見出し画像

行きたくない納骨

_____________________________________________________________
[登場人物]

・私 (都会で夫と二人暮らし)
・夫

・お義父さん(夫の父・地方でお義母さん、弟と3人暮らし)
・お義母さん(夫の母)
・弟(夫の弟・無職・実家暮らし)

・叔父さん(3人兄弟のお義父さんの弟・妻と同地方で2人暮らし・子供なし)
・叔父さんの妻(叔母さんが2人出てくるので叔父さんの妻とする)

・叔母さん(3人兄弟のお義父さんの妹・嫁いで同地方で夫と2人暮らし)

_____________________________________________________________

前回の夫の実家への帰省から早くも数週間が過ぎ、
あっという間に納骨の日になった。
前日から帰れと叔父さんに言われていたが、
夫の仕事の都合がつかず、私たちは朝1番の高速バスで実家へ向かった。

が、しかし夫が電車に乗り換える時間を見誤っていた。
どうする?タクシーで行く?
私が夫に聞くと、
「いや、タクシーで行くと7〜8000円くらいかかるし
遅れるけど次の電車で行く」
次の電車は50分後。かなり遅れる。
叔父さんに怒られるんじゃないか。ふと思ったが、
その横で夫は叔父さんに電話をして、
「バスの到着が遅れて乗り継ぎができなかったから遅れる」
と、少し嘘をついていた。

電話を切った夫に聞くと、
「タクシーで来いって。無理って言ったら怒ってた」
そりゃそうだろうと思いながらさらに行くのが嫌になった。

しばらく時間を潰してようやく電車に乗り、実家に到着した。
そこには叔父さんの妻と、奥の部屋にお義母さん。
他はもう既に納骨のために墓のある山奥へ向かっており、
だれもいなかったので帰宅するまで待つしかなかった。
叔父さんの妻と目が合うや否や不機嫌な顔と態度。
こちらも怒っている。

やだなぁ。と思いながらも
私はお義母さんのところに行った。
私はお義母さんへ栄養のとれるおかずを前日に4~5種類仕込み、
保冷をして持ってきていたのでお義母さんに説明してから
冷蔵庫に入れた。
冷蔵庫の中はあまり冷たくない。
見るとレバーは弱の位置まで下げられていた。
電気代を気にしているのだろうか。
あまりにも冷たくなさすぎるので中くらいまでレバーを戻した。

夫は仏間の虫の死骸やゴミ、埃などをコロコロで取っていた。
手持ち無沙汰感。

そうすると車が止まる音が聞こえてお墓に行っていた
叔父さん、弟、叔母さん夫婦が帰宅してきた。
私はこっそり叔母さんにだけ
「時間間に合わずすみませんでした」と謝った。
叔母さんは「いいのいいの、仕方がないからね」
と優しく言ってくれた。

私がなぜ叔母さんにだけ言ったのかというと、
叔母さんは唯一、私達の味方のような気がしていたからだ。
叔父さんのきつい言い方やその他の言動に
叔母さんは昔から多少辛い思いをしたことがあったようで、
基本的には仲が良いけど、と前置きをしては
私に色々話してくれた。私も心を許し、
これまでの叔父さんのことを少し愚痴ってしまっていたのだ。

「皆、仏間に座ってくれ」
叔父さんが皆を集めた。
そうすると叔父さんは何かを書いたプリント用紙を全員に配り始めた。

「香典」
叔父さん夫婦                  〇〇万円
 叔母さん夫婦                〇〇万円
(指名)  (宗教関係者)                〇〇万円
(指名)  (宗教関係者)                  〇〇万円
(指名)  (宗教関係者)                  〇〇万円・

そこには今回の葬儀でお金を渡した人の香典リストが書かれていた。
叔父さんがPCで作成しプリントアウトしたものだった。

「え…」

なにこれ。
全員が騒然となる。
「こんな…」と叔母さんがボソッというと、
「なんだ?」と叔父さんが詰める。
「…いえ。。。」
何も言わない叔母さん。

叔父さん
「これで見てもらえるとおり、〇〇(私達夫婦)は今回の件では一千も払っていない。その上今日は納骨にも間に合うように帰らない。
こんなことはあってはならない。
弟はとても優しい気持ちを持ってこんなに家のことをしているのに、
助ける気もない。
葬儀は叔父さんの思うようにやらせてもらったけど、〇〇(私達夫婦)は何にもしない。〇〇(私達夫婦)は今日帰るまで声が枯れるまで(神道のお経のようなもの)を唱えて手を合わせて帰らないかん!
それにこの家は見てのとおりもう金目のものがない。
これからこの〇〇家のために修行に行く決心をしてくれた弟に、
少ないが今回の香典を渡してやりたいと思うから、
申し訳ないが香典返しはできないから」

と、叔父さんは叔母さん夫婦を見た。
夫は下を向いたままとにかく聴き続ける。たまに手持ち無沙汰でコロコロを触る。
私は話の最中、ずっと香典リストの一番上を見て目が離れなかった。

香典リスト
叔父さん夫婦     1,500,000円


ん?いち、じゅう、ひゃく、、、
ん??いち、じゅう。。。
150万???
何度も見間違いかと確認したが、間違いではなかった。
もちろん葬儀費用だけで150万ではない。
葬儀費用は20万程度だったのを、私と夫は葬儀の日に見た書類で確認している。後日、かかった費用を負担し叔父さんに返すつもりでいたからだ。
何に150万も?・・・不思議でしかない。

「これはもう、返しておきますから。。。」
そういうと叔母さん夫婦は自分達に配られたリストを叔父さんに返却した。
「そうか?」と叔父さんはすんなり受け取った。
叔母さん達は何か言ってくれるんではないかと、少し期待してしまった。
結果、何も言ってはくれなかった。
叔母さん夫婦は、山の上のお墓がとても立派で手入れもされていて素晴らしいと叔父さんを褒め称えた後、
自分達ももう歳でこれ以上はお墓に行くことは難しい、とやんわり墓参りを拒んでいた。

あぁ、この人達も反論しない人なんだと。
リストを返すという小さな抵抗はしたものの、ことを荒立てたくないというのがはっきりと見えてしまった。
根はとても良い人だけど、
もうこの人達を味方だと思って頼るのはやめよう。そう思った瞬間だった。

「〇〇(私達夫婦)は話があるから昼ごはんを食べたらすぐ こっちへ来るように」

まただ。また「話がある」
もう、モヤモヤやイライラ、なんともいえない感情がすでに駆け巡っている。
私達は家に置かれていた仕出し弁当を食べるために
お義母さんを起こし、お義母さんがいつも食べる時のように弟が
お義母さんの膝の真上に折り畳み机を広げ、
その上で私、夫、弟、お義母さんの4人でお弁当を食べた。

私はこのタイミングで弟に聞いてみた。

「修行に本当に行くの?」
弟「うん」
「介護の仕事は?もういいの?」
弟「介護の仕事もしたかったけど…まぁ前から言われてたことやし、お父さんにも生前言われていたことだから」
「そんなことで決めていいの?自分の人生よ?」
弟「うん」
「自分で決めたことなの?叔父さんに行けって言われて決めたんじゃなくて?」
弟「自分で決めた」

あっけなく私の大きなお世話は終わった。
そうか。自分で決めたならどうぞ修行でもどこでも行ってください。
そう思うようにした。
本人がSOSも出していないのに、どうしてもなんとかまともに生きる方法を見つけて動いて欲しいと思ってしまう。
これは身勝手な行動で、家族をコントロールしようとする叔父さんと
同じ行動なのかもしれない。
もう、お義母さんを助けることだけに集中しよう。

お義母さんはお弁当のおかずが固くて、
いなり1つと少しくらいしか口にできていなかった。
お義母さんの髪を洗う用意をしていた私だったが、
先に叔父さんの所で話を済ませて、
残り時間でお義母さんのまわりの掃除や洗髪をする段取りで、
私と夫は叔父さんの仕事場に向かった。
5分ほど遅れて、弟も来た。

叔父さんと叔父さんの妻はとても不機嫌にこちらを見ていた。
叔父さんの辛い言動はここからさらにエスカレートした。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?