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年末のホーム見学

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[登場人物]

・私 (都会で夫と二人暮らし)
・夫
・お義母さん(夫の母・2023年秋から同居開始、要介護3)

・お義父さん(夫の父・地方でお義母さん、弟と3人暮らしだったが2023年夏前に他界)
・弟(夫の弟・お義父さんの死後、うつ病統合失調症を発症し保護入院)

・叔父さん(3人兄弟のお義父さんの弟・妻と同地方で2人暮らし・子供なし)
・叔父さんの妻(叔母さんが2人出てくるので叔父さんの妻とする)

・叔母さん(3人兄弟のお義父さんの妹・嫁いで同地方で夫と2人暮らし)

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ケアマネージャーさんに紹介してもらった特別養護老人ホームに、
私はすぐに電話をした。
事情を簡単に説明し、ギリギリ特別養護老人ホームに入れる要介護3ではあるものの、
もし空きがあるのであればぜひ見学した後に申し込みたいと伝えた。

「そうですね、、では見学に一度来られますか。
結構あの、、急ぎますか?」

ホームの担当の言葉に、少し口篭ってしまった。

私の心情としては急ぎたい。
1日でも早くホームに入って欲しい。
厄介払いしたいのではなく、、いや、そういう気持ちもゼロではなかったけど、
日々のお世話が精神的に辛かったから。。

「めちゃくちゃ急いでるわけではないんですけどその。。。
年内にできることはなるべくやっておけたらと思いまして。。。」

言い訳の塊で返事を返した。
夫とお義母さんに話をして、3人でホームの見学に行った。

そのホームは、
とても綺麗な建物でエントラスも広く、
理美容の部屋、大きなお風呂場、リハビリの部屋、広いトイレなど
申し分ない設備だった。
そして、空いている一部屋を見せてもらうと、
そこは一人暮らしのような広いワンルームに介護ベッドが備わっていて、
使いやすそうな洗面台もあった。

当たり前だけどバリアフリーだし、家より段差も全然なくて移動しやすい。
空きの部屋の向かいが偶然トイレになっていて、トイレが近いのもありがたい。

ホームはユニット型個室というもので、個室の並ぶ中央に広い食堂のような机と椅子が並んで、その脇にアイランドキッチンがある場所があり、
朝昼夜と同じフロアの利用者さん全員で食事をする。
同じフロアの利用者さんは、介護度が近くて穏やかな方も数名見受けられ、
他の利用者さんとの交流もできそうで良いなと思った。
そして、提携の内科、精神科の医師が定期的にホーム内の診療室で検診もしてくれるのだ。

「お義母さん広いね、お風呂も綺麗そうだし、部屋も広くていいね」

私と夫が車椅子を押しながらお義母さんに話しかけても、新しい環境にお義母さんは終始緊張してあまり返事をしなかったのと、
今自分が何をしにここにいるのか、わかっているのか、わかっていないのか、それすらも伺えないような感じの表情のなさだった。
私はお義母さんがここを気に入ることはなくても、気に入らない、嫌だ行きたくないと言わせないように取り繕った。

「いいねお義母さん、こんな広い部屋私が住みたいくらい!」

気遣った私の言葉も、ただ無表情でやり過ごす。
ホームで見学も同行してくれた、担当の新しいケアマネージャーさんは女性で、長年の経験がある方だった。
そのケアマネージャーさんは最後にそっとお義母さんに触れて、
「外寒いから、暖かくして帰ってね」
帰る身支度をさせる私と夫の横でお義母さんに話した。
その言葉でお義母さんは、すこしふわっとした笑顔を見せた。
さすがだ。
このケアマネジャーさんなら大丈夫だ、と少し思えた。

帰宅後も夫と一緒に、お義母さんにホームのことを話し合った。
私「今日のところ(ホーム)どうだった?」
お義母さん「あぁ、今日のとこなぁ。。」
やっぱり会話がなりたたない。変わらずお義母さんは自分の感情を相手にうまく使えることができない。

夫は、
老人ホームにしてはとても綺麗な方で、他でここまで広くて綺麗なところはあまり少ない。
家からもそんなに遠くないし、何かあればすぐ行けるし、良いと思うよ。
と、話すが不安そうな顔を見せる。
私は夫に加えて、
「前にも言ったけど、ホームに入ったからってもうそれ以降は会わないとか、そういうんじゃないからね。しょっちゅう顔は見に行くし、
何かあれば私が病院に連れていくし、身の回りの必要なものも準備するし、
お義母さんが一人でどこかに行くとか、そういうのじゃないから安心して。
ただお義母さんの住む場所が変わるだけ、私達は変わらず近い場所にずっといるから」と伝えた。
あまりうまい話し方はできなかった。
ただ、お義母さんの不安が取り除かれるようにしたかった。

お義母さんは不安ながらも、見学して実際見れたことに自分がどういう生活をするのかを知れた安心感も、少しはあったかと思う。
最終的には納得して、というか、私達に促されるように、
入居の申請を許諾してくれた。

お正月が明けたらすぐにケアマネージャーさんが調査に入ってくれることになった。
義理弟の保護入院に加えて、もう一つ闇の中で過ごすお正月ではなくなったことがほんの一粒の救いだった。


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