読書メモ 戸田山和久著『科学哲学の冒険』第七章理論の実在論と対象の実在論を区別しよう

ナンシー・カートライトは法則についての反実在論を提唱。ケプラーの法則のような直接観測できるマクロな量どうしに成り立つ規則性を「現象論的法則」と呼び、ニュートンの万有引力の法則のような現象論的法則を説明する法則を「基本法則」と呼ぶ。カートライトは現象論的法則に実在論的立場をとることは否定しないが、基本法則に関しては反実在論の立場をとった。

カートライトの立場は対象実在論と呼ばれていて、対象の実在論+基本法則の反実在論というふうにまとめられる。電子はあるけど、それについての基本法則が正しいとは限らないというカートライトの立場では目に見えない電子について実在論の立場をとるための議論が必要になる。それは「操作可能性による議論」と呼ばれていてイアン・ハッキングは「おおむね意図したとおりに対象に介入できるということを、最もうまく説明するのは、その対象が現に存在するということだ」という議論を展開した。(「操作可能性が存在措定を支えてる」)伊勢田はこれを介入存在論と呼んだ。介入存在論は悲観的帰納法に強い。一時期あると思われたが存在しなかった理論的対象は、介入不可能なものばかりであった(エーテルなど)。

第八章へつづく

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