読書メモ 戸田山和久著『科学哲学の冒険』第四章 科学的説明って何をすること?

ヘンペルは演繹的・法則的モデル(DNモデル)や被覆説明モデルというものを考えた
説明とは次の四つを満たすものである
1.その推論は論理的に妥当な演繹である
2.説明項は少なくとも一つの一般法則を含んでおり、それは被説明項を導き出すのに不可欠なものでなくてはならない
3.説明項は経験的に確かめることが可能なものでなくてはならない
4.説明項に含まれる文は真でなくてはならない

「飽和水蒸気量と室温の関係云々によりコップに結露が生じる」は
「コップに結露が生じる」が被説明項
「飽和水蒸気量と室温の関係」が説明項で
飽和水蒸気量あたりが一般法則

4が怪しい推論は潜在的説明と呼ばれる。

「ピルを飲むと妊娠しない。太郎くんはピルを飲んでいる。ゆえに太郎は妊娠しない」という説明がDNモデルでは科学的説明ということになる。この問題を説明は説明項と被説明項の関連性に反応する、という。

旗竿問題
旗竿の長さと太陽の高さ三角法などの一般法則から影の長さを説明できる。逆に影の長さと太陽の高さ三角法などの一般法則から旗竿の長さも説明できる。旗竿の長さを算出するやり方としては正しいが、科学的に旗竿の長さがなぜ〇メートルなのかということを説明しているわけではない。しかし、ヘンペルの法則は満たしてしまう。DNモデルでは説明項と被説明項の非対称性をとらえることはできない。

DNモデルはニュートン的総合のような科学法則をより一般的な法則に包摂するタイプの説明に当てはまる。

サモンの因果メカニズムモデルは説明とは原因を突き止めることとして、統計的関連性と因果関係の突き止めという二段階で説明するとした。原因の突き止めにはスクリーニング・オフという自然界に介入するやり方が必要だと提唱。

この因果メカニズムの突き止めというアイディアが出なかった原因は、経験主義者が初期の科学哲学を担ってきたことによる。経験主義者は何が見えたかに着目し、因果関係に言及するのに慎重になろうとする。

水がH2Oであるということが判明すると色々な説明ができるようになるが、水がH2Oであるということは出来事というカテゴリーのことではない。論理的同一視による説明という。

キャッチャーの統合化モデルは説明の機能をニュートン的総合のような統合化に求める。「説明」より狭い概念として「原因突き止め」を置く。旗竿問題の竿の長さの説明は原因突き止めではなく統合性が低いとみなす。統合化の概念はあいまいで分析の途上とのこと。


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