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かつ善

 本郷三丁目の近くでトンカツ屋を探してみた。googlemapで検索したら出てきたのがこのお店。正直、あまり期待していなかった。古そうな店構え、ぱっとしないメニュー(ごめんなさい)。やる気のない古い定食屋、といったイメージだった。駅から歩いて5〜10分くらい。イメージ通りの、古い定食屋然としたお店があった。
 店の構成は、カウンターが4席くらい、2人掛けのテーブルが4つくらい(たぶん)。カウンターに横座りして店員さんに話し掛けるおじいさんが1人。カウンターには一升瓶が置かれている。なんともいえない場末感が素敵。一升瓶片手に管を巻く、的な絵面と思いきや、単に目の前に置いてあっただけのようだ。ごちそうさま、と言いながら会計を済ませて帰っていく。テーブル席には20代前半と思しき若いカップルも座っている。
 店員さんは親子らしい男性ふたり。ホールが年配、息子さんらしい若い方が揚げ場に。メニューを見てとんかつ定食を頼んだ。あとでよく見ると、別にロースカツ定食なるものがあった。こっちにすればよかったと少し後悔した。
 通されたのは二人掛けのテーブル席で、昔の学校のようながっしりした古い角材の椅子が良い雰囲気。どこで貰ったのか、紙細工が少し埃をかぶって壁際に飾られていたり、実家的などことなく安心する空気が漂っている。コロナ対策のパーティションもラップを巻きつけたような、手作り感溢れる仕様。洗練とは程遠い店内だけれど、二人の店員さんを含めて親しみやすい雰囲気に覆われている。
 しばらくして定食が到着する。キャベツととんかつ、味噌汁、ご飯。キャベツがなんというか、びっくりするほどまっすぐだった。普通なんかもっとこう、くねくねしてるもんじゃなかったったっけ?たぶんいちばん外側の葉っぱばかりだったとか、そういうことだと思うけど。味噌汁はシンプルなお豆腐のやつだったと思う。味噌の粒が大きめで、独特の甘さがあった。カツはいかにも定食屋然とした、ちょっと茶色が濃いめな感じ。衣を見ると、意外と大粒のパン粉。今まで食べたとんかつで一番大きいかもしれない。かじるとザクザクと口の中を攻撃してくる。これはソースとからしが必須だろう、とテーブルを漁れば、納豆に使うようなパックのからしが出てきた。練りからしが瓶に入っている店も多いけれど、あの耳かきみたいなやつで何度も掬って、煙管みたいにカンカンやるのは意外としんどいので、これはこれで良い気がする。めちゃくちゃいい肉、みたいな印象はないけれど、ジャンクな衣が楽しめて、期待していたよりかなりおいしかった。値段も安いしね(800円!)。最寄り駅に寄ることがあったらまた来たいな、と思えた。
 おじいちゃんに声をかけて会計を済ませる。丁寧に対応してくれた。おいしかったです、と伝えると厨房の息子さんがにっこりしていた。人が良さそうなほっこりする店だった。

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