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黒柳徹子「窓ぎわのトットちゃん」(1984年)

発売初年は一年間で450万部売れたという。
黒柳徹子が書いたというネームバリューはもちろんあったのだろう。
だからといって、「売れたタレント本」というジャンルではなく、現代的なテーマが描かれており、むしろ今読むべき本になっている。

ストーリーとしては、
自由過ぎるふるまいのおかげで何度も転校を繰り返していたトットちゃんこと黒柳徹子。トモエ学園という小学校は、そんな彼女のふるまいをそのまま受け入れてくれる場所だった。
両親をはじめ、校長の小林先生や、同級生といった仲間たちに囲まれて、トットちゃんは成長していく。
というもの。

トットちゃんがおもに学校で体験したエピソードがつづられている。
ストーリーとしての楽しさはある。
学校には障害のある子どもなどもいて、その中で一緒に過ごすという意味で、現在のキーワードである多様性がある。
また、あとがきを読むと、トモエ学園の卒業生の多くは成長してかなりの成功をおさめている。このことは、将棋の藤井聡太が幼少期にモンテッソーリ教育を受けていたという話にもつながるものを感じる。
さらには、本作は第二次世界大戦後期の出来事なので、戦争が一般市民にどのような影響を与えるのか、ということも考えさせられる。
ロシア・ウクライナ戦争、イスラエル・ハマス戦争といった戦争のことも連想せざるをえない。

本書が伝えたいのは、世界がいかなる状況であろうとも、子どもはのびのびと育てるべきだというメッセージなのだろう。
普段読まないタイプの本だが、これは読んでよかった。

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