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妊娠初期編

妊娠5週目の中盤の出来事である。
まだ産婦人科にも行っていないのにつわりが始まった。
においが気になるようになり、吐き気を催すようになったのだ。
排水溝などの水回り、食事のにおい、冷蔵庫も開けられない。
味覚が変わった。
すごく気持ち悪くて、妊娠がこんなに大変だとは思わなかった。
つわりには個人差があると聞いたがつわりが始まるのも早い気がする。
「これがしばらく続くと思うと私はもう耐えられそうにない。」
そう感じていた。
妊娠を望んでいたが妊娠を恨んだ時期でもあった。
悪阻を乗り越えてきた世の中の母たちを尊敬する日々であった。

ご飯の時間になるとずっと嗚咽を繰り返し、途中まで我慢して食べようと試みるが、抑えきれずトイレに駆け込み吐いていた。
私の顔から笑顔は消えていた。
今ではギャグだが、旦那の口臭やおならでも悪阻がやってくる。
旦那はショックを受けていたが、私は吐かないように必死だった。
始終嗚咽をしていて、なにもできない自分の姿と一緒に暮らしている旦那には申し訳ないなと思っていた。


6週の終わりに初めて妊娠確認に産婦人科に行った。
初めての妊娠確認は戸惑いであった。
「下着を脱いで、ここに座って下さい。」
内診台に座り股をぐりぐりされた。
横にあるモニターでエコーを確認できる。
「これが赤ちゃんです。赤ちゃんは一人ですね。心拍も確認できますね。」
そう言われても、細胞を見ているようで赤ちゃんという実感はなかった。
医師ってすごいな。
「心拍が確認できたので次までに母子手帳もらってきてくださいね。一先ず妊娠おめでとうございます。」
わたしはこの言葉を待っていた。
肩の荷が下りた気分であった。
エコーの写真を渡され、初回の診察を終えた。
「次は2週間後になります。」
「えーーーー!」
2週間。
妊娠とはなんでも2週間間隔なんだなとこのとき始めて理解した。
妊娠中の2週間は長い。そしてつらい。
妊娠したら喜びだけかと思ったが、もうすでに気持ちは悪阻で辛かった。
初めての妊娠で、出産までやっていけるか不安であった。

この時期はまだ胎動を感じないから本当に妊娠をしているか不安な日々が続いた。
結婚式のために伸ばしていた髪の毛もバッサリと切った。
洗うのと乾かすのが水回り系の悪阻で辛いのだ。
産婦人科での検査数値も良くなく薬も処方してもらっていた。
点滴も提案されたが薬でなんとか乗り切っていた。
ご飯も全然食べられない。
よく食べていたのは白いもの。
常温のごはんにのりとしょうゆをかけてのり弁風にしたもの、うどん。
飲物も飲むのが辛い。
今まではお茶を飲んでいたがお茶も美味しくない。
産婦人科で進められたスポーツ飲料を息を止めて薬だと思い飲み、水分摂取していた。
体重も自然に落ちて行った。

日々ダイエットを頑張っている若い女の子に言いたい。
ダイエットしなくても大丈夫だよ。
人が痩せる時はこういう時なんだと。

食べ物が美味しくない。
食べたいのに受け付けない。
顎の運動が進まない。

食べる量の少ない私を見て旦那が言ったことに怒る日もあった。
私「食べて食べて言わないで。」
食べたくても食べれなくて辛いのだから「栄養つけなきゃ」とか「しっかり食べて」と軽々しく言われることに腹が立つ。

妊娠中に摂ったほうが良い栄養も調べていたが、そんな食事もとっていないのにお腹の中の赤ちゃんはちゃんと成長していた。
無理せず食べれるものを食べてればいいんだ。

お風呂では気を逸らすため毎日歌を歌っていた。
湯船につかると魂を吸い取られ、無になったこともあった。
自然に涙が流れてくる日もあった。
旦那の言っていることがなにも刺さらない。
出てくる言葉は弱気なことばかり。

全てはホルモンのせい。

そう分かっているけどやはり辛い。
妊娠することを舐めていた。
同じ週数の人や妊娠のことをSNSで検索をして情報を集めていた。
他の人の辛いエピソードを見て「自分の症状はまだ辛くない方だよ」と言い聞かせていた。

それでも「早く終わって。」
と、心の中でずっと願うのでした。


#妊娠初期 #妊娠#出産

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