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「『封神演義』とは… 『西遊記』『三国志演義』『水滸伝』とならぶ中国の四大怪奇小説の一つである」

ゴールデンウィークの締めがこんな超有名作品でごめん。
本棚で久しぶりに目に留まったら、止められなかったんだ。
外伝にしたのはせめてのも抵抗と、ひょっとして外伝の存在を知らない人がいるかな、と思ったので。

わたしの世代で読まなかった人がいるのか、というくらいの有名作品ですよね。
たぶんね。

藤崎竜『封神演義』

1996年から2000年に連載していたのですって。そんな前か。
文字通り、中国の超古典である『封神演義』を大胆にコミカライズしたこの作品、もうめちゃくちゃ面白いのでまだ読んだことがない人はぜひ読んでください。
漢字に強くなれます。

全23巻というボリュームは、当時の人気ジャンプ作品にしては珍しく、脱線することなく綺麗に終わることのできた奇跡の結晶です。
本日紹介するのは、そんな奇跡の終焉から18年後に突如発表されたこちら。



藤崎竜『封神演義外伝〜仙界導書』(集英社、2018)

これね……
これが雑誌に載っているのをみた時(このために買った)、息が止まるかと思いました。
たしかに『封神演義』なのに、わたしが読んだことのない『封神演義』がそこにある、という衝撃。
スピンオフとかアニオリとかそういうのではない、初めて読む「藤崎竜の封神演義」がそこにあるという衝撃は、既視感という言葉では言い表せませんでした。
(なお同様の衝撃をスレイヤーズ16巻でも味わいましたが、それも2018年でした。恐ろしいな、2018年。)

知らない人のために説明をすると、『封神演義』は古代中国・殷王朝末期を舞台に、殷を影から支配する仙女・妲己を倒すために遣わされた道士(仙人見習い)太公望が、仲間を集め周王朝建国を手助けし、人間界から仙人を追い出すために奮闘する冒険活劇です。
フジリュー版封神はもとの小説版から次第に離れていき、ラストは独自の展開を見せますので、小説やそもそもの中国古典を愛する人の受け取り方はわたしは知らないのですが、まあ今読んでもぶっとびっぷりと物語のまとまりがすごいとしか言いようがありません。

時代物の作品の場合、特に近年は史料にあたることが簡単になりつつあることもあり、「時代考証が正確である」ということが作品評価の一端を担うことがあります。
「明治期に◯◯はない」とか「新撰組は△△だった」とか、あるじゃないですか。
古代中国で正確な考証が難しいとはいえ、絶対にないものとかは分かりきっているわけで。パソコンとか。

そういう「これは時代的にタブーだろ」ということを割と思いっきりぶち壊している、その上で物語のバランスを保っている、というのがこの『封神演義』という作品です。
だってみてよ、このキャラデザ。
こだいちゅうごく……?ってなるじゃん?
わたしは妲己ちゃんの衣装デザインがとても好きですが、あれだって古代中国ではないんですよ。
一方で、モブキャラや脇役はいかにも「古代中国です」という格好をしているし、人間世界の原則はそれに即しているし、それが両立するのがもう意味不明ですね。

外伝、「タイムトラベル」という手法で馴染みのキャラ総出演をしつつ、深刻になりすぎない程度の「かなりやばい敵」を配置しつつ、全体的にギャグ路線でまとめられています。
当然1巻だけで(というか1巻の半分で)終わります。
凄すぎる。
あと、みんなに会えるのがうれしすぎた。
ありがとう普賢真人(最推し)。
太上老君(二番手)には会えないと思っていたから大丈夫だよ。

うーん、久しぶりにみるとやっぱりいいですね、封神演義。
読み返そうかな。
紙のコミックスを電車で読むのはハードル高いので、電子書籍で揃え直すべきでしょうか。


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