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【お酒の神様をめぐる旅・番外編】清酒発祥の地・正暦寺

*こちらはお酒の神様ではないのですが、「清酒発祥の地」ということでご紹介させていただきます。

正暦寺は、奈良市東南の郊外の山間にあるお寺で、正暦3年(992年)に一条天皇の勅命を受けて兼俊僧正(藤原兼家の子)が創建しました。

創建当初は、堂塔・伽藍を中心に86坊の塔頭が渓流をはさんで建ち並び、勅願寺としての威容壮麗を誇っていましたが、1180(治承4)年、平重衡の南都焼き討ちの際、その類焼を受け、全山全焼、寺領は没収され一時は廃墟と化します。

現在では、福寿院客殿と本堂・鐘楼を残すのみですが、菩提山真言宗の本山となっています。

清酒発祥の地

正暦寺が清酒発祥の地であることは、種々の古文書から明らかです。

本来、寺院での酒造りは禁止されていましたが、神仏習合の形態をとる中で、仏様へ献上するお酒として、荘園からあがる米を用いて僧侶が自家製造していました。(これを「僧坊酒」と呼びます)

室町時代のころから正暦寺では、仕込みを3回に分けて行う「三段仕込み」や、麹と掛米の両方に白米を使用する「諸白(もろはく)造り」、酒母の原型である「菩提酛(ぼだいもと)造り」、さらには腐敗を防ぐための火入れ作業行うなど、近代醸造法の基礎となる酒造技術が確立されていました。

このように正暦寺での酒造技術は非常に高く、天下第一と評される「南都諸白(なんともろはく)」に受け継がれました。そしてこの「諸白」こそが、現代において行われている清酒製法の祖とされています。

現在は、毎年1月に酒母の仕込みを行っています。そして、『奈良県菩提酛による清酒製造研究会』に所属する奈良県内7つの蔵元が、その酒母を持ち帰り醸造した清酒を正暦寺福寿院にて販売しています。

奈良県菩提酛による清酒製造研究会

室町時代に奈良の寺院醸造の中心的役割を担った菩提山正暦寺で創醸された酒母である「菩提酛」を現代に再現し、後世に伝えるため、平成8年に奈良県内の当時の若手蔵元の有志が集まり、『奈良県 菩提酛による清酒製造研究会』(菩提研)が設立されました。

平成10年12月11日に酒母製造免許が下り、寺院醸造を復活させ、毎年共同で『菩提酛』を造り続けています。

参加蔵元は以下の通り。
今西酒造株式会社
上田酒造株式会社
葛城酒造株式会社
菊司醸造株式会社
株式会社北岡本店
倉本酒造株式会社
油長酒造株式会社



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