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「獣の国」第1幕 第5場(私兵たち)

私兵たち

■ ボタンの一つも見当たらない、つるりとした銀色の内壁に囲まれた昇降機エレベーターに乗ったイツァークとレベッカ、ゆっくりと降下していく。





■ イツァークの斜め後ろに少し距離を置いて立つ黒いジャケットを着たレベッカ、遠慮がちに話し掛ける。
(レベッカ)あの…… さっきはありがとうございました

■ 小さくうなずくイツァーク。

うつむき加減のレベッカ、頬が赤い。
(レベッカ)私が…… あの…… あそこで……



■ 上目遣いでちらっとイツァークを見るレベッカ。
(レベッカ)…… 見えちゃいました…… か?

■ イツァークは振り向かずに答える。
(イツァーク)ああ 見た



■ 頬を更に赤く染めてレベッカは身をすくめる。



■ そのまま振り向かずに言葉を続けるイツァーク。
(イツァーク)競走馬のように 良く鍛えられていた

■ ぱちりと目を見開くレベッカ。
(レベッカ)えっ?

■ イツァークの後ろで更に身をすくめ小さくなるレベッカ。
(レベッカ)あっ…… ありがとう…… ございます……





昇降機エレベーターの扉の上部、到着したサインだろうか、赤いランプがともる。

■ 開く扉。

昇降機エレベーターを降りた2人、狭いロビーの正面に両開きの扉が見える。

■ 扉を開けるイツァーク。



■ 円形の広間、青い作業服を着た清掃作業員がリノリウムの床を磨き、幾人かの戦闘服を着た男たちの姿も見える。

■ 丸テーブルが幾つも置かれ、一番手前のテーブルにはCoorsクアーズの缶と灰皿を前にした3人の男女が座っている。

■ 3人はイツァークとレベッカに目を向ける。


のみで荒々しく削られたようないかつい顔をした、ネイティブアメリカンと思われる長身の男。


■ 髭面に薄笑いを貼り付けている、岩のような体付きのアジア系の男。


■ 「VOGUEヴォーグ」から抜け出してきたかのような、滑らかな褐色の肌とつややかな黒髪を持つ女。



■ アジア系の男がイツァークたちへ身体を向け座り直す。
(アジア系の男)新人か
(アジア系の男)ようこそAgarthaアガルタへ!

■ 驚いた顔を作るアジア系の男。
(アジア系の男)おっ! 見ろよレッドマン! 何と1人は凄いかわいこちゃんだ!



■ レッドマンと呼ばれた長身の男は答えずにシガリロDAVIDOFFをふかしている。

■ アジア系の男が続ける。
(アジア系の男)ふむふむ 嬢ちゃん おそらくあんたは我々の眷属けんぞくだ こっちへおいで
(アジア系の男)そっちのにいさんは…… おっと制服組か

■ 立てた親指で方向を示すアジア系の男。
(アジア系の男)駆除部隊のヒトは「説教部屋」へお先にどーぞ



■ イツァークは指差された方向に顔を向ける。

■ 「Communication Room」と表記されたプレートの付いた扉がある。

■ 大きな荷物を左手に持ったまま、その扉へ足を向けるイツァーク。



■ レベッカはイツァークの背に声を掛けようとするが、すぐに思い止まり口をつぐむ。
(レベッカ)あっ……



■ 振り返るイツァーク。
(イツァーク)あんたと俺とは契約部署が違うのだろう
(イツァーク)先達せんだつの話が聞けるなら それは貴重だ

■ 少し寂しそうな顔のレベッカ。
(レベッカ)…… はい



■ 扉に足を進めるイツァーク。
(イツァーク)もし…… 悪ふざけが過ぎるような奴等なら……
(イツァーク)手を貸す

■ 顔を上げるレベッカ。
(レベッカ)はい





妖艶ようえんに微笑みながら、黒髪の女がイツァークの背に声を掛ける。
(黒髪の女)連絡員リエゾンからの話が終わったら

Coorsクアーズの缶を親指と中指でつまみ、ゆらゆらと揺らす黒髪の女。
(黒髪の女)あなたもこちらにいらっしゃいな

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