POSSESSOR　第２話　毒薬

　テーブルに戻った二人
　しえりは小瓶から錠剤を出し、飲む
ノ：…それが？毒を飲んでも大丈夫になるような抗生物質？
し：…逆逆。
ノ：？
し：この薬で、私の体が毒になるの
ノ：え？！
し：これをずっと飲み続けるとね、体液が毒に変わるの。もちろん私自身には効かないけどね
ノ：…まじかよ…！
し：驚いた？
ノ：…ふははっ！そりゃそうだよ、どこに毒を仕込んでるのかと思ったら、まさか体液そのものかよ！…でもそれじゃあ、彼氏といちゃいちゃも出来ないんじゃー？？
し：だから彼氏は作らないの…父親が毒親だしね。そもそも恋愛なんてできる環境じゃないのよ
ノ：はぁ～そんなモテモテなのに、おかしな世界だな！じゃあ今まで好きな人としたことはないの？
し：…あるよそりゃあ。滅多にないけど…
ノ：でもしたら相手がどろどろになるだろ？
し：…1か月間飲まないと元に戻るのよ。
ノ：ああ～…
し：だから、本当にしたい人とは、すぐにはしないの…
　ノギ、苦虫を噛みつぶした表情
ノ：…俺に仕事紹介してくれてた人がいるんだけど、明日挨拶に行こう
し：？なにあのおっさん？
ノ：そうそう、あのおっさん
　翌日、おっさんの会社
お：体液を毒に？！
ノ：そうなんだよ、だから股を開けばどんどん男が死んでく
し：殺されたいの？
お：はあーコブラ女じゃん
ノ：それで…例の件、上手くいったよ。これ（アタッシュケースを渡す）
お：おっとっと、あとで数えておくわ…で、仕事の件なんだが…
　場面変わりセレブのパーティー、みんな噂話をしている
セレブ１：ねえしってる？最近、富豪の財産だったり、大企業の機密資料だったりを盗み出して、よそに売って回ってる怪盗がいるらしいよ？
セレブ２：あ～知ってる！最初は盗みだけ働いてたけど、絶対に捕まらないって噂で、そのうちライバル企業の文書の持ち出しとか、工作とか請け負うようになったっていう…！
セレブ１：なんて言うんだっけ？怪盗…
セレブ３：怪盗○○でしょ？どんな見張りがついてても、瞬きする間に根こそぎ持ってかれるっていう…！
セレブ１：怖いわねー、うちももっとセキュリティ固めないと…
セレブ３：あらあら、旦那さん業界で恨みでも買ってるのー？
セレブ１：そんなんじゃないわよ！ただ、悪いことしてない人でも被害があるらしいじゃない
セレブ２：昔はただ高価なものを狙って回ってたらしいけど、最近はそういう人の依頼でばかり動くらしいものね。
セレブ１：まったく、怖い国になったわー
司会：みなさん！長らくお待たせいたしました。新商品の発表に移らせていただきます！
セレブ２：あら、もう始まるわよ！
　舞台上に布のかかった台座が現れる
司会：こちらは、世界に5つしかない限定品となります！500ｇもの金を使った、ローマの休日を思わせる、アンティークモデルのティアラ！
セレブ３：…ん？！ねえ今、布が一瞬動かなかった？
セレブ１：え？何が？
司会：手にできるのは選ばれし奥様だけ！その最高峰のジュエリーが…こちらです！
　布をめくりあげると、そこには空っぽのショーケースが
　一同、混乱する
司会：ない…？なに、入れたはずじゃ…
　会場の外、車でしえりが待っている
　突然ノギが助手席に現れる
し：うお？！
ノ：さー出して出してー！
し：ねえいきなり車で解除しないでって言ったじゃん！
ノ：このタイミングで車に乗り込む映像残したら怪しいだろー？
　ノギ、屋根を開ける
ノ：ふぉー！
し：ちょっと？！
ノ:やっと今日の山は超えたんだ！あとは相手企業に届けるだけ、きもちいい〜！
　ノギ、懐から布で包んだ金のティアラを出す
ノ：ほら～、すんげえよ金が500gだってよ？！
し：あまり出さないで、排気ガスで汚れるよ！
ノ：へいへい、今日のメインディッシュ～
　ティアラをそのまま後部座席の、ジュエリーが沢山詰まった箱に入れる
し：設計書はこっちが持ってるから、警察が荷物検査始める前にさっさと相手のところへ…
　とあるジュエリー会社に到着、ティアラを筆頭に、ライバル会社の未発表の新作の数々を提供する
女社長：あらあら、本当に取ってきちゃってるわ？
し：？！おいおばさん、ちゃんと報酬は用意したんだろうな？
女社長：やだもう、おばさんだなんて。そんな怖い顔しなくてもちゃんと振り込むわよ。全部本物って確認できたらね。
ノ：はっ、慎重なこった。いつでもかまわねえよ。でも、もし払わねえなら、次はどこをカモにするか分からねえぜ、俺ら…
部下：どういう意味だおら？！
ノ：はは、じゃ、よろしく～
し：忘れんなよな
女社長：…
　別の場面、ホテルのバーでしえりと若い男が飲んでいる。後ろの席にはノギが座っている
若頭：＿＿正直、相手するのは年増の女ばかりでね。疲れるよ…
し：そうなの…？若頭も大変なんだね…でも私なら、満足させて上げられるかも…
若頭：…！
　しえり、男と一夜を共にする
　翌朝、どこかのサービスエリアに止められた車で男は目覚める
若頭：あれ？…ここどこ？（勘付いてバッグを確認する）うわかゆい！
　ノギとしえり、若頭の家を漁る
ノ：あーこれこれ、売値はしらねーが＿
ナレーション「セレブの世界に突如現れた二人組の怪盗。彼らの摩訶不思議な技によって、標的にされた成金たちはあっと言う間に財産、信頼を失っていった。そして、実在するかも不確かな、都市伝説としてその名を轟かせたのであった」
御曹司（以下、御）：（しえりの盗撮写真に溢れた部屋で爪を噛みながら）くそ、こいつ…

ノ：今度は誰だ？まだ仕事が片付いてないってのによ
お：飲食会社の御曹司だ。どうやら魔性の女怪盗様に、用があるらしいぜ？
し：…？
　御曹司、占い師に相談している、占い師の顔は伏せる
御曹司（以降、御）：（ノギとしえりの写真を出し）こいつが俺のしえちゃんに手を出してるらしいんです…
占い師（以降、占）：（写真を見て）…初めて見る顔ね
御：最近…新星とか言われて図に乗ってるやつですよ…しえちゃんにこれ以上近づかせないようにするには、どうすればいいのでしょうか？
占：（トランプカードを一枚を手に取りじっと見て）…あなた、児童拉致に手を出してる？
御：！！な、なにをいって＿
占：それを活かすのよ…
御：…！
　ノギら、食品会社の前で待っている。
し：こんな会社、聞いたことない
ノ：うそ、俺は世話になってるけどなー、ウインナーがうめえ
社員１：お待たせしましたー、さ、こちらへ
　社内
社員１：ちょうど今、新商品のウインナーの試食会をしていましてね？いかがですか？
し：いえ、私は…
ノ：うそ！はいはーい！食ってみたいです！
社員１：それでは岩崎様は先に応接室にご案内しますので
し：おい、遊びに来たんじゃないぞ？
ノ：まあまあまあ、すぐいくから
社員２：では岩崎様、こちらへ
　しえり、応接室に案内される
御：や、やあ…！岩崎さん…
し：…はい？初めまして…ですよね？
御：あっ…そ、そっか、そうですよね、失礼しました、こちらお茶です
し：？
　ノギ、多種多様なウインナーを食べ比べ
ノ：うーん…これも捨てがたいけど、こっちのゆずハーブの方が新感覚な感じはしますね…
社員１：おお！さすが舌が違う！さ、次はこちらをお試しいただきたいんですが…
ノ：ちょっと、さすがにお腹が…（急な眠気に）？！
社員１：！どうされました！？
ノ：（うつむき）いえ…なんか、頭が…これ、なんか入れました…？
社員１：…なにか、混入していましたか？
　寄りかかったノギに睡眠薬を塗ったハンカチを近づけ
社員１：睡眠薬とか…？
ノ：？！
　会議室を飛び出し、応接室へ走る
ノ：うっ…意識が…しえりー！！
　車内、寝ているしえりの手足は縛られている
御：ふん、これで当分は、あいつも気軽に手は出せない
運転手：岩崎会長に狙われるのでは？
御：！！うるさい！占い師ちゃんにまた聞けばいい！…今は、俺がしえちゃんの傍だ
　ノギ、応接室を開けるが誰もいない
ノ：っ…！なんだ、どこかに行ったのか？（後ろから殴られる）ああ！
社員１：（ドアに鍵をかけ倒れたノギを見下ろし）まだ試食は途中ですよ？どれがお好みでしたか
ノM：（頭から血を流し）くそ、殴られたらさらに意識が…
社員１：さて、お連れ様の元へ行きましょうか
ノ：…へ、そうだな
　次の瞬間、一瞬でノギが消え、扉を閉める音が短く響く
社員１：？！なっ…
　倉庫の中、しえり、手足を縛られ、跪いた状態で目覚める
し：…！！なんだ、お前…
　御曹司、しえりにノギの写真を見せる
御：誰こいつ？
し：誰って、呼んだのあんたじゃ＿
御：こいつとどういう関係って言ってるのお！！！
し：！！…どういうって別に…一回したくら＿
御：（しえりの顔を掴み）知ってる？ねえ…僕は昔からずっと君が好きだった。ずう～っと、恥ずかしくて近づけなかったけど、君を一番、大切に思ってたんだよお…？
し：？！なにきも＿
御：（しえりの股間に手を当て押し倒す）お前とずっと一緒になりたかったんだあ！
し：きゃあ！やめろおお！！
御：わかるだろ？一回会長の誕生日会で目合ったよねえ？あの時はお互いドキドキしてさ、はあ僕ら両想＿（激痛がし指を抜く）痛い！なに…
　指先、紫色にただれている
御：きゃあー！！これえ！これおま、これええ！
し：ぐっ…（立ち上がろうとする）
御：純潔だと思ってたのに！（ナイフを出す）ふざけんな死ねえ！
し：（うそ！（目を閉じる）…あれ？）
　目を開けると皆止まっている。入口に動く人影
ノ：…よお
し：…！お前…
　外、歩いて倉庫から離れる二人
ノ：くそ、お前狙いだったんだなあいつら…毒殺しの復讐か？
し：いや、ただの大胆なキモ男だったよ…もう戻していいんじゃない？
ノ：まだだ、相手は車だぜ？もっと人混みが増えてからだ
　しばらく沈黙し、しえり意を決して
し：…（小声）ありがと…
ノ：ああ？！なに？

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