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上出長右衛門窯の道行

現在進行中の新作開発の紆余曲折するストーリーを、テキスト、写真でお伝えしています。旅は道連れ世は情け。これまで秘密にしていた新作とそのアイディア、プロセスを上出長右衛門窯六代目・… もっと読む
月に2〜3本くらいが更新目標(絶対に1本は書きます)。現在公開している全てのマガジンがここで読めま… もっと詳しく
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#轆轤

【窯まつり・絵付】の道行#11「歴史とつながる」

こんにちは。上出惠悟です。 今年2月に始まった今回の道行もそろそろ終盤です。これまで絵付場で活躍する3人の女性を紹介して参りましたが如何でしたでしょうか。上出長右衛門窯で働いている私達がどんな人間で、どうしてここで働いているのか、少しでも身近に感じて頂けていたら嬉しいです。 ここで初めて読んでいる方に少しだけご説明すると、このnote「上出長右衛門窯の道行」は、私達がこれから発表しようとする新製品の製作過程を、あえて隠さずにリアルタイムで皆様に公開しようという試みです。紆

【窯まつり・絵付】の道行#10「もっと練習を」

こんにちは。上出惠悟です。 いよいよ第2回目の轆轤(ろくろ)まつりが始まります。今回からはコロナ前と同じフリー入場制になるので、是非多くの方にお越しいただきたいです。16回を数える窯まつりに比べればまだまだ手探り状態ですが、轆轤師を中心に職人たちは張り切って準備をしています。轆轤まつりはこれまで華やかな絵付の影に隠れている轆轤に光を当てようと企画されました。改めて考えてみれば、回転する台の上に乗せられた粘土が、人の手によってあらゆる形に変化する轆轤という技術は非常に面白いも

【干支水滴 卯】の道行#4「手で考える形」

こんにちは。上出惠悟です。 私たち上出長右衛門窯は毎年5月に窯まつりを開催していますが、今年10月に初めて轆轤(ろくろ)まつりを開催します。轆轤師とその技術はいわば九谷焼を支える縁の下の力持ち。どんなに優れた素地を作っても、そこに絵付を施せば絵付師の作品として世に出てしまいます。河田が生前嘆いていたことでもありますが、これでは轆轤師は育ちません。また一般の皆様には轆轤挽きと型物の器の区別も判りにくいのではないかと思います。 そこで今回、轆轤にきちんと光を当て、その道具と技

【河田さんと私たち】の道行#2「生きているもの」

こんにちは。上出惠悟です。 最期まで現役の職人を貫いた河田さん。かつてテレビ番組のインタビューで轆轤師という自身の仕事についてこう答えています。 「粘土に逆らったら駄目、僕の品物が駄目だったらその後の工程も全部駄目になってしまう。だから僕の仕事が基本なんです」 実際、河田さんの安定した仕事は長右衛門窯の支えであり、その存在は私たちの精神的な支えであったように思います。工場の2階で仕事をしている絵付師達もきっと、真下(1階)で轆轤を回す河田さんを轆轤の音とともに常に心の隅

【河田さんと私たち】の道行#1「轆轤師としての気概」

こんにちは。上出惠悟です。 今日は5月31日に75歳で逝去された上出長右衛門窯の轆轤師・河田安弘について書きます。普段から”河田さん”と呼んでいたので親しみを込めて以降そう記したいと思います。 先ずはご家族やご親戚の方へ心より哀悼の意を表し、河田さんのご冥福をお祈りいたします。 河田さんが上出長右衛門窯に入社したのは1972年のこと。私が生まれる10年前です。単身で石川県に移り住み、それから50年間ずっと河田さんは毎日轆轤を回していました。私が中学生の時、土曜日は半日で

【エフゴマグ】の道行「轆轤と星のまわり方」(読み切り)

こんにちは。柴田鑑三です。 このnoteを購読されている方はもうご存知の方ばかりと思いますが、上出長右衛門窯で轆轤(ろくろ)や原形制作などの成形業務を主に担当しています。今回は先日発売されたエフゴマグの道行について僕柴田がお送りしたいと思います。既に忘れてしまっていることも多く、簡単な内容になりますが、どうぞ宜しくお願いします。 僕が長右衛門窯に入社して5年目になります。これまでちょうえもん招猫、桃染の雛、お茶碗武者、干支水滴、フルーツ皿(百果刻文皿)などの原形を作って来