気持ちを癒したり、そんなことで忙しくなるなら、それこそ楽な人生の頂点だと思う。

僕が本当に欲しかった「楽な人生」は、経済的なゆとりとか、有り余る時間とかじゃなかったようだ。それはそれでちょっと残念だけど(笑)

さいごに

楽をしたい!という気持ちが生むエネルギーは絶大だ。楽したいという一心で頑張れることもたくさんある。

実際に僕はその気持ちだけで上京し、音楽レーベルと契約まで行った。若さゆえの勢いもあったかもしれない。

しかし、

いかに楽をするかは、手を抜くことじゃない」と悟った時に、少しだけ自分の邪念を切り離せた。まだまだ邪が巣食っているこの身だけど、日々浄化作業としての”人生の積み立て”を続けていきたい。





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