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電気会社の営業にシャダウォックとブランを棄損された話

昼下がりのバトルグラウンド中……具体的に言えばシャダウォックをプレイしていた時の話だ。序盤はペンフレンドが上手く回り、バディのコストを大幅に下げた。テンポは多少犠牲になるが仕方ない。ペンフレンドを重ねて5発見、ブランは見つからない。しかしペンフレンドのおかげで、まだバディのトリプルがある。もう一回5発見したらブランが見つかった。バトルグラウンドに馴染みのない人に例えると、これは最高級の生肉はあるが過熱できる器具がない状態が数時間続いた後、七輪と炭が今まさに手に入ったかのようなシチュエーションである。

この試合はいけると確信したそのとき、インターフォンが鳴った。電気会社を名乗る人間だった。建物の人間全員に話を聞いているだとか、平日何度も伺ったとかそんなことを言ってきて、よくわからないがバトグラが今一番いいところだから、さっさと要件を済ませたい一心でオートロックのドアを開けた。

ぼくにはシャダウォックとブランが待っているのである。エレベーターで来客が自分の階に訪れるのを待っている間も限界までプレイした。奇数か、エレメンタルか、あるいは偶数までいけるのか。そんなことを考えているうちに来客がやってくる。

はっきりいって、徹頭徹尾言っていることがわからなかった。電気会社を名乗っていること、東京電力がなんたらかんたらとどうでもいい話をしていること、平日の昼間に僕がいるかいないかどうかを繰り返し問うて、何度も訪問したんですけどね~とあたかも僕に何かの責任があるかのように話を進めるが、思い当たる節はなく、この人間の目的もひどく曖昧でよくわからない。このどうでもいい話をされている間にも、僕のシャダウォックの時間が刻一刻と失われていることにストレスが溜まった。

「なんなんですか?」と聞いても的を得ない解答と本当にどうでもいい話を曖昧に引き延ばす、どこかで見たことがある政治家の様なトークを繰り広げられ、そのうちかなり遠回しに、検針票がデジタルなのか紙なのかを問われた。「メールですけど」と答え、何かそういう確認が必要なんだろうか、メールで来てたと思うけど確認するのめんどくせえ……と思っていたら、あっと言う間に男の話は四方八方に飛び回り、どうやら検針票の確認ということでもないらしく、本当に何がしたいのかよくわからなかった。あまりにも要領を得ないのではっきりと「あなたの目的はなんですか?」と聞いた。これまた男は長く曖昧に答えたが、要するにこの男が電力会社の営業だということがここでわかった。最初からはっきり言ってほしい。

夏だからどうたらこうたら言われ、しまいには「東京電力ですよね?ご存じかと思いますけど夏のなんたらかんたらで料金が300円くらい上がる」と言われ、そこで僕の怒りが頂点に達した。二千万歩譲ってこの男が善意で営業をしているとしよう。電力会社の支払いに苦しむ一般庶民の僕をどうしても救いたくて、自社の良い商品を紹介するために今ここで頑張ってくれているものだとしよう。

だとしても、今シャダウォックでブランをこの引いた瞬間は、月々300円以上の幸福が絶対にある。数あるヒーローの中から良いBANの中でシャダウォックを引けることなんてそう多くない。ましてやそこで5発見でブランを発見したこの状況を月々300円以下の価値に違いないと定義したこの男に猛烈に腹が立った。月々300円の節約のために僕のシャダウォックとブランを奪っていいはずがない。そんな状況想定できるわけないだろうと言う人はいるかもしれないが、その想像力のなさに僕は腹が立っているのである。

この男がインターフォンを押して僕の時間を奪うその瞬間が、ゲームを数十時間やりこんで得られるカタルシスの瞬間、そしてそれはもうしばらく訪れないものかもしれないものである、という想像力がない。この男が進めるそれが真に良質な商品なのだとしても、僕のシャダウォックでブランを引いたその瞬間を棄損し、電気代の月々の支払いが300円安くなったほうがいいに決まっているという傲慢な態度に、腹が立った。冗談じゃない。月々300円のサブスクでシャダウォック使用時に必ず5発見でブランが手に入るなら絶対に僕は課金する。ありえない。こんなことをやって良いと考えているような会社と契約する気はこちらにはさらさらない。ふざけている。こんな会社に金を払うくらいなら、いくら高くたって他の電力会社に金を払ったほうがいい。

あまりにも腹が立ったので「何かおたくが利を得るような契約するくらいなら300円払ったほうがマシです」と答えたら、「え?本当にいいんですか?月々300円ですよ?」という何か愚かな存在を見るような態度だったので、「そもそもうち東京電力じゃないんで」と言ったら引き下がったのですかさずドアを閉めた。本当にバカげた時間だった。

PCの前に戻ってくれば、シャダウォックの顔の下に「6位」と表示されていた。ああ、空しい。なんて空しいのだ。


あまりにも腹が立ったので調べてみるとこれはよくあることらしい。

よくある電力契約の詐欺的手法のようだ。思い返せばたしかに、と思うところがたくさんあった。検針票を見たがっていたのは検針票を見れば、勝手に契約可能だから見たかったのだ。思えば平日の日中来てたってのも多分通りの良い嘘だし、マンションの人間に同じようになんたらかんたらと言ってたのも嘘だろう。東京電力の契約者と決め打ちしてかかっているのも、そういうテクニックだ。ああ、嫌な世の中だなあ。

僕が起きたこと共有することで、今後の世の中でシャダウォックでブランを引いた人間が一人でも救われることを願う。

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