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人工授精してきたよ① 人魚の生まれ変わり

一昨日まであんなにも落ち込んでいた。
翌朝、諦めモードで排卵検査薬をやってみたら、なんと陽性の色よりも陽性になった。排卵済だと思っていたので、まだ妊娠してもないのに、一人で狂喜乱舞して、クリニックを予約。今までで一番最高な気持ちで朝のルーティーンをこなした。

朝、私は毎日朝日をいっぱい浴びて祈りの時間を作っているが(自己流)、その日は目を閉じるとずっとなぜか人魚の残像が見えた。
不思議な気持ちがしたので、後で調べて見ると、その名の通り下半身が魚なので、人魚は人間と直接子供を作ることができないということがわかった。(人魚自体空想かもしれないけどそれを前提として。)鮭のように卵を産んで、その上に精子をかけてもらう方法でしか子供作れないらしく、人魚姫が人間になりたかったのは「歩きたい」という理由の他に、好きな男性と出会い、直接結ばれたいという強い気持ちがあったということがわかった。
私は、知らない人の精子をもらい、それをクリニックで体に入れてもらう。
私はきっと人魚の生まれ変わりなのだ。
こんな突飛なこと、誰も信じてくれなくても良いが、この地球上にはたくさんの人がいて、その中でそういう人がいても全然おかしくないと思う。
私が人魚の生まれ変わりであるが故、ドナー精子で人工授精することが必然だと思えたら、なぜか一日リラックスして過ごすことができた。

落ち着いた気持ちで臨みたかったので、人工授精の前に大好きなフォーを食べに行った。
今年一番天気が良い日だった気がしたので、それから1時間くらい芝生の上で、太陽を浴びていた。
その時間は私には希望という気持ちしかなく、妊活をしていなかったらそんな神聖な時間を過ごすことはできなかったと思うので、そのありがたい時間を体中で味わった。

クリニックに着くと、なぜかその日はとても空いていた。待ち時間もなく、すぐに呼ばれて、Roseという若くて元気で朗らかなナースと一緒に部屋に入った。
花の名前の女性は優しい人が多いと思う。

ドナー精子の番号や運動率、精子の数が書かれた紙を確認。
書かれた数値が良いのか悪いのか全くわからない。
さらに精子の量を見て驚愕する。小さじ1杯程度とは聞いていたが、私の犬の涙くらいの量しかなかった。Roseは「大丈夫よ。この中には無数の選ばれた精子がいて、その中で1つでもあなたの卵子と出会えば良いのだから。」と言ってくれた。
とはいえ肉眼で見ても量は多ければ多い方が良い気もしたけど、信じるしかない。
まさかとは思ったが、それを長い長いスポイトのようなものでナースが手動で吸い上げて、それを子宮に入れるのだ。ここまでアナログだと思っていなかったので、少し不安になったが、これもまた信じるしかない。
でも、私がこの瞬間に到達するまで、精子ドナーはもちろん、とんでもない数の人の協力があって、ここに至っている。
その全ての人の愛を享受するんだという気持ちで私はベッドに横たわった。

(続く)


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