マイクロLEDを取り巻く環境と今後の展開について
1. マイクロLEDプロジェクトの中止が話題に
AppleがマイクロLED技術のスマートウォッチへの搭載を断念したとの噂が流れており、例えばマイクロLEDの供給が有力視されていたams Osramもプレスリリースで某マイクロLEDプロジェクトが突然キャンセルになったと発信し、その表現の仕方に穏やかならぬ気配が感じられます。さらに組立装置総合メーカーのKulicke & Soffaも最近になり「Project W」のキャンセルを発表し、Appleのプロジェクトとの関連について様々な憶測が出ています。
但しAppleサイドからは何も公に発表はなされておらず、また業界の契約上のルールとして、当事者らは秘密を保持する義務があるため、Appleの特定プロジェクトとの関わりはあくまで憶測として理解しておく必要があります。
2. ウェアラブル市場を巡るトレンド
一方、ウェアラブルデバイス市場を巡るトレンドも目まぐるしく変わっており、戦略の見直しが必要であることは数値データからも読み取れます。例えばAppleの最近の財務報告では、今まで順調に伸びてきたウェアラブルデバイスを含むカテゴリーの売り上げが前年度比で減少しており、スマートウォッチを取り巻く環境もけっして良くないことが分かります。
さらにams OSRAMも車載向けの光源を中心軸としている中、2023年は消費者向けアプリケーションの収益が不振でした。さらに今、テック業界ではHumaneのウェアラブルデバイス「Ai Pin」が話題になっており、スマートウォッチ自体がレガシー化されてしまう可能性も出てきており、スマートウォッチに多額の投資をして、マイクロLEDを導入し、高付加価値化することは現状リスクがあります。
3. 今後の展開
タイミング的にRohinniの米国連邦破産法第7条に基づく清算申請のニュースもあり、マイクロLED市場にとっては暗いニュースが続いたものの、開発期間が長く、導入も遅くなると言われてきた車載分野において、ヘッドランプ向けですでにマイクロLEDが投入されており、さらにその光源デバイスを開発した日亜化学工業のマイクロLED技術を採用し、パナソニック エレクトリックワークス社が次世代照明器具を開発したことを発表しました。
AppleとマイクロLED開発に関わるニュースは確かにインパクトがあるものの、従来開発に力を入れてきたプレイヤーはむしろ、コミュニケーションランプや路面描写等の次世代技術も含む車載ランプの開発やAIやデジタルコックピットのトレンドで変革期にある車載ディスプレイに注力しており、今後、こうした車載方面からのマイクロLEDの展開が勢いづくことが予想されます。
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