トラさんは嫌われ者3

雀のピィちゃんが草陰で震えていました。
どうやら誰かにいじめられてしまったみたいです。

ピィちゃん、一人ぼっちであんなに震えて……かわいそうに
よし、ボクが守ってあげよう!

でも、ピィちゃんはとっても小さな命です。
トラさんがドタドタ近づいてしまうと、ビックリして心臓が止まってしまうかもしれません。
トラさんはゆっくり、ゆっくりと近づきました。
と、そこへ烏のカァさんが、お空からまっしぐら、ピィちゃんのそばへと舞い降りました。
カァさんは震えながらもピィちゃんの前に立ち塞がり、トラさんを追い払おうとします。
どうやらトラさんの動きが、ピィちゃんを食べようとしている動きに見えてしまったみたいです。

違うけど、そう見えたのなら仕方ないなぁ……

トラさんは慌てて逃げる振りをして、ピィちゃんとカァさんのそばから離れました。
背後では、カァさんがピィちゃんに謝っていました。
ピィちゃんをいじめていたのはカァさんのようでした。
でも、トラさんがピィちゃんを襲っていると勘違いしたカァさんは、勇気を持ってピィちゃんを助けたのです。

二人が仲良くなれるなら、これが一番良いことだったんだ

ホッと胸を撫で下ろすトラさんに、また聞こえてきます。

やっぱり、トラは怖くて、とても悪いやつだ!
ピィちゃんを食べようとした!
なんてひどいやつなんだ!
弱いものをいじめる最低なやつだ!

見えない誰かが、トラさんの周りをぐるぐると回っているようです。

現にボクは怖い顔をしている
ボクの体は大きいし、みんなよりも強い力を持っている
生きていくために、誰かの命を頂くことだってある

反論したいけれど、それらは紛れもない事実です。

ボクのしたことで、みんなを誤解させてしまう

説明したいけれど、みんながそう見えているなら、それが真実になってしまいます。
日に日に大きくなる、自分とは違う、周りが作り上げた自分が、トラさんは怖くなりました。

ボクではないボクが、みんなの中の正解になっちゃった……

トラさんは、洞窟の中にこもりました。
何日も、何日も。
何日も。
お腹が空いてきました。
喉が乾いてきました。
寝ているだけなのに、とても疲れてしまいました。

瞼が、上がらないや……

自分の呼吸音だけが響く洞窟の中で、トラさんはただただ横になっていました。

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