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フランス各地にあるマカロンの魅力

マカロンは、アーモンドパウダー、砂糖、卵白で作った生地を丸く絞って焼いたお菓子です。配合や製法の違いで、様々な味や食感を生み出しています。イタリア、ヴェネツィア方言マッケローネ(maccherone:繊細な生地)が語源。16世紀にアンリ2世に嫁いだカトリーヌ・ド・メディシスによってイタリアからフランスに伝えられたといわれていますが、フランス各地に残るマカロンの歴史はさらに古く、コルムリーのマカロンは791年に同地の修道院で考案したものだといいます。

マカロンは、パリ、ロレーヌ地方ナンシー、ピカルディ地方アミアン、サントル地方コルムリー、アキテーヌ地方のサン・テミリオンやサン・ジャン・ド・リュズなど、フランス各地で作られるポピュラーな地方菓子です。

マカロン・パリジャン

ラデュレのマカロン

イル・ド・フランス地方(パリ)のマカロン。
マカロンといえばパリのマカロン「マカロン・パリジャン」をイメージする方も多いでしょう。別名「マカロン・リス」とも呼ばれ、表面がツルッとしていてカラフルな色合いが特徴です。卵白に砂糖を加えて泡立てるため、ふんわりとした仕上がり。2枚合わせて、クリームやジャムを挟むのが特徴です。

マカロン・ド・ナンシー

マカロン・ド・ナンシー

ロレーヌ地方ナンシーのマカロン。
平べったい形にひび割れたような外観。砂糖を煮詰めてからほかの材料と合わせるのが特徴で、外側はかりっと固く、中はしっとりやわらかく、アーモンドの香りが広がります。

中世にシャルル3世の娘カトリーヌが建てたベネディクト会修道院で、修道院長の胃に負担をかけないようにと修道女達が考え出したお菓子だといわれています。1792年に革命政府により修道会が禁止されたとき、カルメル派の2人の修道女がナンシーにあるアシュ通りの信者の家にかくまわれ、そこでお礼にと作ったのがマカロンです。そのおいしさが次第に町中に広がり、人々はこの2人の修道女をスール・マカロン(マカロンの修道女)と呼び、マカロンと修道女の話は今に語り継がれています。この話にちなんだ「スール・マカロン(マカロンの修道女)」という店がナンシーにはあります。

スール・マカロン

マカロン・ダミアン

マカロン・ダミアン

ピカルディ地方アミアンのマカロン。
アミアンのものは、13世紀後半に考えられ出された。ハチミツが入っているので、ねっちりとした歯ごたえ。サイズは小さいが、厚さ2cm弱ほどと厚みがあります。棒状にして生地を休ませてから、包丁で切って焼くのが特徴。アミアンにはカトリーヌ・ド・メディシス直伝のレシピが伝わっているともいわれています。

アミアンのお菓子屋さん「Douceurs & Gourmandises」で聞いた作り方は、アーモンドパウダー、砂糖を半々混ぜ、卵白を加え、ハチミツ、アプリコットのジュレ、リンゴのジュレを加えるというもの。出来立てはアーモンドの香りがすばらしいです。日持ちは1ヶ月くらい。お土産物屋さんでよく見かける大量生産タイプのものは、甘いとアーモンドのオイルと、苦いアーモンドのエッセンスも混ぜるのだそうです。

マカロン・ダミアン
Douceurs & Gourmandises

サン・ジャン・ド・リュズのマカロン

サン・ジャン・ド・リュズのマカロン

バスク地方サン・ジャン・ド・リュズのマカロン。
ふっくら膨らんだ黄金色のマカロンで、スペイン産の良質なアーモンドをたっぷり使っています。ねっとりとしていてコクがあります。

1660年に行われた太陽王ルイ14世とスペイン国王フェリペ4世の娘マリ・テレーズの結婚式の際に献上されたといわれています。お菓子屋「Adamアダム」では美しく気立てのよいガチューシャという従業員をつかわして、その店のスペシャリテ、マカロンを贈物としました。王妃はたいそう感激し、ご褒美にロザリオを与え、ガチューシャはその後アダムの甥と結婚し、この店の伝統を守り続けたといいます。

Maison Adam
Maison Adam

マカロン・ド・サン・テミリオン

マカロン・ド・サン・テミリオン

アキテーヌ地方サン・テミリオンのマカロン。
平たく、ひびが入った形で、ねっちりとした食感です。ワインが有名な村らしく、特産のソーテルヌなどの甘口ワインを加え、湯煎で温めて作るとか。13世紀にウルスラ会の修道女が作ったのが起源といわれ、サン・テミリオンには、1620年からのレシピを受け継いでいる店があります。

Madam Blanchez

マカロン・ド・コルムリー

マカロン・ド・コルムリー

サントル・ヴァル・ド・ロワール地方コルムリーのマカロン。
マカロンは、791年にこの地の修道院で生まれたといわれ、コルムリーにはその伝統を受け継ぐ店があります。ドーナッツのように中央に穴が空いた独特の形です。アーモンドの粒が残っていてさくさくし、砂糖のじゃりっとした歯ごたえもあり、甘いけど軽い。オレンジの香りがほのかにします。

形についてはおもしろい伝承があります。製菓担当のジャンという僧が作るマカロンは、とびきりおいしいことで知られていました。アーモンドパウダーと泡立てた卵白、砂糖を混ぜて焼いたものですが、ジャンのマカロンは神々の食べ物よりもうまいとの評判が高まるにつれ、僧院長はレッテルのようなものを決めて、他の菓子屋にまねられないようにしようと考えました。守護聖人の前で夜通しお告げを待つ僧院長に、夜明け前、神の声は告げました。「ジャンの調理場に行き、最初に目に入ったものにせよ」。そのころ、竈を熱しようとしていたジャンは、誤って僧服をこがしてしまいました。駆けつけた僧院長が鍵穴から中をのぞくと、目にとびこんできたのは、焼けた僧服の下のジャンのおへそだでした。以来コルムリーのマカロンは、真ん中に穴があいた奇妙な形をしているといいます。

「Maison Pochet」は、コルムリーの修道院の近くでマカロンを作っているお店です。1892年にOliver Pochet氏が創業しました。

Maison Pochet
Maison Pochet
Oliver Pochet氏

マカロン・ド・モンモリヨン

マカロン・ド・モンモリヨン

ポワトゥー・シャラント地方モンモリヨンのマカロン。
卵白と砂糖が比較的多めに入り、香ばしくて柔らかめなマカロン。うずまき状に絞って焼きます。花のような形をしていて、香ばしく、ねっちりとやわらかいのが特徴。17世紀から作られていて、モンモリオンにはそのレシピを伝承している有名店があります。

モンモリオンのマカロン屋さん「Rannou-Métivier」には、直径5cmの大と直径3cmの小の2種類のサイズがありました。紙に絞って焼き、その紙のまま重ねて売っています。1シート12個が販売の単位。日持ちは4日。材料は良質のアーモンド、卵白、砂糖のみで、アーモンドも店で挽いているのだそうです。このマカロン生地をとぐろ状に大きく1枚に焼いたもの(Le gâteau Macaroné)も売っていました。

Rannou-Métivier
Rannou-Métivier
Rannou-Métivier

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