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Chooning for iOS Ver. 2.0.0をリリースしました

「Chooning for iOS」をメジャーアップデートしました。今回のnoteでは「アップデート内容の報告」と「開発後記」という構成でお話します。

ホーム画面のアップデート

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今回のアップデートの目玉です。ホーム画面を「投稿主体」から「視聴主体」の場へと、抜本的に改修しました。

これまでは画面上部のタイムライン(横に帯状になっている、Instagram Storiesのパクリ)に「フォローしているユーザー」の投稿が表示される形でしたが、新しいデザインでは「フォローしているユーザー」に限らず「ピックアップ」や「新着」といった種別のタイムラインがあるため、フォローするユーザーが少なくてもコンテンツを楽しむ体験が担保されています。

これまではフォローしているユーザーが1人以上いないと体験が成立しなかったため、アカウント作成後に必ず1人以上のユーザーをフォローすることが条件付けられていました(これはめちゃくちゃ評判悪かったです…)。また「誰かユーザーをフォローしてください」と突きつけつつ、それらのユーザーの情報が一切わからないという不親切な体験でした。これらを改善し「フォローしているユーザーが0人でも利用可能」「フォローするユーザーを選ぶシーンでは、そのユーザーの人気投稿を3件表示しプレビューできる」ようにしました。

投稿作成画面のアップデート

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投稿画面には、多くの要望があった機能を幾つか追加しました。投稿に紐づく音声データ(曲の“さわり”30秒のデータ)のプレビュー機能、メンションリスト機能、投稿本文が制限である300文字を超えても入力できる機能などです。また、文字入力のエリアを拡大する「入力モード」も実装しました。

ユーザー画面のアップデート

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こちらは機能追加的なアップデートではなく、リデザインが主です。Chooningのトンマナである浮遊感の演出のために、ユーザーアイコン画像にガウスをかけたものを背景に敷くようにしました。またコンテンツのカードはホーム画面に合わせ、投稿内容の一部や「お気に入り」にしているユーザーが投稿一覧から伺えるようになっています。

また、この画面については「hogeさん、hogeさん、その他3人のユーザーがフォローしています」という関心を惹起する情報の表示(attractorsの表示機能)や設定画面の情報を再設計するなど、今回のRammellsプロジェクト(後述)の中で更なるアップデートを予定しています。

開発後記

開発やプロダクトに興味がある方向けの雑談です🙃

● 今回のメジャーアップデートのコンセプト

今回のメジャーアップデートは「Rammells」というコードネームでスタートしました。Rammellsは、2020年11月〜2021年2月末までを1つのタームとして捉え、その期間の開発内容を指したコードネームです。プロダクトのバージョンでいうと2系(Ver. 2.x.xと表記される開発内容)を指す言葉です。

昨年の10月29日にRammellsに関するドキュメントを書きました。ここではRammellsの目的=企画コンセプトを示し、それに基づいて多くのGithub Issuesを書き出し、それらを以て説明し協力者を増やしてきました。

このドキュメントで示したコンセプトは「ユーザー増加施策はやらない、既存ユーザーを充分に満足させる」というものでした。2系のアップデート内容は全てこの方針に従って考案されたものです。言い換えれば、ユーザー増加施策、新規ユーザー獲得に関するIssuesは優先度が下げられ、3月以降に着手することになっています。

この方針を立てた理由は、この直前の10月16日に「はてな匿名ダイアリー」に投稿した記事がバズって急激にユーザー数が増え「使ってくれている人が増えてきた!」「嬉しい!」「広告を打ってどんどんユーザーを増やそう!」という雰囲気になりそうだったのですが「いや、ちょっと待てよ」と冷静になる必要があったからです。

当時(から現在も)Chooningを使っているユーザーは共通した性質を持っています。「はてな匿名ダイアリー」からの流入が主であったため、あの記事を読んでChooningの目指す社会像、コンセプトについて一定の理解を持っている、という特徴です。ユーザーのプロフィールを読む限りでは開発経験者も多いようでした。こうした人たちは、プロダクトの欠陥にある程度目をつぶりながら「やりたいことはわかる」という姿勢で応援してくれているはずです。

対して、広告からは上記とは違った性質の、より一般的な感覚を持ったユーザーが流入してきます。一般的なユーザーはChooningをメジャーなアプリ(Facebook, Twitter, Instagramなど)と比較して「使いやすいかどうか」「機能が充分かどうか」「自分が楽しめるものか」と考え評価します。プロダクトのコンセプトなんて知りませんし、現状の品質の低さに目をつぶってくれはしません。ここでクソアプリ乙」と思われてしまうと、その後に改良したとしても彼らはなかなか戻ってきてくれません。インターネット上に低評価の声が残されてしまうのもつらいです。また「使いづらい」「ずっとバグが直らない」というネガティブな声を背中に受けながら焦って開発をする状況は精神的に疲弊します。どのみち改良のための期間を過ごすなら、ヘイトを浴びない状況で開発に励んだ方が健全です。

そこで、まずは増田のバズで集まってくれたユーザーで検証するには事足りるのだから、この人たちを充分に満足させることを目標にしようと考えました。コンセプトに共感して「(使いづらいところもあるけれど)いいアプリだね」と言ってくれている人たちを「贔屓目なしにいいアプリだ!」と感じさせることが、今回のアップデートのコンセプトなのです。(この件についてはChooning Podcastの #2 (後半)で詳しく説明していますので、興味のある方は聴いてみてください!)

このように、何をするべきかを明確にして開発したChooning for iOS Ver. 2.0.0。ようやく今回お披露目できましたが、もちろんこれで終わりではなく、2月後半まで継続したアップデートを予定しています。これからも多くの改善を控えており、どんどん良くなっていくので楽しみにしていてください! そしてこのプロジェクトが完了した先には、満を持してユーザー増加プロジェクトを行っていきます。引き続き動向を見守っていただければと思います。

● ピックアップと編集部

新しいホーム画面には「ピックアップ」というタイムラインがあります。これはChooning編集部が選んだ投稿が表示される機能です。

UGC(ユーザー生成コンテンツ)は人気やコメントなどの数値によって上位表示するコンテンツを定めるものが一般的ですが、Chooningは今後そういった機能を追加したとしても、それと同等にこの「編集部が選んだコンテンツ」というタイムラインを表示しようと考えています。

少し“インターネット的”ではないかもしれませんが、サービスがつくりたい世界を実現するためには、設計側がある程度のイニシアティブを持って「こういうコンテンツを是とするんだ」という主張をして良いと思っています。

例えば、少し前に次のようなツイートを見かけました。

私は、ここで言われている「居心地の良さ」をキープする、つまり「空間に対して一定の性質を保証する」ためには「ユーザーの多数決・民意に委ねていてはならない」という考えを持っています。

これまで、個人サイトや掲示板のスレ、Web上のコミュニティやオンラインゲーム、現代ではSNSと呼ばれるものが「インターネット的=民主的な空間」という感覚に基づき、コンテンツの評価・流通上のトリアージを利用者たちに任せた結果、運営者・当初の利用者たちが思い描いたビジョンが損なわれていった例を幾つも見てきました。

そうした先達の足跡を踏まえ、Chooningでは「雑誌やラジオといったオールドメディアがやってきたことを参照してみよう」という方針を立てています。雑誌やラジオには、UGCを編集して提供しながら、そこに独自の世界観を描き、長期に渡って読者やリスナーとのコミュニティを維持してきた実績があります。これを現代のSNSに融合する試みとして、Chooningに編集部という機関を設けました。これはしばしば「編集部の独断」とも呼ばれる、ビジネスサイドとも独立した意思決定権を持つことが許される機関でもあります。

ちなみに、編集部がコンテンツをピックアップする際に具体的な判断基準があるわけではありません。ただ、Slackのやりとりの中で次のような目安が語られています。これは本当にまだメモでしかなく、編集部でもディスカッション中ですが、みなさんの意見も聞いてみたいのでいったん公開してみることにします。

# Chooningの理念と合致
・音楽愛に溢れているコンテンツ
・音楽に向き合っている時間が感じられるコンテンツ

# Googleが集めない情報を集めたい
・Googleでは見つけづらい個人史的記録コンテンツ=テキストサイトで得られたような読後感
・個人目線のアーティスト・楽曲に対する資料的価値のあるコンテンツ(ライブ参加者だけが語れる内容は嘘や記憶違いもあるかもしれないが貴重な記録として肯定する)
・「へえ〜」ってなるけどGoogle検索では見つけられなさそうな知識

# ここは古き良きインターネッツですね
・くすっとくるやつ
・ほっこりするやつ

まだこうして感覚的なものに頼らざるを得ない段階ですが、多くの投稿を読み検証を重ねていきながら、徐々に編集部の感性をアルゴリズムに変換することを考えています。(これは「テクノロジーと編集」というテーマで、いずれまた詳しくnoteに書いてみたいと思います。)

● ホーム画面と立ち向かい、プロデューサーとしてクリエイターを見た

さて、ホーム画面が「投稿主体」から「視聴主体」の場へと抜本的に立ち位置を変えたわけですが、これは当然こうあるべき姿だったと思います。投稿するためにアプリを開く機会と、閲覧するためのそれとでは、後者が圧倒的に多いはずだからです。

では、どうして投稿主体のデザインだったのかというと、Chooningを作ったばかりの頃は私と友人数名でしか使っておらず、本当に「投稿することを主な目的としてアプリを使っていたから」です。いまからすれば明らかに偏ったペルソナのために作られたデザインでした。当時は「投稿メインのプロダクト」ということで何の疑いも持っていませんでした。そもそも初期においては、私と友人たちが好きな音楽を投げ合うメッセージングサービス状態だったので…。

ともあれ、ユーザー増加に伴って投稿数も増え、体験の時間割合として「投稿する」よりも「閲覧する」方が多くなってきました。今回のリデザインによって、この変化に対応することができたはずです。

また、今後サービスの利用者が増えていけば「投稿はせず、閲覧するだけの人」という存在も当然に考えられます。その延長線上には「コメントもお気に入りもしない、完全なるROM専」というユーザーもいるはずです。特にブラウザ版を展開するには「アカウントを持っていなくても投稿を閲覧できる」必要があります。現在のChooningは、利用に際してアカウント作成が必須となっているので、この点を改修する必要があります。

Rammellsでは、これらに対応するためのバックエンド改修を行っています。現在は「利用者はアカウントを持っている(必ずusersテーブルにrecordがある)」前提でAPIを作ってしまったので、対応箇所は全体に渡って点在します。この改修はそれなりに厄介なのですが、同時に「現段階で気づいておいてよかった…」とも思いました。こんな根本的な仕様変更、機能が充実してから気づいたら絶望しています。改めて「MVPを作って出して反響を見て再考する」というのは、製品開発において大切なフローであることを実感しました。(Minimum Viable Product:実用最小限の製品)

また今回、デザイナーとしてSano Aoiさんが参加してくれました。彼女の正確な情報整理、先行事例の取りまとめと考察、素早いプロトタイプ作成、そして実際のデザイン力によって、実に完璧な新しいホーム画面ができたと思っています。

もともと後輩のTAIKI IKEDA(後輩といっても、私の方が業歴が長いだけで、デザイナーとしての実績は彼の方が圧倒的に上なのですが)に手伝ってもらおうと打診したところ、彼が対応出来ず「代わりに」と推薦・紹介してくれたのが彼の教え子であるSano Aoiさんでした。

後輩の後輩ということで、経験も少ない若手であり、当初は「さてどうしたものか…」と考えあぐねてましたが、一緒にやってみて「ここまで完全に作業を任せることができるのか!」と驚きました。もちろん彼女が特別に素晴らしいデザイナーだということもありますが、自分より明らかに若いデザイナーが想像以上のパフォーマスを発揮している現実を見て「そうか…いつの間にか30歳を超えて、自分も中堅のオッサンなんだな…」と軽いショックを受けました😅

Sano Aoiさんは現在ポートフォリオサイトを作成中。彼女から「ポートフォリオにChooningを掲載させてください!」と連絡を受け「そうか。この子が誇れるようなプロダクトにしないといけないんだよな」と背筋が伸びる思いがしました。

私は、自分の経歴を簡単に説明する場面では「オンラインサロン・プラットフォームのSynapseのデザイン・開発を担当して…」と自己紹介してきました。Synapseとは、大学時代に出会った先輩たちが起業したサービスで「オンラインサロン」という言葉を発明したチームでもあります。私は2015年にジョインし、2017年のDMMへの売却までチーム唯一のデザイナーとして従事し、エンジニアとしてコードを書き、編集者としてオンラインサロンの開拓・運営、コンテンツの編集を行うなど、実に多岐にわたる業務をやらせていただくことで経験を積むことができました。コンテンツとテクノロジーに関する私の原体験はここにあります。

このように、私がSynapseを実績として語ることができるのは、私のデザインやコードを、当時のプロダクトオーナー・田村健太郎さん、プロデューサー・稲着達也さんがサービスとして成立させて社会に届けていたからです。このことはクリエイターとして働いていたときはまるで意識していませんでしたが、昨年の9月にChooningをリリースし、サービスを広めようとしたり、開発リソースを増やそうとしたり、資金調達をしようとしたり、関わる人たちにコンセプトを共有したり、目的を示してプロジェクトを進行したり、デザインデータやGithubのcommit、Podcastの音声やSNSの投稿など、アウトプットを一つひとつレビューして制御したりするうちに、先輩たちがやっていたことの大きさを改めて思い知るようになりました。

いま、自分はプロダクトオーナーであり、プロデューサーとしての役割を担っています。これは、クリエイターたちの成果をレバレッジさせる責務を負っている立場です。Sano Aoiさんに限らず、いま協力してくれている人たちが、携わったことを誇れるプロダクトにできるよう尽力していきたいと思います。

文:イワモトユウ(Chooning 代表)

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