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占い方法に「霊感」という単語をつけるということの意味

みなさんこんにちは。長南です。

最近は多くの方に私の書いた記事を読んでいただけているようで、非常にありがたく感じております。この場を借りて御礼申し上げます。

オカルトファンにとって非常に気になる存在の「将門塚」についての記事や、

西洋占星術で「風の時代」ということについての記事がよく読まれているようです。

本来であればこういったことは、より公共性の高い出版雑誌などのメディアで行うべきところなのでしょうけれども、雑誌もいろいろと残念な感じだったり速報性が出ないということで、ちゃんとした話題は取りあげにくいのかもしれません。

そんな中、こんなストレートな疑問をTwitterに投稿されているのを見つけました。

「タロット」と「霊感タロット」の違いが分からないって、言われてみればホントそうですよね。私は問答無用で「霊感」なんてつけずに鑑定するのですが、確かに「霊感タロット」という看板を掲げている方もたくさんおられるようです。

個人的にあまりヨソ様の商売の邪魔するのは本意ではないのですが、一般の方にしてみれば「何が違うの?」と疑問に思うのは当たり前です。ということで、今回はこの「霊感」という単語について考えてみたいと思います。

「霊感」ってどういう意味?

この「霊感」という言葉ですが、まずは辞書で意味を調べてみましょう。Weblioで検索すると、こんな記述があることがわかるかと思います。

■ デジタル大辞泉(小学館)
れい‐かん【霊感】
1 神仏が示す霊妙な感応。また、神仏が乗り移ったようになる人間の超自然的な感覚。霊的なものを感じとる心の働き。「失(う)せ物を霊感で当てる」「霊感が現れる」「霊感商法」
2 突然ひらめく、すばらしい着想・考え。インスピレーション。「霊感が働く」
■ 世界宗教用語大事典(中経出版)
れいかん 【霊感】
神仏の霊妙な感応。また、神仏がのりうつったような不思議な働きをもつ感じ。お告げ。インスピレーション(inspiration)と同義で、人間の霊の微妙な作用による感応。心にぴんとくる不思議な感じ。「−が働く」など。霊鑑と書けば神仏の霊妙な照覧。

なるほど「霊感タロット」というのは「神仏が乗り移ったようになる超自然的な感覚を使ってタロットカードを繰る占い」ということができそうですね。頭に「霊感」とつけることによって「よりスゴイ占いだ」と主張したいわけです。スゴイと主張したいのであれば「霊感タロット」じゃなくて「スーパーカリフラジリスティックエクスピアリドーシャスタロット」とでも言えばいいんじゃないかと個人的には思うわけですが。

「霊感」とつけてもハクが上がるわけではない

そしてこの「霊感」という言葉、「占いにハクをつける」というねらいが必ずしも実現できるというわけではありません。

現代日本での占いや宗教を語る上で避けて通れない出来事のひとつに「オウム真理教事件」をあげることができます。オウムが起こした事件が明るみになるにつれ、カルト宗教の危険性やカルト宗教が信者獲得のためのツールとして使っていた占いに対する風当たりが非常に強くなりました。オウムを堺に、占いイベントやブースに「宗教とは関係ありません」という断り書きを掲げるところが増えたのを個人的によく覚えています。デジタル大辞泉での記述に「霊感商法」という言葉が載っていますが、宗教の名のもとに高額なモノ(ツボとか墓とか印鑑とか)を買わせるということも横行していました。

また、オウム事件が一段落した後に、元オセロの中島知子氏にふりかかった洗脳騒動が話題となり、占いそのものに対して否定的な印象を持たれることがさらに増えるということがありました。

つまるところ占い師は「スゴいタロット」と主張したくて「霊感タロット」の看板をかかげているのだけど、一般の方から見たらオウムや中島氏のことを思い出し、結果「うさんくさいタロット」に見えてしまうわけです。

「うさんくさい」だけでは済まされない

「あやしい」とか「うさんくさい」とか思われたとしても、それを上回るだけの顧客を集められるのであれば(あまり褒められはしないけれども)やむを得ないという考え方をすることもできると思います。しかし目に見えない分野についての社会的な見方は確実に厳しくなっています。

2019(令和元)年6月15日に「消費者契約法の一部を改正する法律(平成30年法律第54号)」が施行されましたが、これによって「霊感商法」に対する規定が追加・有効化されました。

(消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示の取消し)
第四条 消費者は、事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、当該消費者に対して次の各号に掲げる行為をしたことにより当該各号に定める誤認をし、それによって当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは、これを取り消すことができる。
  (中略)
3 消費者は、事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、当該消費者に対して次に掲げる行為をしたことにより困惑し、それによって当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは、これを取り消すことができる。
  (中略)
六 当該消費者に対し、霊感その他の合理的に実証することが困難な特別な能力による知見として、そのままでは当該消費者に重大な不利益を与える事態が生ずる旨を示してその不安をあおり、当該消費者契約を締結することにより確実にその重大な不利益を回避することができる旨を告げること。

霊感によって「このままでは大変なことになる」とか言って煽ってモノを買わせた場合には消費者契約を取り消すことができるということです。

「霊感タロット」の場合には「不利益を回避することができる旨を告げている」わけではないので直ちに違法というわけではないけれども、超自然的な特別な能力をもって広告・勧誘をするというのは消費者契約法上、消費者保護の趣旨からは思わしくないやりかただということになります。

看板に「霊感タロット」とつけているということは、こういった占いの現代史や経緯などを知らないということ(知ってたらリスク大きくて看板に「霊感」とはつけられませんね)、そして自分達の鑑定にかかわる法規制に対する知識やコンプライアンス(遵法)精神に欠けているということを示しているようなものです。

蛇足になりますが、占い師には当然のごとく顧客の秘密を守る守秘義務がありますが、顧客のことをべらべらしゃべるコンプライアンス意識に欠けた残念な方々が一定数おられるようです。

「霊感タロット」の実務というか実態

とここまで「霊感」とつける感覚のマズさを見てきたわけですが、実際に「霊感タロット」の鑑定を行うときにどんなことをやるのかということを考えてみましょう。もし仮に私がやるとしたら斎戒沐浴した上で東西南北四方の精霊を呼ぶ儀式を行った上であらためてカードを繰ることを考えるところですが、巷の「霊感タロット師」はそんなことはやらずに普通に(笑)カードを引いているようです。

それでどんな鑑定をするのかと何人か「霊感タロット」師を観察していたらカードの解釈もいまひとつで、コンビネーションリーディングもなかなかしっくりこない方が多かったような印象を持ちました。

どうやら「霊感タロット」を看板にかかげている人は辞書に「突然ひらめく、すばらしい着想・考え。インスピレーション。」と書いてあるところ、すなわちインスピレーションでタロットを読んでいるようでした。

このページを読まれている方にはご存知の方も多いかと思いますが、タロットカードにはそれぞれ意味が設定されており、そのカードの意味を前提に読んでいくのが実際の鑑定でインスピレーションはその過程で補助的に使うのですが、カードの意味とかイメージシンボルなどを全部無視して「自分が感じたこと」を話すというのが「霊感タロット」の実態のようです。

仮に「霊感」が強くそれを活かすのであれば、ぶっちゃけタロット引くなんてまどろっこしいことやる必要なく「霊感」ですべてやっつければ良いし、タロットであればタロットのやりかたを踏襲するのが大前提です。経験を積む中で霊感が磨かれ独自の手法を使う方もおりますが、そんな方でも「守・破・離」ということで基本はしっかり抑えている印象がありますし、安易に「霊感」を冠につける人もいません(それだけ力がある方でしたら名前でお客さん集まりますから変に誇張した看板をつける必要もない)。

つまるところ「リーディングがおぼつかなく自信がないけども『鑑定』したいので、オーソドックスなタロットリーディングから外れても言い訳ができるように『霊感』とつけている」「タロットに詳しい顧客がやってきたときでも言い訳ができる」といったところが実態なのではないかと感じます。元も子もない言い方をすると「半人前」ということですね。

「霊感」を冠につける人がタロットに多い理由というのは「気軽にはじめられる卜術」だということもあるのかもしれません。命術や相術の場合はインスピレーションを働かせる場面がより少ないので「霊感西洋占星術師」とかいう看板を見かけることが少ないのでしょう。おそらく「霊感タロット」と「タロット」の両方を同時に看板に掲げている方もいないでしょう。

まとめ

ということで「霊感タロット」と「タロット」の違いというか実態について見聞きしてきたところを書いたのですが、こんな感じにまとめられそうです。

・見た目「タロット」と「霊感タロット」の違いはない。有意義な鑑定セッションを行いたいと思うのであれば「霊感タロット」ではなく「タロット」推奨
・「オウム」や「オセロ中島」を経験していない(その後から出てきた)方が自身のハクをつける意味で「霊感タロット」の看板をかかげているケースが多い
・カルト宗教やカルト占いにハマる入り口になりやすいので真剣な相談を行いたいのであれば「霊感タロット」師への相談は避けたい
・「霊感タロット」師はコンプライアンス精神が低い可能性があるので、自身の込み入ったことは必要以上に打ち明けないことをおすすめ(余計に真剣な相談はできない)
・「霊感タロット」師の鑑定技術が著しく低いことがあるので注意が必要。逆に程度の低い鑑定を観察したい人にはおすすめ

最後まで読んでくれてありがとう

思いのほか長い記事になりましたが、少しでも参考にしていただければ幸いです。

そうそう、この記事を読んでいるあなたにお願いしたいことがあるのですが、もし巷で「霊感タロット」占い師を見かけたとしても、そっとしてあげてください。間違っても本人に伝えるなんてことはやらないでください。

なぜなら頭に「霊感」とついているかどうかというのは、質の低い占い師を見分けるいちばん簡単な方法で、もうしばらくこの方法を使っていきたいからです(なぜ質が低いのかというのは記事の中でたくさん書きました)。

個人的には冠に「霊感」とつけて鑑定の場所に立つくらいなら占術や世の中のさまざまなことについて勉強を重ねて、鑑定の質を上げる努力をしたほうが有意義なんじゃないかと思っています。


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