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なぜ鏡割りの寓話はオーバーパワーと言われながらも禁止されないのか?

私が初めて書く記事にしてはやけにセンセーショナルなタイトルですが、まずはじめに言っておくと、私は鏡割りの寓話は確かに強力なカードではあるものの、スタンダードやパイオニアにおいて存在が許されない程のカードパワーを持っている訳ではなく、禁止されることもないカードであると考えています。
そしてその理由について、個人的に思っている考えを整理したかったのでこの記事を書こうと思います。

カードの禁止指定にはどんな意味があるのか。

まず、ここから少しだけ書かせて下さい。結論から言うと「ゲームが楽しくなくなる」からではありますがもうちょっと深掘りしてみましょう。
ここで、とんでもなく雑でくだらね〜例えで考えてみましょう。「このカードを唱えた時、あなたはゲームに勝利する」と言う0マナのインスタント呪文があるとします。

逆なのはあったけど…

字面の破壊力は凄まじいですが、実際問題これはダメなカードです。では、何故かと言う理由を軽く書き出してみると

  • 初手一枚から即勝利出来る為、脳死でマリガンしまくればそのまま勝てる。

  • 初手に引けなくともドローソースを多用することによりかなりの確率で素早くゲームに勝利出来る。

  • 仮に相手が攻めてきて後もう少しのところまで盤面が進んでも、そのカードを引くだけで相手の努力を否定して勝利出来る。

  • その強力さ故に他のカードを使う理由が無くなり、デッキの多様性は皆無になる。

などがあります。抽象的に言ってしまうと
「相手との駆け引きや選択の重厚さを吹き飛ばしてしまう」ような要因ですね。早い話、そんなメアリースーみたいなカードがあるとどれだけ早くそれが引けるかの運ゲーになります。
これを踏まえてひとまず「鏡割りの寓話」の話に戻りたいと思います。

「鏡割りの寓話」何がヤバい?


通常版のイラストは遠目から見るとごちゃごちゃして何が書かれてるのさえ分からなかったりする

とりあえず、これに出来る事は

  • クリーチャー生成

  • アーティファクト生成

  • マナ加速

  • ルーター

  • コンボパーツ

など。
…キミやれる事多すぎない?

相手への妨害以外は全部やってるようにさえ思えます。ETBでクリーチャーを作るから攻めも守りも強いし、そのクリーチャーは毎ターンファクト作るし、手札も変えるわクリーチャーのコピーは出来るわ…。こいつを一度戦場に出してしまうとかなりのアドバンテージと汎用性のあるクリーチャーを生み出してしまいます。とりあえず、一つずつ見ていきましょう。

  • このクリーチャーが攻撃するたび、宝物(Treasure)トークン1つを生成する。」を持つ赤の2/2のゴブリン(Goblin)・シャーマン(Shaman)・クリーチャー・トークン1体を生成する。

ほぼETBで出たこのゴブリンは、盤面への圧力やアタッカーとしての素質はあまりありませんが、毎ターン宝物トークンを生み出します。そのままにされればアタックするだけで毎ターン1マナ加速される、とても危険な存在です。寓話→アタック→絶望招来はスタンダードでの鉄板ですね。
また、アーティファクトシナジーも強力、下環境なら致命的な一押しの「紛争」を簡単に満たせるなどの強みもあります。腐ってもクリーチャーは出ているのでチャンプブロックに回せるのも良いですね。

  • あなたは最大2枚のカードを捨ててもよい。そうしたなら、その枚数に等しい枚数のカードを引く。

これも地味ながらとても強力です。腐ってる手札や賞味期限の切れた低マナ域のカードなどを捨てて、新しいカードに出来ます。この効果自体には特に盤面に干渉力はありませんが、腐ったカードを変えられるのは実質1〜2枚ドローと変わらないでしょう。マナは事前に払われているので似た効果のカードにありがちな「良いカードは引けたもののマナが足りなくてそのターンには唱えられない」と言う弱点もなく、また任意効果なので特に変えたくないならそのままスルー出来るのも柔軟性があって良いですね。

  • クリーチャー エンチャント — ゴブリン(Goblin) シャーマン(Shaman)                       (1),(T):あなたがコントロールしていてこれでも伝説でもないクリーチャー1体を対象とする。速攻を持つことを除きそれのコピーであるトークン1体を生成する。次の終了ステップの開始時に、それを生け贄に捧げる。2/2

かの無限コンボで悪名高いキキキジの再来です。コイツには速攻はなく、単体ではバニラ同然のエンチャント除去の当たる貧弱なクリーチャーですが、次のターンからは伝説でなければ何でも速攻付きでコピー。コイツが対処出来なければ適当なクリーチャーをコピーして打点の向上、能力誘発!次のエンド時に無くなりますがむしろなんのためらいもなく攻撃出来ると言うものです。

こう具体的に羅列されると殆ど何でも出来て、デッキの安定にも、攻めにも、守りにも使える器用万能禁止待ったなしのカードに思えます。

…でも待って下さい。こいつが生み出したクリーチャーで殴り倒されたり、このカードによって自分のゲームプランを壊されたり、変なコンボを決められて特殊勝利されたりしたことはありますか?

そう、あくまで「鏡割りの寓話」の強みは継続的なアドバンテージ獲得量を全て合わせるとレガシーでも通用出来る程の量というのであって、こいつ単体で勝利することはまずありません。
一応、最初に出てきたゴブリンがそのまま残っていた場合それをコピーして4点のクロック+宝物二つということは出来ますが、最初のゴブリンくんとキキキジの鏡像を対処できないようなデッキや試合なら、ある程度強いデッキであれば大抵勝ってると思います。

更に、意外にもトーナメントレベルで通用する、勝利に直結する特殊コンボはありません。…勿論、税血の収穫者でクリーチャー除去したり、過充電縫合体でソフトロック、もしくは残虐の執政官をコピーして相手とのアドバンテージ差を崩壊させるといったエグイことは出来ますが、副陽の接近の様な決まればそれまでの過程を吹っ飛ばして勝利といった芸当は現在では期待されません。

ETBでも攻撃時でも相手と直接アドバンテージ差を生み出す効果が誘発するのは流石モダホラ産といったところか。ただ頑固とかで踏み倒ししなかったら意外とマナ相応かも。

概して言うなら鏡割りの寓話と言うカードは、出した後に数ターンの間継続的なアドバンテージを得られるサブスクみたいなヤツで、相手に対して全く干渉せず、他のカードと組み合わせて初めて強くなるカードです。これ単体では下地作りまでしか出来ず、相手の動きや脅威を否定してくれません。

寓話と和解せよ

そうは言っても、「鏡割りは最初のゴブリンシャーマンを対処しなくちゃいけないのに、本体は残っているからその時点でアド取られるのがダメ」とか「キキキジが二人いるだけでマナの限りコピーし続けてリーサル取れる」と言うのはまぁそうです。ただ、ここで最初に書いた相手との駆け引きや選択の重厚さに注目してみます。

現スタンダードにおいて鏡割りの寓話はかなり重要なポジションを担っており、公式の動画にも鏡割りへの対処はゲームを決めるとさえ言われています。そして各デッキはさまざまな形で対処をしており、例えば汎用打ち消しである「かき消し」を2ターン目に構える、「業火を放て」などは完全に対処しきれるカードですね。

地味に「犠牲」の発動で追加のマナがかからない事がありがたい。

ただ、殆どのカードは「クリーチャー」か「エンチャント」のどちらかしか対処が出来ず、クリーチャー除去が手札に一枚しかない時には最初に出てきたトークンか、裏面のキキキジのどちらを対処すべきか悩むこともしばしばです。ただし相手としてはどちらも割とどうでも良くて手札のクリーチャーの方が大事と思っているかも知れません。さあキキキジが出るまでの間に何か出来ないか…

鏡割りの寓話の特徴の一つとして、英雄譚であると言う事が挙げられます。英雄譚は3ターンの間、一つずつ効果が発揮される代わりに、合計するとマナコストに対して強力、多彩な効果を得られるカードです。そして「英雄譚」と言う通り、効果内容はもちろん、効果の順番や発動タイミングまでもが決まりきっています。なのでこのタイプのカードはゲーム展開が予想し易く、また発動までに時間がかかる為相手にはターン的な意味でも、現実時間としても結構な猶予を与えてくれます。

ここが恐らく肝で、例えば相手の盤面や手札、デッキタイプからゲームの展開などを予想し、例えば次のターンでマナジャンプしても対して強力なカードはまだ出ないと考えたならゴブリンシャーマンの方は一旦スルーして、そのあとの相手の動きを見て除去を打ったり、相手が鏡割り以外のクリーチャーも置物もなく、手札も尽きているならむしろ鏡割りの方は無視して押し切ってしまうと言う選択もありですね。
ここで鏡割りの寓話というカードが、単体では勝利出来ない、あまり勝利に積極的でない側面が濃く現れます。「とりあえず鏡割りを出したけど、相手がアグロデッキでどんどん押し切られたので仕方なくキキキジをブロックに回した」と言った経験をしたことはないでしょうか。

このカードは確かに2体のクリーチャーを生成してくれますが、そのスタッツは最低限戦闘出来る程度の貧弱なものです。ついでに出てくるクロッカーしては十分ですが、アグロ相手などにはただのチャンプブロック要員です。
手札を入れ替えて除去を引けるかもしれませんが、あくまでドローなので確実とは言えません、また、ルーター効果の判断は非常に難しく、相手がパンプ出来るデッキなら火力などの腐る可能性のある除去はルーターしても良いか、などはかなり頭を悩ますでしょうし、実際にシチュエーションによってはプロプレイヤーでも見解が分かれる程です。

コイツら公式で百合の関係と知って驚いた。どっちかっていうと戦友とか相棒って感じじゃない?まあ共に過酷なイニストラードを生き抜くにはイチャイチャしてる暇なんてないか。

更に、時間差で効果が出ると言うのは結構なデメリットです。発動の前に対処されると痛いというのはありますが、それと同時に相手が既に脅威的なカードを戦場に出していたり、素早い行動が求められる盤面においては無用の長物と化します。

…そう、このカード、使ってる側も使われる側も割と考えなければ良い行動が出来ず、考える為の時間も情報もそれなりに用意してくれる、適度にゲームに緊張感を与えて対戦相手との対話や行動選択を促してくれるカードでもあるのです。
そして完璧な解答をしても、このカードが役に立ってくれないこともあります。鏡割りの寓話は困難な状況への解答を探したり、攻める時のお供にはなってくれますが、解答そのものにはなり得ません。
こう言った側面が、鏡割りの寓話というカードがスタンダード、パイオニアで随一のカードパワーを持つ一枚でありながら、案外広くプレイヤーに受け入れられている理由の一つだと思います。

終わりに

初めての記事でしたので少々完成度が低かったかも知れません。私としては鏡割りの寓話と言うカードはゲームが面白くなるカードで、どんな時も脳死で強いパワーカードではないという事が良く伝わってくれたら幸いです。
まあ、ここまで語っておいて結局禁止されたみたいな恥ずかしい事は十分あるとは思います。今のところは鏡割りの寓話が入っていなくとも勝ててるデッキは全然あるので大丈夫だとは思いますが、パイオニアはちょっと怪しいかも…。




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