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令和版桃太郎のスペックが低すぎた件 あらすじ&第1話

【あらすじ】
桃太郎は実話だった⁉
金ナシ学ナシ職ナシの騎士ナイトが鬼の復活を止めるべく奮闘するコメディマンガ。
桃園騎士は根はやさしいが、不器用で、うだつの上がらない日々を送っていた。そんなある日騎士は大企業の娘・犬田薫子と出会い、自分が桃太郎の子孫だと知る。薫子は犬の子孫で、二人は残りの雉、猿を探す。犬は忠義、雉は勇敢、猿は叡智、と意味があり、それに相応する、犬の子孫には鬼退治遂行のため莫大な財、雉にはずば抜けた戦闘能力、猿には知力が与えられているはずだった。しかし、武勇に優れたはずの雉は十歳のいじめられっ子で、猿に至っては死んだという情報まで飛び込む。はたして騎士は無事鬼退治する事ができるのか。

主な登場人物

【第1話より登場】

桃園騎士ナイト(25歳)  
そのキラキラネームには全くあっていないルックスで、学ナシ金ナシ職ナシのうだつの上がらない青年。要領悪くすぐクビになる。高校中退。根はやさしいが、見た目はチンピラっぽく敬遠されがち。情に厚く、感情的になりやすい。

犬田いぬた薫子(28)  
犬田薬品の創業者一族の娘。旧帝大で薬学を専攻したあと経営学に転向し、米国でMBAをとっており、極めて優秀。合理的な性格で、無駄嫌い。どうでもいいことは記憶に入れない。感情的になりやすい騎士とよくぶつかる。

【第2話より登場】

犬田佳樹(48)  
犬田家の執事兼工作員。

阿久津戸鞠とまり(28)
阿久津グループ会長の孫。あまり優秀ではなく、一族内の落ちこぼれ。薫子の高校の同級生で、彼女には何か特別な感情をもっている様子。

【第3話より登場】

阿久津幻氏げんし(82)
阿久津グループ会長。誰も逆らえない政財界を牛耳るドン。不老不死を願い、鬼の復活を目論む。

多賀その(42) 
頭が切れ、一族以外で幻氏に重用される人物。

阿久津正木まさき(29)
戸鞠のいとこ。一族内ではそこまで優秀ではないが、戸鞠よりは賢く、戸鞠を見下している。

阿久津流花るか(27)
戸鞠のいとこ。優秀だが、一族では目立たないタイプ。


【第1話】  (※「」内は口に出すセリフ。()内は心の中で思うセリフ)

〇繁華街(夜)
人々が次々に行き交う通りを男Aと男Bが談笑しながら歩いている。
男A軽く手をあげながら男Bに
男A「じゃあまたなタロー」
男B「おーじゃな」
二人別々の道に分かれ歩いていく。
男Bの後ろに深くパーカーを被り、マスクをした人間(性別不明、小柄)(以後、「犯人」とする)が近づく。
犯人、ナイフを取り出し男Bの心臓のあたりを刺す。
血を出しながら倒れる男B。
立ち去る犯人。
倒れた男Bを見て、通行人数人駆け寄る。辺りは騒然となる。

〇道路(昼)
マンションや住宅が並ぶ通り。
その一つのマンションの入り口に停まっている引っ越し業者トラック。
そのトラック内には、運転席には騎士の先輩、山際(中年男性)が座り新聞を読んでいる。
その隣の助手席には騎士、だらしなく座りスマホをいじっている。
新聞の一面は「桃太郎連続殺人事件」の文字。
被害者の顔写真と「桃田太郎」「桃井太郎」「桃沢太郎」の名前が掲載されている。「桃」のつく姓と、名前が「太郎」の人だけが狙われている。と書かれている。
山際「お前狙われるんじゃないか?」
にやにやしながら、騎士を冷やかす。
騎士「や、名字は「桃」つきますけど、名前「太郎」じゃないっスから」
面倒くさそうに答える騎士。
そこへ、トラックの運転席の窓をノックされる。
振り向くとノックの主は騎士と山際の上司、高野。
慌ててドアを開けようとする山際より先に力強くドアを開け、怒鳴り込む高野。
高野「鏡台ぶつけたか?」
その高野の怒り狂った形相に驚きながら、
騎士「え、ぶつけてないっスよ…」
高野「鏡にヒビが入ってんだってよ」
騎士「いやほんとにどこもぶつけてないス。一番気を付けて運びましたよ、ね山さん」
と山際を見る騎士。
山際「…」下を向いて黙っている。
騎士「え、山さん?ぶつけたんっスか?」
山際「いや…自分はぶつけてないけど…タンス運ぶときにぶつかってたの見たから…」とうつむきながら言う。
騎士「え?オレ?ぶつけてないスよ。いつですか?いつ…」身に覚えのない話で驚きながら山際に話す騎士が話終える前に、
高野「桃園お前弁償にいくらかかると思ってんだっ」
と騎士に怒鳴る。
騎士「いやほんとオレじゃないスよ、オレじゃ…」
慌てながら否定する騎士。
高野「クビだ、二度と来んな、今すぐ帰れっ」と怒鳴り散らす。
騎士「いやオレじゃな…」

〇道路(夜)
民家が立ち並ぶ通り。
とぼとぼ元気なさげに歩く騎士。
騎士「オレじゃないし…」
ぶつぶつ言いながら歩いている。
ポケットに手を突っ込み取り出すと小銭が数枚のみ。
騎士「マジか…」大きく溜息をつく。
築年数五十年以上は経過した古い二階建てのアパートの前にたどり着く。
騎士、アパートの二階の自分の部屋の前に大家が仁王立ちしているのを見つける。
騎士「げっ」(大家のババアっ)
そそくさときびすを返す騎士。
騎士「くそお…」
ぶつくさ言いながら歩く騎士。

〇繁華街の駅前(夜)
人々が待ち合わせをする大きな駅前の広場。
通り過ぎる人、待ち合わせをしている人など、多くの人でにぎわっている。
ため息をつきながら疲れた様子で花壇の縁に座る騎士。
騎士の横にいた男性のもとに女性が
「タローちゃん」
と言いながら近づく。
その女性と男性は合流し、談笑しながら騎士のもとから立ち去っていく。
騎士、その様子を見ながら
(「タロー」とか今言っちゃやばいだろ。…あ、名字が「桃」じゃないのか?)
と、思ったと同時に、その男性のもとに深くパーカーを被った人間が近づきナイフで心臓の辺りを突き刺し、何喰わない様子で早歩きで立ち去るのを目撃する騎士。
刺された男性、血を流しながら倒れかかる。隣の女性が驚きと恐怖で叫ぶ。
周りの人々その叫びに気づき、刺された男性のもとに駆け寄る。
その決定的瞬間を見ていた騎士、刺された男性のもとに一瞬駆け寄るも周りが救急車を呼んだり、介抱しているのを見、刺した人間を追いかけるため、犯人が向かった方向へ走り出す。

〇繁華街から少し離れた路地(夜)
犯人を捕まえるため走りながら探している騎士。
犯人を見つける騎士。
騎士、猛ダッシュし犯人に近づく。
犯人は気配を感じたのか、チラッと後ろを見、騎士を確認した瞬間走りだす。
運動神経だけは良い騎士だが、犯人も速く、追いつきそうで追いつけない。犯人、角を曲がる。
騎士も角を曲がると、すぐ先は行き止まり。犯人はいなくなっていた。
騎士「⁉どこ行った?」首を左右に振ってあたりを見渡す。
手前の一番低い塀を登る騎士。民家の敷地内のようだが木に覆われて中は見えない。
中をうかがうも敷地内の犬がやってきて吠え出す。
騎士「うお」驚く。
騎士「(犬に向かって)いやあやしいもんじゃないし…いや、犬にとっちゃあやしいか…?」と少し焦りながらつぶやく。
敷地の奥から「どうした?」と犬に声をかけている人間の声が聞こえる。
その人間が近づいてくる気配を感じ、騎士、塀を降りる。
騎士「(辺りを見渡しながら)…どこ行ったんだ…」とつぶやく。

〇繁華街の駅前(夜)
疲れた様子で、男性が刺された現場に歩いて戻ってきた騎士。
現場には救急車が到着しており、刺された男性が搬送されている様子を人だかりの後ろから見つめる騎士。
騎士「大丈夫なんかな…」と心配そうにつぶやく。

〇騎士の住む古いアパート前の道路(夜)
騎士、自分の部屋の前に大家がいないことを確認してアパート敷地内に入り、アパートの古びた階段を上ろうとした瞬間、グイッと腕を掴まれる。
振り返る騎士。
腕を掴んだのは大家(70代くらいだが、元気なしゃきしゃきとした小柄の女性)だった。
騎士「げっ」
掴まれた腕を振りほどいて走って逃げだそうとするも、大家の握力が強すぎて振りほどけない。
騎士「ババアのくせになんっで握力つええんだよっ」苛立ちながら叫ぶ。
大家「あ?ババア?」
騎士「あ…いや…大家さん…あのち、力持ちですねぇ~…」ハハとひきつった笑いをしながらごまかす。
大家「今日という今日は払ってもらうよ」
騎士「いやそれがデスネ…その…いろいろあってその…あとちょっとだけ…」少しすくみながら低姿勢でひきつった愛想笑いをしながらその場をしのごうとする。
大家「アタシも年金少なくて大変なんだ。これ以上払わないんだったら出てってもらうしかないよ」とはっきりした口調で話す。
騎士それは困る、といった表情を浮かべなんとかしのごうと口を開けようとした時、横から声が。
「一年分の家賃とその延滞料含め、しめて294560円」
と言って、騎士と大家の前に、現金の入った封筒を差し出す犬田薫子。
大家「あんた誰だい?」
薫子「家賃が支払われれば良いのでは?今ここでご確認ください」
大家「え…」薫子のあまりにも淡々とした姿勢にひるみながら、封を開け、中に入っているお金を取り出し数える。
何がどうなっているのか分からずあっけにとられて薫子と大家のやり取りをみている騎士。
大家が数を確認し終えるとすぐに
薫子「金額は合ってますか?」
大家「ええまあ…」
薫子「ではここにサインを」
と言って領収書が提示されているらしきタブレットを大家に渡す。
大家、タブレットを受け取るもどうしていいか分からず戸惑う。
薫子「指で名前を書いて頂ければ良いので」
大家、戸惑いながらも指でサインし、タブレットを薫子に返す。
薫子、タブレットを受け取ると大家に「では桃園さんとの要件はお済ですよね。お引き取り下さい」とまたしても淡々と話す。
大家、釈然としない様子で、何度か騎士と薫子のほうを振り返りながらもゆっくり自分の部屋に戻っていく。
それを見届ける騎士と薫子。
騎士、「えっと、あんた誰…」薫子に向かって話かける、
がよく見ると薫子は容姿端麗で、
騎士(タイプだー)
と心わしづかみされ、急にもじもじしだす。
騎士「え…と…その…あの…誰だか知りませんが…その…」
と照れながら薫子の目を見れずに話す騎士。
そこへ、グサッという音。
騎士「へ、グサッ⁉」
騎士その音に反応し、自分の胸のあたりを見てみると、薫子が騎士の胸のあたりをナイフで刺している。
騎士思わず薫子の顔を見る。
薫子「やっと見つけた。桃太郎…」


続く


※以前公開した「令和の桃太郎をなめんじゃねー」を少し書き換え、タイトルを変更したものです。

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