【フランスおいしい旅ガイド】ペイ・ド・ラ・ロワールの郷土料理
ロワールの料理の特徴はクリームの白である。ポタージュに、ソースに、デザートにクリームが使われる。また、ロワール下流域のアンジュー地方、メーヌ地方の料理文化は、基本的にはトゥーレーヌ地方とよく似ている。しかし貴族文化の影響をさほど受けなかった分だけ、人々は庶民的で、軽くて口当たりのよい、素朴だが心のこもった料理を好んだ。
魚料理
○ブロシェの白バターソース添えBrochet au Beurre Blanc
ブロシェは川カマスの一種で、貪欲さで知られる肉食性の淡水魚。大きいものは体長1mを超す。古来その白い引き締まった肉は、高級魚として珍重されてきた。ロワール流域では、白バターソースで食べるのが最高とされる。このソースの起源の地といわれるのがアンジェとナント。
バターソースはまず、みじん切りにしたエシャロットをワインビネガーの中で強火で急激に煮つめ、酢がほとんどなくなったところで火を弱め、やわらかくしたバターを少しづつ加えながら分離しないようにかき立てていく。こうすると、きめの細かいクリーム状のソースができる。この地方ではエシャロットを多用する。
ブロシェは、クール・ブイヨン(水に玉葱や人参のような香味野菜、香辛料、レモンの薄切り、ワインを加えただし汁)の中でゆでる。白身の魚は身がぱさつきやすいので火を通し過ぎないように注意する。ゆでたてのブロシェにたっぷりと白バターソースをかける。アローズ、サンドル(スズキ科)もこのソースと相性がいい。
○ウナギのマトロートMatelote d'Anguille
この地方の郷土料理を代表するものの1つで、人気も高い。アンジュー地方でよく作られる。皮をむいて筒切りにしたウナギを、玉葱、香辛料とともに赤ワイン、マール(ブドウの搾りかすで造ったブランデー)で煮込んだもので、その独特な深い色合いが食欲をそそる。つけ合わせには、小玉葱のグラッセ、マッシュルームのソテー、戻して煮込んだ特産の干しプラムが添えられる。
○ブイユテュールBouilleture
アンジュー地方のウナギの赤ワイン煮。13世紀には存在していた郷土料理でアンジェ産の赤ワインを使う。
○帆立貝のナント風Saint Jacques à la Nantaise
帆立貝のクリーム煮。ミュスカデワインの風味をいかした一品。
肉料理
○鶏のクリーム煮Fricassée de Poulet
メーヌ地方のル・マンとラ・フレーシュは有名な鶏の産地。この地方でよく行われる料理法は、フリカッセと呼ばれるクリーム煮とローストだ。クリーム煮は、ぶつ切りにした鶏を小玉葱、マッシュルームとともにバターで炒め、それにアンジューの辛口の白ワインを注いで蒸し煮にし、仕上げに生クリームをたっぷりと加えたもの。
○仔牛の尻肉のクリーム煮Cul de Veau a l'Angevine
草を食べないで牛乳だけで飼育されるフランスの仔牛肉は、味が淡泊で身が白い。このため完全に火を通して外から味をしみ込ませる煮込みや蒸し煮にすることが多い。アンジュー地方では仔牛の尻肉を煮込んで、仕上げに生クリームをたっぷり加えた料理がよく作られている。
○仔牛の尻肉の蒸し煮Cul de Veau aux Peteits Oignons
仔牛の尻肉の塊に焼き色をしっかりつけてから、アンジュー産の白ワインを注いでオーヴンで蒸し焼きにし、小玉葱のグラッセとクルトンを添えたもの。
○ゴーグGogues
アンジュー地方でクリスマスや春の復活祭のときオードヴルとして出される、野菜と豚の脂身の腸詰め。細かく刻んだホウレン草、レタス、フダン草などをラードで炒め、小さなさいの目に切った豚の脂身とともにブーダンのように豚の血でつないで腸に詰めたもの。ゆでた後、薄くスライスしてから、バター炒めや油で揚げて食べる。
○リヨRillauds
豚ばら肉の大きな角切りをラードで煮たアンジュー地方の料理。
○ヴァンデ風内臓料理Fressure Vendéenne
豚の心臓、肝臓、脾臓、肺臓を細かく刻んで、凝固させた豚の血を加え、ラードを使ってとろ火で時間をかけて煮たもので、冷ましてから食べる。
○ラール・ナンテLard Nantais
アルコートと呼ばれていた内陸部は、一般に地味が悪く、家畜も牛や羊より豚の方が重要であった。豚の内臓をうまく工夫した料理が、ラール・ナンテである。血抜きした肝臓や心臓、肺臓を小さく刻んで、香辛料をきかせて塩ゆでする。豚の皮脂を敷いた鍋に煮汁ごと入れ、オーヴンで煮込む。熱いうちに、皮ごとこんがりと焼いたジャガイモを添えて出したり、あるいは鍋に入れたまま冷やして、煮こごりのように固めたものを食べたりする。
○ナントの鴨のワイン煮Canard Nantais aux Petits Pois
ナントの鴨は最高品質を誇る。地酒のミュスカデワインで煮込んだこの料理は、この地方のお国自慢の1つである。厚手の鍋を用いて、バターで小玉葱と拍子木切りの豚の背脂を炒め、ソースのつなぎに小麦粉をふる。表面を焼いた鴨を入れて、その上にミュスカデワインを注ぎ、グリンピースとレタスを加えて1時間ほど煮る。
野菜料理
○キャベツの蒸し煮Chouée
キャベツは蒸し煮や、クルミ油で味つけしたサラダにする。
○ビジャーヌBijane
アンジュー地方の田舎のスープ(パンを浸したもの)。砂糖を加えた赤ワインに堅くなったパンを砕いて入れたもの。Soupe au Perroquet(オウムのスープ)ともいう。
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