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ヨーロッパ横断特急

なかなかおもしろかった。


アラン・ロブ=グリエは、「去年、マリエンバードで」しか観たことがなかった。好きな映画ではあるのだけれど、難解だった。言ってみれば、小生にとってはジョイスの「フィネガンズ・ウエイク」のようなもので、「まったく理解できないけれど好き」という類の作品。


その点、本作はわかりやすい。ヨーロッパ横断特急の中で三人の男女が映画のプロットを練るところからはじまる。麻薬もしくは宝石を運ぶ男の物語だ。彼は、パリの駅でスーツケースを受け取り、それをアントワープに運ぶ。最初は、テストで、組織の人間に見張られている。彼は無事試験に合格し、パリに戻り、今度は本番で、もう一度同じコースを辿る。

この運び屋の物語は映画の中の映画であり、そこに現実に、電車の中でプロットを練る男女の様子が交錯する。

運び屋の物語は、それだけではたいして面白くないのだが、メタな表現にしているだけで、おもしろくなる。つけくわえておくなら、映像もかっこいい。映像のかっこよさは、「去年、マリエンバードで」も同様で、なにが起こっているのかわからないけれど、映像はかっこよかった。


実験映画でありながら、流れに不自然なところがない。表現が難しいのだが、実験的な構成になっているし、映像の編集も実験的な部分がある。それでも、ツギハギ感がないというか、普通の映画を観ているように、最後まで観ることができた。「去年、マリエンバードで」もそうだった。これはロブ=グリエのセンスなのだろう。

ロブ=グリエ作品をもっと観たくなった。


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