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ローソンのPBパッケージのデザインは戦略が分からないとジャッジ出来ない

ローソンPBのパッケージリニューアルにおける「店舗での視認性低下」についてが5月末に世の中を賑わした。その意見は、コンビニは社会インフラであり、ユニバーサルデザインが採用されるべきで、視認性の低いパッケージはデザインの改悪だ、という趣旨のものが多かった。

否定的な声は大きく、肯定的な声は小さい

特にSNSでは「視認性低下が原因の買い物の失敗」が悲劇的に取り沙汰され、シンプルな「これいいね」の声はその数によらず目立たない。負の要素には人が集まりやすく連鎖が起きやすい。実際にどのぐらいの人が「これいいね」と感じたかは、SNSの現象からは単純に計測することが出来ない。

「視認性を上げる」はデザインにおける戦術の一つ

「視認性を上げる」はデザインにおける戦術の一つである。「素早く正確に買い物をしたい購入者のために視認性を上げる」ということが戦術ならば、戦略次第では「買った後の体験を楽しみたい購入者のために生活に自然に入り込める程度に視認性を下げる」も戦術になりうる。

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コンビニは私企業でありインフラではない

プロダクトは、なるべく多くのターゲットユーザーにワークすることが望ましい。ここで言えるのは、「全ての人」でなく「今後狙いたいターゲットユーザー」に、ということである。コンビニは私企業であり、インフラではないため、利益を追求する権利がある。仮に「店舗での購入を重視する層」より「家の中で使うことを楽しみたい層」にリーチしようという戦略であれば、視認性を下げてミニマムなパッケージを提案することもあり得る。全てのプロダクトに完全なユニバーサルデザインが求められているわけではない。

「コンビニ=急いで買い物する場所」なのか

急いで買い物する場所であのようなパッケージではいけない、というのも個人の意見で、もしかしたらローソン側のメッセージは別のところにあるのかもしれない。「急がずゆっくり落ち着いて買い物できる」という店づくりを行っていく戦略かもしれない。さらに、もしかしたらインク代も節約し、他のユーザー価値のある部分に配分されたのかもしれない。一括りに「プライベートブランド」と括られた商品群も、商品それぞれに使用されるシーンが異なっており、異なるコンテキストに対して統一されたデザインを提案するのは簡単ではない。特にローソンはナチュラルローソンという多ブランド展開も行なっており、その統一を取ろうと思えば、ナチュラル路線に振り切る戦略だと推測することも出来る。

「事業戦略に対するデザイン」という視点

上記のように「かもしれない」が続いてしまうぐらい、企業の事業戦略は1人のユーザーが外側から判断することは難しい。事業戦略は、どのターゲットにどの方法でリーチしてどのような生活を提案し、その結果、長期的に利益や社会的価値がどうなるか、が論点であり、今回のローソンPBリニューアルが「いいデザイン」かどうかは「その戦略に対してどうワークしたか」が分からないとジャッジできない。この「事業戦略に対するデザイン」という視点が欠如したまま、個人的な好き嫌いの感性、および、「店舗での視認性の変更」という戦術のひとつの点だけでデザインを語って行くのは非常に危険である、と筆者は考える。

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