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MIU404 第2話

 MIU404、第2話。いきなりメロンパンの車で登場である。「メロンパン号」という名前らしい。そういえば第1話でパトカーを大破させていたっけ。今後はこの車のなかでドラマが展開されることになるんだろうけど、なんでわざわざこんなカングーみたいな車にしたのか、気になる。これから重要な役割を果たすのか、案外、車高が高くて広い方が車内のシーンが撮りやすいから、みたいな事情だったりするのかもしれない。1話でおばあちゃんが捜していたステッキが「メロリン」みたいな名前だったのはこの伏線だったのか。考えすぎか。

 気になるタイトルはしばらく経ってから出てきた。どうやら殺人犯が乗っているらしい車と、その中で脅されているらしい夫婦が出てきたところでタイトル「切なる願い」。
 なんだろう、と思ったところで妻(池津祥子?)の固く組まれた両手のアップから再開。助けてほしい、これが一つ目の願いか。つぎつぎに見えてくるそれぞれの「願い」。夫婦が願うのは息子のこと。「あの時に戻れるなら、『信じる』と言ってやりたかった」。夫婦を脅す加々見(松下洸平)の願いは「自分はやっていない、と思いたい」。それから「罪を犯す前に戻りたい、なかった事にしたい」。これは志摩が語る加々見の願いであって、志摩個人の願いでもある様子。詳しい事情はまだ出てこないけれど。
 いったんは無実と思われた加々見は結局、犯人だったことが明らかになってしまうのだけれど、その見せ方がとてもかっこよかった。緑色のジャンパーをうまく使って物語が進んでいく。車に乗る人質の襟元をグイっとつかんで引きもどす腕が、緑色の袖。殺人現場から逃走した犯人の着衣が、緑色のジャンパー。序盤で伊吹が引っかかるフックの役割を果たしている。その後、加々見の話を聞きながら、視聴者も登場人物も、彼は本当はやっていないんじゃないかと思い始めてしまう。しかし次々に集まる状況証拠から、「やっぱり犯人かもしれない」、登場人物や視聴者がそう思い始めたところで、加々見がジャンパーを脱ぎ捨てる。インナーに大きく拡がった血の染みを見て、「ああ、やっぱり」。この「やっぱりやっていた」オチはあまりない気がして、意外性にドキッとすると同時に、なんだか切なくなってしまう。この救いのなさが、このドラマなりのリアリティなんだと思う。世の中はそんなに都合よく行かない。

 逃走を続ける加々見には父親に対するわだかまりがあって、いや、そんなものじゃなくて、
トラウマに近い恐怖や恨みが、彼の根元にずっと巣食っている。一度でいいから謝ってほしい、それが彼の切なる願いなのだろう。結局、その願いが直接叶えられることはなかった。父親は既に他界してしまっていたから。「まだ一度も謝ってもらってない!」刃を向ける先を失った加々見は、父親の写真を何度も何度も突き刺す。「無実でいてほしかったなあ…。」伊吹の「切なる願い」には、見ているこちらも泣きたくなってしまう。
 加々見の願いは、望んだ形ではないにせよ、叶えられることになる。連行される彼に向かって、夫婦が声をかけてくる。「最後まで付き合うって約束したのに、ごめんね」「ごめんね」。何度も繰り返される「ごめんね」は、夫婦が実の息子に言いたくても言えなかった言葉でもあり、加々見がどれだけ願ってももらえなかった言葉でもある。多少割り引いた形で、多少歪んだ形で、彼は救われる。ささやかなハッピーエンド。赤く染まる富士山を背負って、加々見は深々と頭を下げる。被害者としての意識にずっと囚われて、犯した罪も認めたくなかった加々見が、このとき初めて、自分の罪をきちんと受け止めたように映った。ここで流れる「感電」。このドラマでは、小さなハッピーエンドや救いが示される瞬間に流れることが多いのかな、と想像する。
 「今度また3人でドライブしよう、今度こそうどん食おう」。夫婦に生まれた新しい願いを代わりに叶えるかのように、志摩と伊吹は車でうどんを食べに行く。「殴って悪かった。」「謝ってほしい」という伊吹の「切なる願い」が、ここで叶えられる。事件と捜査班の人間関係がフラクタルというか、相似関係になっているのは、「アンナチュラル」でも見られた形である。ここで志摩からの願いが示される。「人の命は還らない、どんなに願っても」。「お前は長生きしろよ」。この「切なる願い」が、どんな意味を持ってくるのか。今後ますます気になってくる。

 あとは気になったこと。

・池津祥子って、池袋ウエストゲートパークのキングの彼女役で出てたイメージが強くて、見るたびになんか笑ってしまう。

・繰り返しになるけど、犯人だと思ってたけど、どうやら違う…?と思いきや、やっぱり犯人でした、って流れがやっぱり良い。そんなに珍しい展開ではないのかもしれないけど、なんかドキッとした。なんとなく心の距離が縮まってから、犯人でした!となっても突き放して見られない感じ。胸がきりきりする。

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