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20年着た浴衣をほどく

中学生のころ、祖母が浴衣を仕立ててくれた。
といっても、祖母が縫ったのではなく、知り合いに頼んでわたしと姉に浴衣を一着ずつ贈ってくれたのだ。

中高生のころ、浴衣を着るのは年に一度、花火大会に友達と行くときだけだった。
自分で着付けることはできず、祖母に着付けてもらったり、友人宅で友人のお母さんに着付けてもらったり、とにかくなされるがままで着ていた。
「これは去年も着たから」とこだわるタイプではなかったので、毎年同じ浴衣同じ帯を1回身につけることには、まったく疑問をもたなかった。

その後、しばらくタンスで眠っていた浴衣を再び着るようになったのは、日舞を習いはじめたからだ。
大人になって、友人に誘われてお稽古に通うようになった。
昔からなんとなく憧れの様なものを抱いていたので、結局いまでものんびりとお稽古を続けている。
そして、はじめてのお稽古に行ったときに持って行ったのが、唯一の浴衣であるその浴衣だった。

緑のグラデーションに大柄の花模様が散っている注染の浴衣で、色は大好きだけれど「20代も後半でこれを外で着るのはちょっと……」という感じでもあったので、それ以降この浴衣は「お稽古着」になった。
お稽古着になると、少なくても月2回、多いときは週1回、発表会前は週2回着る。
わたしは動くとかなり汗をかくので、冬でも浴衣でお稽古をしていた。
洗うのは毎回ではないけれど、2ヶ月に一度くらいは流石に洗う。
ネットに入れて、洗濯機でがんがん洗う。
当然だけれど、綿なので型崩れさえ気をつけておけば、洗濯機で普通に洗えるのだ、浴衣というものは。

大汗をかいて、何度も乾かして、たまに洗ってアイロンをかけ、また着る。
いつの間にか,力のよくかかる袖の付け根、身八つ口のところと、お尻の部分の生地が引っ張られて避けていた。
裏から適当な手ぬぐいの切れ端を当ててざくざく縫い、また着た。
裂けるとまた縫って、また着た。
お稽古着だからそれで十分だったし、自分のサイズに一番合った浴衣がそれだったから、それが一番着やすかった。
たまに寒すぎてウールの着物にすると、先生に「ちょこちゃんが緑じゃないと、なんだか不思議ね」といわれるほど、緑の浴衣は身に馴染んでいた。

そのあと、いろいろあってお稽古を1年半ほどお休みしたときに、お稽古場に置きっぱなしにしていた浴衣を持ち帰ってきて洗った。
もういい加減、あちこち裂けすぎている。
そろそろ寿命かなあ、次からは別の浴衣にしようかな。
そんなふうに思って、最後に洗濯してアイロンをかけたあと、タンスの下のほうにその浴衣は仕舞われた。

お稽古を再開し、お稽古着の浴衣は別のものになった。
まだ「これ」と確定はしていないけれど、緑の浴衣の出番は終わってしまった。

さて、この浴衣をどうしよう

とにかくこれである。
さすがに20年以上手元にある浴衣。
お覚えている限り、はじめて仕立ててもらった浴衣。
なにより、一部の生地が弱くなった箇所を除いて、まだ生地にハリがあり、色も好きなのだ。
バスローブがわりにしようかとも思ったが、もうすでに湯上がりとして正しく「浴衣」している浴衣はもうあるのである。

これを解いてなにか作ろうか。

そう思い立ったのが、昨年の夏前だった。
そんなわけで、前回の名古屋帯のときに登場したくけ台や和裁ボードをメルカリでポチしていたのだが、夏はどうにも時間がとれずに、そのままになっていた。

ところが、名古屋帯の成功体験で、にわかにやる気が起きてきた。
そのままの勢いで、わたしは浴衣の解体に乗り出したのである。

解いてみながら驚いたこと

先述のように、名古屋帯の成功で調子に乗っていたわたしは、「今年は和裁習っちゃおうかな〜。木綿の単衣くらい縫ってみようかな〜」とお気楽に考えはじめていた。
お仕立てよりもお教室代のほうが高いけれど、何事も経験ではあるし。

そんなことを考えながら、浴衣を解きはじめると……
なぜか袷よりも解くのが難しい。
ものすごくいろいろ折り込んであるし、見えない部分に当て布があちこちについている。
正直面喰らった。
まじか。
これ縫うのか。

和裁…… やめようかな……

早くも新年の決意が軽く折れかかる。

そしてもう一つ驚いたこと。
それが

生地の色落ち

だった。

着ているときは全く気にしていなかったのだが、ご覧あれ。

袖の丸み

袖を解いたら、これ。

そしてこちらもご覧あれ。

襟のさき

襟を解いたら、これ。

思えば当然である。
20年以上昔の生地で、何十回と洗濯してきて、光を浴び続けた布なのだ。

色落ちして当然。
日焼けして当然。

それなのに、一部の弱った部分以外は、全然生地が傷んでいない。
これがしっかりした木綿の力かあ…… と感動してしまった。

それにしても、この生地は一体どうしましょう?
はじめは「半幅帯か兵児帯にしよ〜」と軽く考えていたのだが、解いているあいだにその夢は潰え去ってしまった。
だってこれだけ色落ちでまだらになってると…… ねえ?

でもとりあえず、全部解いて全部洗って、全部アイロンをかけた。

今はとりあえず巻いてある。
さてどうしましょ?

アイデア募集中

そんなわけで、極力生地を無駄にしない方向性で、なにか「きちんと使えるもの」を作りたいのだが、アイデアがわかない。
もういっそのこと、裏返して半幅帯にしてしまおうかしら?
巾着袋とかはいらないしなぁ。

リメイクアイデア、絶賛募集中。

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