「ー暗い部屋の中だった。」
これまで幾度となく「ホラー苦手」と言いながらホラーを読んでいるわたしですが、今回もホラーです。
でもティーンズ小説なので、そんなに怖くはないのですよ。
小野不由美著『ゴーストハント1 旧校舎怪談』(KADOKAWA、2020)
どうも、「十二国記」でお馴染みの小野主上の、ティーンズ向けホラー小説です。
単行本の刊行は2010年。
新しい作品かな?
というととうではなくて、1989年ごろから講談社ホワイトハートで刊行されていた作品を、角川でタイトルを変えて復刊したようです。
十二国記も本は講談社ホワイトハートの作品なので、あれですね、ホワイトハートがレーベルとして無くなるので、他の出版社にいろんな作品が飛んでいったんでしょう。
ティーンズ小説、といいましたが、実はわたし自身が「ティーンズ小説」なるものの定義をちゃんとわからずに使っています。
今で言うラノベに近い感じで、でも当時のラノベ系レーベル(富士見ファンタジア文庫)とは別体していた、いわゆるYA向けのものが総じて「ティーンズ」と呼ばれているような気がします。
特徴としては、十代の、特に高校生あたりの子が主人公で、一人称で、軽めな調子で読める、というあたりでしょうか。
この「ゴーストハント」シリーズは女子高生の麻衣が、怪奇現象の研究を行う渋谷サイキックリサーチのナルと出会って、様々な怪奇現象を解決していく、という物語です。
キャラ立ちが強いところも、ラノベ感あるというか、作品の特徴ですね。
さきほど、もともとこの作品は1989年ごろから刊行、と書いたのですが、なんでかって作中の「機械」の描写がどうしても古くって、そこにノスタルジアを感じるからですよ。
……一晩中ビデオを回しておくのに、バッテリーが足りないとかテープの交換がとか、学校の教室ひとつ使って録音と映像の機械を別々に組み立てて、とか。
うん、時代だね(遠い目)。
これもまた、味わいの一つですよ。
現代(2020年代)のテクノロジーで同じことをしようとしても、作品自体が崩壊するので、作品と時代は切っても切れない関係だなと思います。
さて、ゴーストハントシリーズは全6巻。
毎度毎度なんらかの怪奇現象がおこり、毎度お馴染みの除霊チーム(仲良しとは言わない)が集まって、怪奇の正体を暴き、除霊するなり閉じ込めるなりして事件を解決していきます。
事件を解決、と言う点においては、ホラーもミステリもほとんど一緒だな、と思います。
事件自体が、人外によるものか、人間によるものか、の違いがあるだけだな、と。
怪奇現象を解決していくのと反比例するように深まっていくのが、「ナル」という存在の謎です。
麻衣は次第に「ナル」という謎そのものに惹かれていくわけですが……
やっぱり”探偵役”が謎めいていて、”ワトソン役=物語の語り手”がいい意味で部外者で一般人であることが、物語を楽しむためのキーポイントなのでしょうか。
ホラー苦手なわたしでもキャラもの小説として楽しめる作品です。
ところで、ホラーでもミステリでもすっっっっっごく気になるのがね…
クリスチャンの描かれ方でね……
ゴーストハントではジョンというエクソシスト(カトリック)が出てくるのですが、なんだろ、「聖水」とか「主の祈り」とかで悪霊退散するんですけど、エクソシストってそんなものなん……?
エクソシストの実態を知らないので、もしかしたらほんとにそうなのかも知れないんですけど、なんていうか、創作界隈に蔓延っている「キリスト教」のイメージって、実態とかなり違うよなっていう。
推理小説で、「彼は敬虔なクリスチャンだから、自殺などという禁忌を犯すはずがない。よってこれは殺人事件だ」とか言われると、えーー…???みたいな気持ちになります。
自殺って(おすすめはしないけど)、別に特別視される禁忌じゃなくね?
などといちクリスチャンのわたしは思うのでした。
まあ創作なんて、テンプレのオンパレードなのだよ、きっと。
テンプレの楽しさ、と言うものがあります。
むしろ「型」の中でどれだけ楽しいものができるかが、「ジャンル小説」の醍醐味でもあるので、型は大切だよな、と思います。
思いますけど、まあ、ね。
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