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『川っぺりムコリッタ』読書感想文#読書の秋2022

#読書の秋2022に参加します

先に映画を観て、今年の推薦図書になっていたので、小説も手に取ってみました。映画脚本をベースに書かれている小説なので、内容は映画とほぼ同じでした。でも、映画は主人公の心模様を映像で表現しているのに対して、小説では主人公の心の声が描かれているので、映画鑑賞後と小説読了後では全く違う印象を持ちました。


主人公の山ちゃんはネグレクトの環境で育ち、高校生で親に捨てられ、流されるまま犯罪に手を染めます。刑務所を出所後に水産加工所に就職して、ハイツムコリッタに住み始めます。

わたしもちょっとネグレクト気味の家庭環境で育ったので、山ちゃんの心境に共感するところが多かった。

情緒的欲求に応えてもらえなかった子供が、心を閉じて投げやりに生きてしまうのは、応えてくれる人が在ることを知らず、求めることに価値を見出せなかったのかもしれない。

何を言っても、何をしても親に思いは届かなかった。心はいつしか嫌悪の感情で埋めつくされ、このまま親と一緒にいたら心は死ぬと思った。

だから17歳のときに親と離れた。
山ちゃんが親に捨てられたときと同じくらいの年だ。

その感情の正体が、自分のイメージ通りに愛して欲しかった、ただの子供心だったと気づいてから、その感情を完全に手放すことが出来たのは、山ちゃんと同じ30歳くらいのときだった。

親から離れて実に12年もかかった。もっと早くに手放せばよかったと思うこともあるけど、きっとそれは必要な時間だったのかなとも思っている。

その後は親の心情にも敬意を払い、自分の求めることを素直に表現できるようになってから、親のことも理解できて関係性もよくなった。

子供時代の黒歴史は、苦労が辛いと知らないままに体験しているので、むしろ苦労でもなく、若いうちに苦労はした方が良いと思っている。

大人になって、多くの人と出会い、学びが深くなるにつれて、世界は広くなる。必要とされたり、感謝されたり、愛したり、愛されたりして、そのささやかなで幸せな時間を生きれることに、だた感謝できる。

幸せな子供は我儘だ。
自由に泣き、自由に振る舞う。

ハイツムコリッタの人々も自由だった。そしてうちの親も自由だった。


この作品は、登場人物のほとんどに『死』との関わりがあります。

タイトルにもなっているムコリッタは、仏典に記載されている時間の単位のひとつで

せつな たせつな ろうばく むこりった』

何度か呪文のように登場するこの言葉は、逝ってしまった人との共有してきた時間、共有できなかった時間を愛おしく悼んでいるように感じました。

刹那せつな ・・・0.013 秒
怛刹那たせつな・・・ 1.6秒
臘縛ろうばく・・・ 96秒
牟呼栗多むこりった・・・ 48分

刹那って思っていたより一瞬です。

仏教の思想で刹那ごとに連続する心の生滅(無常)が私たちの存在そのものであり、その心の蓄積がごうであり、因果応報と調和するという考えがあります。

0.013秒で人の心は生まれ変わり、その心の歴史が、その人という存在。これまで判断し、行動した(行動しなかった)ことが、良い意味でも、悪い意味でも自分に返ってきて、いずれカルマは±0になるということですかね。

ハイツムコリッタの暮らしの中で、主人公の山ちゃんは周りの人々に影響を受けながら、徐々に心の変化を繰り返し、物語のエンディングに向かって新しい山ちゃんになってゆきました。

死生観を扱う難しいテーマを、コミカルで楽しい作品に仕上げてしまう、著者の荻上直子監督の持つポジティブな感性と映画を撮るパワーはスゴイな。


作品の宣伝用に切りとられた島田の台詞に『ささやかなシアワセを細かく見つけていけば、なんとか持ちこたえられるのよ』という言葉がありました。

主人公の山ちゃんが炊く白いごはんのシーンは、そのささやかなシアワセの象徴的なシーンです。

先日視聴したテレビ番組で、幸せホルモンのセロトニンが腸由来の物質だということを知りました。どうやら腸には幸せを感じる感情があるようです。

美味しいってやっぱり人を幸せにするのですね。
出汁などの旨味成分を摂取すると腸が喜ぶそうです。

腸が整うと脳も整うらしいので、チョコレートも含めつつ、たくさんの美味しいで、満たされたいと思いました。


映画を鑑賞してすぐに、主人公の山ちゃんがお勤めしていた水産加工会社のロケ地になった、蛯米水産加工の海産物をお取り寄せしました。

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主人公の山ちゃんが、炊立てのごはんにのせていた黒いものは、海苔の佃煮と思いきや、黒作りという名のイカスミ入りの塩辛でした。

黒つくり越しのミーです。

お取り寄せした海産物の感想は映画感想文に追記しましたので、
興味のある方はそちらの方ものぞいてみてくださ~い。

『川っぺりムコリッタ』映画感想文|Mrs.chocolate|note


<おまけ>
今日は ↑THE-HIGH-LOWS↓ 『即死』の気分 

1ヶ月くらいしていた、わたしの川っぺリムコリッタ祭も、これにて終了です。

いつも読んでくださり
ありがとうございます。٩(๑❛ᴗ❛๑)۶


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