年度末年度初め

夫がこの世で一番早いものはなに?と息子に聞かれて「光」と答えると、息子が「光より早いもの知ってる?俺の諦め」と言って始まった今年のゴールデンウィークが光の速さで終わろうとしている

先日、小学校に忘れ物を取りに行くことになり、息子と連れ立って一年生の教室へ向かうと、まだ残っていた生徒と顔を合わせる。廊下から担任に呼びかけられ、件の忘れ物は他の子が誤って家に持ちかえってしまったので、明日以降本人に持たせますと、説明を受ける。よくわからない話で、なんと返事して良いのか考えていると、先ほどすれ違った子と息子が廊下の奥でじゃれているのが見える。まあ、そういう事もあるのかと、担任の方を向くと、彼が息子さんと遊んでるうちに間違えて持って帰ってしまったんですよね。と、息子とじゃれている子が当事者だと教えてくれる。

仲のいい子がいると本人が話すことはほとんどないので、少し面食らう。廊下の奥の息子は友達とじゃれているように見えるのだから、本人の話は当てにならん。

「えんどうが、おれとちーちゃんそっくりだって」
帰り道、息子がそう言う。
「えんどうって?」
「さっき教室にいたやつ」

「えんどうよく遊ぶの?」
「まあ、席が近いね。クラスメイトだね」
「友達ではないの?友達いないの?」
「うん、まあ、いないね」
「ふーん、わたしと似てるって?えんどう見る目あるね、嬉しい」
「おれはいやだよ」

そんなやりとりをする。
クラスで息子の事を見てくれる子がいるだけでも、わたしは嬉しい。そのうえ、私と似ているなんてとっても嬉しい。私だって友達がなんなのかいまだに、よく分からない。相手を友達と呼んでいいものか悩ましく思うし、わたしと息子は似ている。

終業式の日、予定時間より帰りが遅いので、外を気にして見ていると、息子ともう一人、黄色のランドセルカバーをした一年生の男の子が、我が家で立ち話をしている。1分もせず話し終え、互いに手を振りあい、息子はさっさと玄関へ入ってくる。

「今の誰?」
「おぎはら」
「おぎはら??誰なの??」
「昼休み遊ぶ子」
「え!!?クラスメイト??友達??おぎはらなんで来た?」
「クラス最後だから家見たいって、友達っていうか昼休み遊ぶやつね」
「え、おぎはら、帰れるかな。」
我が家は学校から2分ほどだが、心配がよぎる。
「おぎはら、ここが俺んちって知ってた」

お母さん、おぎはらもえんどうも友達なんじゃないかなって思うんだよな。

息子の不器用さを受け止めてくれる子がいるらしいことが、わかっただけでもう胸がいっぱいになる。

息子はどうしようもなく私に似ている。

新年度が来て、彼は二年生になった。思ったよりも落ち着いて過ごしているようだ。

先日初めて、学校でイライラしてしまったと言って帰ってきた。

事の次第は、給食のポテト争奪戦に参加するも、隣の子がじゃんけんでズルをしたのに勝ち進み、自分は負けた事に納得いかずイライラし、結局、争奪戦までした給食をほとんど食べずに抗議したという話だった。

隣の子は、その話は明日したいと、言ったとのことで、その場では不問になったそうだ。
その場では白黒をつけなくてもいい、つけられないことが、世界にはあるという経験になるといいなと思う。

その同じ日、私の方は、結構な気合で応募していた韓国アイドルのビデオ通話会に落選した。なぜか大期待していたため、落選通知にかなり落ち込んでしまう。息子に、
「ヒョンジン君ガチャを外して、落ち込んでる」
と言ってみると、
「目標を増やしておいて、外れても良い状況にしておくといいよ、おれの経験上ね」
と、教えてくれた。そのとおりである。オタク大先輩(息子)は心強い。


オタク大先輩と、その日の出来事について話していて、

「ちーちゃんが、ヒョンジン君当たらなかった!!!納得できない!!って言ってたらおかしいと思う?」と、聞いてみると、

「おかしいと思うね」と、言うので、

「君がポテト争奪戦に負けて、納得いかないって言って怒るのと同じ気がするんだけど」

「いや、俺はズルが嫌なんだよ」

「ヒョンジン君ガチャでズルしている人絶対いるよ!!マジでズルいし、嫌だ、納得いかない!!って私が言うのはどう?」

「んー、それは、わからないけど、同じように外れてる人もいるんだからって思うね」

「ポテトもそうだと思うけど。それより、残しちゃったことの方が、かなしいけどね。学校に行けない子も、ご飯を食べられない子もいるよ」

「戦争の子?」

「うん、うちら、ヒョンジン君ガチャが外れたイライラする!!ポテトが食べられなくてやだ!!!なんて言ってるけど、私達は家で、お腹いっぱい食べて、家族と寝られるんだよ。」

「給食残すのは関係なくない?」

「君が残したのは誰かが食べたかったご飯だと思ってよ。」

「残したとしても、あげられるわけじゃないじゃん」

「そうだよ、だから、君が腹いっぱい食べなきゃいけないんだよ。あげられないんだから」

「なら、ご飯の分のお金をあげればいいんじゃない」

「それは、寄付って言うの、君の黄色と青の花のTシャツは買ったお金を寄付してくれるていうTシャツだよ。君が寄付できるお金があるならどうぞしてください」

「じゃあ、いっぱいお金がある人は、いっぱい寄付すべきだね」

「それはその人が決めていいんじゃない?ねえ、私達が今日落ち込んだのって、そういう自分で決めた期待通りにならなかったから落ち込んだよ、今回の私達の敵は自分たちのこころだよ。自分で自分の事追い込んで、勝手にイライラしてるんだよ。」

「たしかにねえ、そうかもしれないねえ。ポテトの事は正直もうどうでもいいよ。こころを起こしてるのは脳みそだから、それは俺だね。」

「そうなんだよ。すごい納得感があるのだが。どうしよう」

「どうもしなくていいんじゃない。」

気付きがあり過ぎる。


小学校の休み時間はなにしてるの?と聞くと
「バスケットゴールの下に立ってボールが当たるのを待ってる」って言うから、やっぱり男の子のこと、お母さんはよくわからない。

かわいくて大好きってこと以外はよくわからない。

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