ドグラ・マグラを読了した。

年明けから読み始めたドグラ・マグラを遂に読みきった。
非常に優れた作品であるが非常に複雑な内容であり、最後まで読まないと一体この話はなんなのかがわからない作品となっている。

まだ読んだことのない人に対しての紹介として2つの読みどころを挙げる。

①主人公は何者なのか。

この本の主人公は登場したときには既に記憶喪失となっている。そのため、自分の身の上だけでなく、遭遇する人物に対する一切の記憶が頭の中にない。したがって物語の上で登場し情報を提供してくれる人物の話が、本当なのかどうかという確証のないまま話が進められる。大方の読者は物語の途中で、この主人公はきっとこんな人物なんだろうなと推測を立てることができるであろうが、確固たる根拠がなく、一体主人公は何者なのであろうかと途方もない疑問を常に抱き続けながら読むことになるであろう。

②胎児の夢

文章の途中で「胎児の夢」と言う論文が出てくるのだがこの本の中で最も重要な部分であると個人的には感じた。巻頭歌にも”胎児”という言葉は使われそれに関連する胎内や胎動、胎(のこ)すといった言葉が多く使われている。何故これほどまでに胎児を意識した言葉が多く使われているのか、胎児が見る夢と主人公にはどんな関係があるのか、という疑問は読んでいく中で深まっていき、最終的には氷解する。こういった展開を大体はわかっていても読み終えることによってやっと答えにたどり着いたという謎の達成感を感じるから不思議である。

日本三大奇書と言われて敬遠される方も多くいると思うが、文豪である夢野久作が書いている本なので完成度は非常に高い。読んでいて不可解な点は多いが、全ての辻褄があうため、一種の推理小説を読んでいるかのような気持ちにもなる。作中に"シャーロック・ホルムズ"という単語も出てきたため、少なからずホームズの推理小説に影響を受けているのかもしれない。


私が生きることができるようになります。