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府中市美術館「吉田初三郎」の鳥瞰絵図

府中市美術館「Beautiful Japan 吉田初三郎の世界」

「吉田初三郎式」と言われる独特の鳥瞰図で、昭和初期から戦後にかけて人気だった画家の展示。1点1点ディテールが気になってなかなか動けない展示会だった。

単なる鳥瞰図ではなく本人が見せたい風景をデフォルメし、限られた紙面の中にダイナミックに配置・構成しており、画家だがグラフィックデザイナーみを感じる。

その構図は、ダイナミックでもあり、アクロバティック。東西南北はさほど厳密ではなく、スケールも現実とは全く異なり空間が歪みまくっていて面白い。太平洋戦争中は樺太から南方までしっかり入れており、そんな無茶なと思う遠方まで書き込んでいる。展示の中でアクロバティックさがすごいなと思ったのが、「長野県の温泉と名勝」、長野県の山々を描きつつ数多い温泉地をギュッと紙に入れ込んでいた。なんでも入れるよ。

国際日本文化研究センターのサイトに吉田初三郎の作品データベースが公開されているのだが、作品数がとにかく多い。
これはこんな精密な絵を工房体制、弟子がいて分業制をとっていたからできたことで1600点以上ものこんな緻密な絵が生み出された。画家だけど出版商業も感じるのは彼が生きたのが観光・旅行というのが拡大した時期で加えて印刷技術が発展した時期だから。電鉄だけでなく、温泉地や商工会、観光協会などの依頼で書いたものが多く展示されていた。
描いて、刷って印刷で多くの人に届き、こんなところに行きたい!と人を観光に動かした。今でいうインスタ映えスポットにしてしまうクリエーター?などと想像してみた(違うか)

震災の後に犬山に引っ越し、「犬山之春」という作品を残している。大判の屏風絵にこそ鳥瞰図はぴったりハマるんじゃないの。日本画で武士行列を俯瞰で屏風絵に描かれたのに近い感じ。若い頃に友禅の絵に丁稚に入っていたからだろうか、山の間に描く雲なんかの書き方は日本画だなと思った。

https://www.city.fuchu.tokyo.jp/art/tenrankai/kikakuten/Yoshida_hatsusaburo.html
上記に「犬山之春」の画像がある

犬山に住んでいたこともあるからか、「日本ライン」という観光地の絵が何度か出てきた。聞いたことはあるが実際それどこ?と調べたところ、犬山あたりの木曽川の峡谷の観光地で川下りなんかをしていたらしい。さらに「ライン」の意味はライン川のことだった。「風景がヨーロッパ中部を流れるライン川に似ていることから、1913年(大正2年)に志賀重昂によって命名」されたらしい。日本のライン川・・・

印刷技術が進んだからだろうか、蛇腹の折りたたみ式の冊子がいくつか展示されていた。「日本鳥瞰大絵図」、中四国、九州、中部など各地の鳥瞰図があるのだが、これは大阪毎日新聞、東京日日新聞の1927年昭和2年の「元旦の付録」!。この付録は正月特大号に喜ばれただろうな。。。これは楽しいに違いないよ。

国際日本文化研究センター のデータベース。みていると時間が溶けます。

時間をかけてみ終えた後、隣の展示室でやっていたコレクション展も覗いてみた。このタイミングでやっていたのが「たまマップ」という、多摩地域を描いた絵や写真、オブジェの展示で、展示数も多く見応えあった。古いものから新しいものまでバリエーションも豊富で地域に根ざした美術館の展示として見応えありました。
https://www.city.fuchu.tokyo.jp/art/tenrankai/jyosetu/index.html

最後、1Fにあるカフェが気になっていたので入ってみた。美術館カフェ色々あるが、ここは窓が大きくテラス席も多いし、メニューも小洒落ててよかった。レモンカッサータ、美味しいアイスコーヒーでした。

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