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DOLLエピソード0~ジャン~「記憶への執着」

前回「光崩闇堕」の続きとなります。まだご覧になってない方はこちら↓をどうぞ。
DOLLエピソード0~ジャン~「光崩闇堕」 https://note.com/chopchips/n/n89907f7c2197


6.ジャンのいない世界

・まさかの事態に。冗談なのか問い詰めるも逃げる者、怒り出す者などその反応からだんだん本気に思えたジャン。
親しい友人であったリオル、グレン、ケイトまでもジャンのことを忘れているようだ。

・それでも諦めなかったジャン。きっと全員ではないはずだ。そこでたまたま通りかかったマリアにも声をかけた。マリアとはよく話すというほど親しい関係ではなかったが、このおかしい事態から誰かでも味方が欲しかったジャンは、藁にもすがる思いでマリアに声を掛けた。
しかしマリアもジャンのことを忘れていた。

・度重なる事態に気が立ったジャンは、マリアに強く問い詰めた。マリアにしがみつき問い詰めるジャン。マリアは恐怖で泣き出し、誰かに助けを求めだした。

・するとジャンの頭に石が当たる。当てたのはマリアの兄・ニックだった。何てことをするんだ!とニックに問うも、
「それはこっちの台詞だ。誰だか知らないが、俺の妹に手を出す奴は絶対許さねぇ」と、ジャンに対して完全に敵意むき出しだった。

・剣を構え出したニックの表情からして、あの頃の仲良かった思い出はまるで消えてしまったようだ。ニックに泣きつくマリア。先ほどの石で頭から血を流すジャン。
ジャンは思った。皆から記憶を消されていると…。

ジャン、とうとう我慢の限界を超える。逆上したジャンはその場で暴れ出す。駆けつけた剣を構えた兵ですら、素手のジャンを止められない。

・どういう訳か、ジャンが暴れるとその周辺が燃え出す事態が起こる。人柱で身に付けた能力なのか。
いつの間にかジャンに発火能力が身に付いた。

・あまりの炎の強さで近づくことが出来ないニック達。ジャンはそのまま加工屋へと走り出す。そして加工屋から武器を盗み、更に暴れる。かつて自身の家でもあった加工屋は一瞬にして燃え上がった。

・激しく暴れるジャンに誰も手をつけられない。やがて人々はジャンを「悪魔」と罵る。

・この事態を止めようと、DOLL国は軍を送りジャンを止めに行く。その中にパリスもいた。
そのパリスまでもジャンを悪魔と呼び、ジャンの存在を忘れていた。

・送られたDOLL国の軍でもジャンに歯が立たない。
発火能力と圧倒的な戦闘力で、兵は次々と倒されていく。
そしてジャンは自らパリスに決闘を申し込む。
その時パリスは、何故見ず知らずの男から急に決闘が?という感じであった。

・ジャンとパリスの決闘が始まる。妹弟子の頃とは違い剣術の腕が大きく成長したパリスはジャンを感心させたが、それでもジャンに止められてしまう。
止めを刺そうとパリスに剣を構えた途端、2人の間から突然剣が飛んで来た。
飛んできた剣にジャンは驚いて怯んでしまい、パリスはその隙を突いてジャンに勝利する。

・剣を投げたのはニックだった。ジャンはニックに対して罵倒するも、パリスの一撃が効いた影響でそのまま倒れてしまう。そしてジャンは連行されることとなる。

7・封印

・目を覚ますと目の前にはバリー、マールそしてその2人を守るかのように兵士が数人いた。ジャンは抵抗しようとするが、全身を縄で縛られて身動きが取れない。

・暴れるジャンに対しバリーは「お前は恐ろしい悪魔だよ。二度と地上へ出ないでくれ。」と言い、マールはバリーに「どうして死刑にしないの?」と言う。それに対してバリーはマールに「奴は悪魔だ。殺した方が厄介、呪われるかもしれない。」と言った。
どこへ行っても俺は悪魔呼ばわりか

・ジャンは出せとバリーに怒鳴り続けるも、その声はむなしく届かず扉は閉められる。そして扉の向こうから厳重に施錠しようとしてる音が聞こえる。

・身動きが出来ないまま閉ざされてしまったジャン。発火能力を使おうとするが、全身を縛られてるせいか思うように出せない。
・辺りを見回してもこの部屋には何もない。ただ、全体的に奥が真っ暗で見えないほどこの部屋はかなり広いらしい。

・ただ呆然とその場で横たわるジャン。ここで一生暮らすのか、そして俺はここで死ぬのか…そう考えながら、ただ天井を見つめていた。

・ただひたすら時が経過した。何もない空間で叫んだり暴れたりしても全く届かない。時間感覚は分からないが恐らく何週間かは経過しただろう。
そして次第に、人柱の影響なのかジャンの髪の色は色素が抜けていきだんだん白くなっていった。

・再び呆然と横たわるジャン。すると横から足音が聞こえる。誰かがこっちに来る。ジャンは音の鳴る方向へ目を向けるとそこには…、ジャンの剣を持ったサーヤの姿が。

8・サーヤ

・サーヤと言えば、人柱の儀式のとき一緒にいたあの動く人形。しかし何故俺の剣を?何のために?…
殺すのか?と問うとその剣はジャンへ渡すために持ってたらしい。

「やっと渡せた」とサーヤは言う。
サーヤ曰く、どうやらジャンより前に入っていたらしい。詳しい理由は分からない。そしてジャンの剣を持ってる理由も。ただ拾ったしか言わない…。

・しかし身動き出来ないままでは受け取れようがない。ジャンはサーヤに縄をほどくように頼むが、サーヤはジャンの剣で縄を切ろうとする。
さすがに慌てるジャン。それに対してサーヤは「動かないで」と言う。

・多少危なかったが、縄は何とか切れたそう。何度もヒヤヒヤしたジャンであったが、ついに動けるようになれた。動けない間どうにも出来なかったパリスに切られた傷を確認したが、意外にも手当てされた跡があった。まさかあいつらが…?

・ジャンは脱出を図ろうと発火能力を使おうとするも、壁の耐久性が強くて思うようにいかない。
暫く粘って何度もあの手この手で脱出を試みるも、結局どうにもならなかった。
とうとう諦めたジャン。脱出は不可能だった。その様子を横で見てたサーヤは呑気そうだった。ジャンはそんなサーヤに少々呆れていた。

・かつて自分が人形を作っていただけあって、人形が動くとどうも不気味でしか思えない。ジャンは常にサーヤから距離を置いていた。
それでも近づこうとするサーヤ。いつもジャンと呼んで構ってもらいたがっている。

・ジャンは次第に腹が立ち、剣で境界線を引く。
「この線から一歩でも近づいたらお前を殺す。」そう言い、サーヤから避けようとした。

・ジャンはサーヤから離れると、無心で剣を振った。なまった剣術の技と感覚を取り戻そうと無心で振った。暫くすると、遠くからジャンを呼ぶサーヤの声が聞こえる。ジャンはそれを無視し、剣を振り続けた。

・だがサーヤの声が止まない。無視して剣を振り続けても、サーヤは呼び続ける。それでもジャンは閉じ込めた奴らへの復讐の気持ちを募らせ、より動きに拍車がかかる。俺を忘れた奴らを許さない、俺を閉じ込めた奴らを許さない…そうジャンは気持ちを高まらせていた。

・暫くしてもサーヤはジャンを呼び続ける。やがて呼び続けるサーヤに対し嫌気が差し、ジャンはサーヤの方へ近づくと「近づいたら殺すと言っただろうが!」と怒鳴る。…が、サーヤはその線から一歩もはみ出ていなかった。

・意外と言った通りにしていたサーヤに対し、複雑な苛立ちを感じジャンは力が抜ける。何で呼んだか問うと「忘れさせないため」としか言わない。その時のジャンは何のことだかさっぱりだった。

・しかし人柱が…いやサーヤが原因で皆から忘れたのだ。そうジャンはサーヤを責めるも、自分からサーヤを目覚めさせた…。そう思えてくるとジャンはやるせない気持ちになった。

・構ってほしそうにこちらを見つめるサーヤ。鬱陶しそうに目を合わせないジャン。暫くそのような状態が続いた。ジャンはふとサーヤの年齢が気になり問うと、「分からない。ずっと眠ってたから。」と答える。ずっと…?
どれくらいか聞くと、とにかくずーっとらしい。ジャンはふとバリーの言ってた「この国に代々伝わる人形」を思いだす。もしかしたらこいつは、何百年も生きているのかもしれない…。ジャンはぞっとした。

・サーヤとの2人暮らしが長いこと続き、ジャンは次第にサーヤに対し気を許すようになっていった。だが、あくまで表に出さなかった。何としてでもあいつらに復讐する、その気持ちが薄れていきそうとも思い、心を開くことを恐れていた。
しかし、そんなある時ジャンに大きな異変が訪れる。

9・復讐の気持ち


・何と今度はジャン自身が自分の記憶を失ってしまったのだ。名前、生まれ、育ち、性格、職業、好物、趣味、特技…ジャン自身にまつわる記憶が消えてしまったのだ。俺が…俺が思い出せない…。

・しかし何故か、人柱と親しかった人達の記憶はあった。そのおかげでより彼らへの憎しみの気持ちが強くなった。こんな憎たらしいことがあろうか、ジャンは笑い狂った。

殺すだけでは物足りない。死ぬことよりも恐ろしい恐怖を与えてやろう。ジャンは画策する。

・そんな傍からサーヤが何やら呼んでる声が聞こえる。ジャン…?何だそれは。さっきからうるさい。
自分自身名前を忘れているため、何のことだかさっぱり分からなかった。

・サーヤの元へ近づくと、サーヤは「さっきから呼んでるのに遅いよ」と言う。
俺は…ジャンという名前だったのか。自分の名前を思い出させてくれたことに、ジャンは密かにサーヤに感謝していた。

忘れる怖さ、忘れられる怖さ…この2つを経験したジャン。これだ。あいつらにこの恐怖を教えてやろう。ジャンは人柱で得た力を利用して、新たな能力を身に付けようとした。

・記憶を奪うだけでは物足りない。そう考えたジャンは、サーヤのあの見た目から人形を思いつく。人間を人形に変える…ジャンは僅かながらふと人形について思い出す。ただ、技術的なことのみで何で人形の技術があるのかは思い出せない。
ジャンは模索しながら1人黙々と人形の研究をし出す。

・次第にニックのことを思い出す。何故人形であいつのことを思い出すのか…。確か過去にニックに頼まれたような…、詳しくは分からないが誰かのために…。だが、今のジャンにはニックに対しては恨みしかない…。


・地下に閉じ込められてから約3年の歳月が経った。かれこれずっと飲まず食わずだったジャンは、それでも飢えることなく、やつれることもなく体の状態は何一つ変わらなかった。不思議なものだ。俺は人間じゃなくなったのか。

・そして長いこと自分の力を探っていくうちに、新たな力を手にする。もし地上へ出られたときに復讐するための力。だが、今のジャンにそんな力を使う時がくるのか。
ものの試しにサーヤのもとへ近づく。

・何かサーヤは歌っていた。聴いたことない歌だ。
暫くだが、最近のサーヤはどういう訳かずっと同じ歌を歌っている。遠くからだが、微かに聴こえていた。そこでサーヤに問うが、後ろの扉が…。
何と封印は解かれていた。

10・悪魔

・封印が解かれた扉から見慣れない男が現れた。身なりからして、どうやら異国の者かもしれない。むしろジャンにとっては好都合だった。こいつを実験台にしてやろう、と。
ジャンはその異国の者に自分とサーヤのことを打ち明け、人形に変える魔法をかけた。その男はジンであった。

・どうやら成功らしい。ジャンは気を失った男を地下へ放置し、サーヤと共に脱出する。

・サーヤと共に脱出したジャンは、サーヤを解放しようと去る。するとサーヤは「ジャンといたい」と言い、追いかける。ジャンはこれから今まで溜めてた復讐を果たすために、サーヤの存在が邪魔でしかなかった。ジャンはサーヤを自由にさせるために記憶を消した。

・サーヤをその場で放置し、ジャンは動き出す。剣を抜き、悠々と町を歩き回る。時には憂さ晴らしとして人を切り、時には人を人形に変えて記憶操作し争わせたり、ジャンの解放によりそれまで平和だったDOLL国は次第に混乱が生じていく。
・ちなみにこの時にグレンはすでに人形化されていた。

・ジャンは暴れる。切り倒した者たちを踏みつけこう高らかに叫ぶ。「冥土の土産によく覚えておけ!俺の名前はジャンだ!お前らを殺した俺の名前だ!そして、俺がこの国の王になってやる!」

・その様子は悪魔そのものだった。それまで平和だった町をたった1人の男によって狂わされる。城下町の人は殺し合いを始める。

・その頃リオルとケイトは町での買い物中、その異変に気付きリオルは剣を構えケイトを護る。そして自我を失った人形たちが現れ、リオルたちに攻撃してくる。

・リオルはケイトを庇いつつも、人形たちを倒していく。…が、倒された人形を盾とし死角からジャンが現れケイトを人質にする。一瞬の不意を突かれたリオルは助けようともどうにも出来ない。

・涙ながらに必死に助けを求めるケイト。だけど、一歩でも近づいたらケイトは殺されるかもしれない。戸惑ってしまったリオルは抵抗が出来ず、なされるがまま目の前でケイトは人形に変えさせられる。

・ジャンは全て思い通りにいき、楽しくて仕方なかった。一段落楽しんだところで、城が警戒態勢に入る前に城へ侵入する。狙いは王だ。

・城へ侵入すると、兵を次々と人形へ変えていく。そこでも記憶操作を行い、人間と人形で争いを起こさせ始める。城下町で異変が少しずつ起きていることにニックは察知し、騎士団長に知らせようとする。

・悠々と城内を歩き、そしてジャンはとうとうバリーの部屋の近くまでたどり着く。しかし、バリーの部屋の近くでは騎士団長が待ち構えていた。騎士団長はいち早くジャンの気配に気づいてた。扉の向こうではバリー、マールそしてパリスであろう声が聞こえる。

・行く手を阻む団長。かつて育ての親でもあり、剣術の師匠でもあった団長。しかし今となっては団長もジャン自身もお互い誰だか分からない。ジャンは剣を構える。

・ジャンと団長の戦闘が始まる。記憶になくても自然と太刀筋が団長と似ており、団長を驚かせた。何故こいつは私と同じ剣術を?ジャンの攻撃に団長は戸惑いながら応戦するも、ジャンは一瞬の隙を突いて団長に重傷を負わす。

・その時間わずか20秒。誰かが部屋を出る。ジャンの計画としては全員消すのはまだ早い。ジャンはそそくさ、倒れた団長を隠し自身の身も隠す。
扉を盾に隠れ、マールとパリスが部屋を出る。部屋内でバリーのみと感じ取ると、不敵に笑いながら侵入しバリーを人形へと変える。

・その後ジャンはすぐ次の場所へと足を速めた。マールとパリスだ。この2人を倒してこそジャンの第一フェーズが完成する。2人はどうやら町外れの川原にいたようだ。
ジャンは発見するとすぐにマールとパリスを蹂躙する。そしてマールを人形に変え、やがてジャンはDOLL国の王へと成り上がる

・ここまで順調な流れ。王となり支配を始めたジャンは、町に火を放つ。DOLL国を一度潰そうと…。

・この危機にニックとマリアはジャンの元へ行き、止めようとする。ジャンとの戦闘で負った傷が原因で死んだ騎士団長の思い、争いをさせられる人間と人形の思い…、ジャンを止めるなら今しかない!

・悔しい思いを抱いたニックは、チャンスを狙うために密かに機を伺っていた。そしてニックとマリアはジャンに立ち向かう…が、王としてのジャンに全く歯が立たない。ジャンに記憶操作された兵士たちもニックとマリアに敵意を向ける。戦力差は圧倒的である。

・ニックは必死に兵士たちに説得するも、その思いは届かずニックは人形に変えられる。ニックには散々なことをされた。地獄を見せてやろう…
そこでジャンはマリアを記憶操作し、ニックに敵意を向けさせる。

・捕らわれて身動きが出来ないままマリアに切られたニックは、どうにもなれず逃亡する。その光景がジャンには面白くて堪らなかった。

・それから人形たちは侵略者と人々に植え付けられ、排除の対象とさせられる。やがてDOLL国は人間と人形で分断化され、両勢力が対立し合う争いの絶えない国となった。たった1人の男によって…

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